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オフグリッドエアーサンプラーの開発、オートラジオグラフィーによるフィルター検査方法の確立と東北支援



グループ名 放射能市民測定室・九州(Qベク) 研究成果発表会配布資料[pdf]
代表者氏名 大木 和彦 さん
URL http://q-bq.com/
助成金額 45万円

2016年8月6日の平和祈念式典会場で南相馬の現状を訴えるために来られた人々と、太陽光で作動する3号機を使ったデモンストレーションを行いました。

2017年4月から、3号機の南相馬でのテスト運用を開始。ソーラーパネルの下のスペースにエアーサンプラーを下げて、雨水が掛からないようになっている。テスト開始早々に浪江町で山林火災が発生し、鎮火後しばらく経ってから外したフィルターは、現在、オートラジオグラフィーでの可視化作業中

南相馬への出荷前に分解した3号機。折り畳まれたパネル、脚、ACアダプター、バッテリーケース、本体。車にも簡単に載せられる大きさ

高木基金「市民科学 研究成果発表会 2017」での発表の様子(大木和彦さん)

研究の概要

2015年12月の助成申込書から
 放射能市民測定室・九州(以下 Qベクと略)は、2012年6月に設立されました。福島第一原発事故後、食べ物や飲み物の放射能汚染による内部被曝を心配し、食の安全を求める市民に支えられながら、食品を中心に放射能検査を行ってきました。しかし、2012年9月から北九州市で開始された震災瓦礫の焼却は、私達に、放射性浮遊塵という、もうひとつの内部被曝源について考えさせるきっかけとなりました。私達Qベクは、市民が自らの手で空気環境を調べることを目的に、安価で取扱いの容易なエアーサンプラーの開発に取り組み、2012年11月に試作機を完成させることができました。2014年度には高木基金の助成を受けることが出来、要望が多かった流量計の組込みにも成功しました。又、開発当初から、空気汚染が心配される東北地方の環境監視に活用して頂ければと考えていましたが、高木基金の助成によって、南相馬を中心に活動する方々との交流を深めてゆくなかで、2台の土壌計測用シンチレーターと十数台のエアーサンプラーを現地に贈ることも出来ました。  今回、助成の申請をさせて頂いたオフグリッドエアーサンプラーは、最近、福島県下の各地に建造されつつある「簡易焼却施設」による空気汚染への対策として考え出されたものです。これらの簡易焼却施設の多くは山中などエアーサンプラーの電源が得られない地域への立地が多く、監視が難しいとの現地からの声に応え、太陽光電池と組合わせることで交流電源の要らないエアーサンプラーとして現在試作中のものです。現地での試作機のテスト運転を通して完成させ、最低でも十台程度を配置したいと考えています。  又、オートラジオグラフィーによるフィルターの検査方法の確立は、シンチレーターでは検出が難しいフィルターに捕捉された放射性浮遊塵をX線フィルム上に可視化し、粒状径などから概略の線量を算出できるようにする取組みです。ゲルマニウムカウンターでの計測を行うか否かを判断する一次検査として運用し東北支援に活用したいと考えています。

中間報告

2016年10月の中間報告から
【オフグリッドエアーサンプラーの開発】  私たちは、原発事故による放射性浮遊塵の飛散問題を重視し、「市民が自らの空気環境を調べる」ことを目的に、安価で簡便なエアーサンプラー(一種の集塵装置)を考案・開発してきまし、福島第一原発廃炉作業現場へ2台を届けたのをはじめ、東北地方各地へ20 台近くを届けてきました。  最近、東北各地に続々と建設される仮設焼却炉は、何れも立地場所の近傍で家庭用電源が得られず、エアーサンプラーによる長期の監視ができないという問題がありました。Qベクでは現地の要望に応えるべく、ソーラーパネルからの太陽光エネルギーだけで長期間の作動が可能な「オフグリッドエアーサンプラー」の開発に着手しました。時間帯や天候でたえず変動する吸引量を正確に知るために本体内にマイクロコンピューターを装備し、このコンピューターの電源も、太陽光エネルギーに依拠するようにしています。 【オートラジオグラフィーの研究】  空気中に漂う放射性浮遊塵は多くは数ミクロン以下の微小なものですが、呼吸を通して肺に取り込まれると肺癌などを引き起こす危険性が指摘されています。既に福島第一原発事故から5 年を経過しており、破損した原発からの飛来量は少なくなっていると言われますが、事故時に東日本各地に降った膨大な量の放射性物質は依然として土と共にあり、乾燥時には風に舞う危険な状態が今後も続きます。  これがエアーサンプラーでの監視が重要な理由です。エアーサンプラーのフィルターに濾し捕えられた放射性浮遊塵は非常に微細であり、一般的なNaIシンチレーターなどで放射能を検知することは大変難しいものです。しかし、フィルターをX線フィルムに密着させて一定時間感光させることで、この微細な粒子をフィルム上に写し取ることが可能です。Qベクでは単に放射性浮遊塵の存在を可視化させるだけでなく、フィルム上の輝点の様子から放射性物質の概数を得る方法を研究する予定です。

結果・成果

完了報告・研究成果発表会資料より
 放射能市民測定室・九州(Qベク)では、市民が自らの手で空気環境を調べることができるよう、安価で取り扱いやすいエアーサンプラーの開発を行ってきました。AC アダプターにつなぐだけで一定回転で稼動する1型から、騒音対策として回転数の可変回路を組み込んだ2型、さらにインペラー(羽根車)タイプの簡易流量計を組み込み、スマートフォンで現在流量を直読できる3型と改善を続けてきました。  今回の4型は東北各地に建設されている簡易焼却炉での震災がれき焼却に伴う放射性浮遊塵による空気環境の汚染の監視を目的に開発したものです。これらの焼却施設は人家のない山間地などに建設されることが多く、「電源が得られないなどで監視が難しい」という現地からの声に応え、ソーラーパネルからの電気で動かせるようにしています。天候や時刻で変動する発電量によって吸引流量も変わっていきますが、積算流量を正しく把握するために高精度の流量計とコンピューターによる計測系を本体内に組み込みました。この計測系に要する電源もソーラーパネルからの電気を充電池経由で用いており、計測したい場所に機器を設置(放置)するだけで自動運転してくれます。  夜間はブロアーモーターが完全に停止してしまいますが、その分、軽量・コンパクトで可搬性に優れており、山間地などでの監視活動という目的にかなっていると思います。今回、高木基金の支援を受けて4号機までの製作を行いました。まだ完成形とは言えませんが引き続き改善に取り組み、空気環境監視の標準ツールとなることを目指したいと思います。  また、オートラジオグラフィーによるエアーサンプラーのフィルターに付着した放射性物質の可視化についても、実施に向けた資材の調達と作製を行い、Qベク内にフィルム装填および現像作業用の暗室の確保をすることができました。

その他/備考


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