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福島県大玉村における水田の放射能遮蔽効果の測定と、休耕田の実験的利活用の実践



グループ名 OPT (Ootama village Paddy field Tensegrity) 研究成果発表会配布資料[pdf]
代表者氏名 林 剛平 さん
URL http://paddyfeild.blogspot.jp/
助成金額 30万円

藍こぎ(収穫した藍から葉を摘み取る工程)の様子

「第16回おおたま夏まつり」での展示の様子

水田の空間線量率の測定結果

高木基金「市民科学 研究成果発表会 2017」での発表の様子(林剛平さん)

研究の概要

2015年12月の助成申込書から
・福島県大玉村における水田の放射能遮蔽効果の測定 ・上記特性を活かした水田、休耕田の実験的利活用と、その効果周知のための調査報告会及び他地域での巡回展示会の開催(地域の収穫祭と同時開催とする)  本研究は、私たちOPT (Ootama village Paddy field Tensegrity 大玉村の水田の上に子供の遊び場を作ろう)という組織が、市民科学的な観点から地域の小さなネットワークと里山文化の復旧と継承を 試みるものです。  福島県の大玉村には、3.11の震災以後、東京電力福島第一原子力発電所から30km圏内の12市町村のうち、8市町村から避難した方々が住む 仮設住宅が建てられました。汚染地帯である中通りの中では、大玉村は比較的汚染が少なく、今後も人が住み続けることが予想され、人口の増加の見られる稀有な地域です。しかし、それでも残る汚染のために、児童が順番待ちをして室内の運動場で遊んでいる現状があります。野外で遊ぶ機会が減り室内で遊ばざるを得なくなったことで、お年寄りと子供たちの関わる機会が少なくなり、震災以前の地域ネットワークの形成と継承を阻害する要因ともなっています。  また、現在も進められている除染作業には莫大な国家予算が投じられていますが、対象地域が人家のある敷地および市街地に限られ、費用対効果 の低さも含めて、山と田畑に囲まれた農村地域においてはその作業は有効な対策とはなっていない可能性もあります。  このような除染や体育館などの大きな土木事業ではなく、在来の農家が持っていた小さな技術で、屋外に人々の居場所を、特に子どもたちのための 遊び場を作ることが出来ればと考えています。そうした外の居場所を介した在るべき地域ネットワークの形成を通じて、低レベルの汚染地域で人が 暮らし続けるモデルケースを提示できるとも考えています。具体的には、水の放射線遮蔽効果に注目し、水田に十分に水をはり、その上に床を作って陽の当たる遊び場(OPT)を作ることを考えています。  それを見越し、水田の放射能遮蔽効果の測定を行うとともに、その効果周知のための報告会及び他地域での巡回展覧会を催します。

中間報告

2016年10月の中間報告から
 本研究は、市民科学的な観点から地域の小さな地域ネットワークの復旧と継承を試みるものです。  福島県の大玉村には、東京電力福島第一原子力発電所から30km圏内の12市町村のうち、8市町村から避難した方々が住む仮設住宅があります。汚染地帯である中通りの中では、大玉村は比較的汚染が少なく、今後も人が住み続けることが予想され、人口の増加の見られる稀有な地域です。しかし、それでも残る汚染のために、児童が野外で遊ぶ機会が減ったことで、お年寄りと子供たちの関わる機会が少なくなり、また、人口が増えたとはいえ、働き手の職場は村外に在る場合が多く、地域ネットワークが危ぶまれています。  このような状況に対し、除染や体育館などの大きな土木事業ではなく、在来の農家の小さな技術で、屋外の遊び場、悦びのある仕事場を作ることが出来れば、その遊び場を介した従来の地域ネットワークを通じて、低レベルの汚染地域で人が暮らし続けるありようのモデルケースを提示できると考えました。  「福島県大玉村における水田の放射能遮蔽効果の測定」および「その特性を活かした水田、休耕田の実験的利活用と、その効果周知のための調査報告会(地域の収穫祭と同時開催とする)」を研究指針として掲げ、半年前にスタートを切った私たちのプロジェクトは、測定に留まらず、震災後の東北における、過去との接続、そして新しいものづくり活動の創出という大きな課題を朧に発見しました。  メンバーも10 名以上増え、それぞれの創意工夫により、民俗学的調査の表現手法、CO-デザインの手法、モノ作りの集団と里山の接続について等、考究と発展の方向性が確かになりつつあります。私たちの試みは、今はまだないけれども、近い未来の大玉村に当たり前のように存在する、地域生活の風景を想像することです。これに呼応し、大玉村の中からも協働いただける方が段々と増え始め、新たに歓藍社(http://kanran-sha.net/)というグループとして活動しています。

結果・成果

完了報告・研究成果発表会資料より
 私は、震災から時間が経つにつれ、調査結果を伝えるだけではなく、福島の農家への助力には衣食住の力が必要だと思いました。私は仲間に協力を呼びかけ、実際に福島で何かを作ろうと話し合いました。話し始めてから、3年間はただ時間が過ぎていきました。その間に、福島では、除染と呼ばれる大型の土木事業が頻発していました。  私は、農家の水田を作る治水技術は、行政の土木事業よりも少ない費用で、放射線の遮蔽を可能にすることを試したいと思いました。大玉村五里田地区で求められていたのは人の活力でした。震災以後、農家にとって誇りであった農産物の価格は下落し、親しい人と分かち合うこともはばかれ、そうしたことは、人々の活動を停滞させました。この状況を再び動かす動力が必要でした。その動力は、機械による一時の高速回転ではなく、人と植物と菌類による季節の繰り返しに沿った、大らかな回転であることが予感されていました。人を搾取することなく、価値を生み出すには、植物を菌によって発酵させるのが、在来の富を生む技術でした。その予感を、共感に練り上げるには、共感覚が必要だということも感じていました。五感を横断する能力は、人と人の間も横断していくと思います。昨年の2月、私は、大玉村の休耕地で藍を育てようと提案しました。  2016年5月に、大玉村五里田にて、ポットによる藍の種まき、藍苗の移植を行いました。6月中旬には日照りが続き藍の苗枯れなどの問題もおきましたが、8月7日には、「第16回おおたま夏まつり」において、安達太良山の上に広がる“ほんとの空”をテーマに掲げ、「藍の生葉染め大会」、「第一回世界藍染研究会」、「安達太良山模型作りワークショップ」を行うことができました。藍染を体験された方は、村内村外含め30名、展示来場者は300名と非常に多くの方にご参加いただきました。  今年度以降も引き続き大玉村における休耕田の実験的利活用の実践として藍の栽培を行いたいと思い、誇れる産物としての藍の六次化を目指したいと思います。また、昨年度得られた知見から、水の放射線の遮蔽性に着目した住宅モデルを提案したいと思います。

その他/備考


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