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上関原発予定地周辺海域における希少海鳥の生態およびエサ資源調査



グループ名 上関の自然を守る会 研究成果発表会配布資料[pdf]
代表者氏名 高島 美登里 さん
URL http://kaminosekimamoru.jimdo.com/
助成金額 40万円

カンムリウミスズメの家族。2016年5月14日、上関の自然を守る会撮影。

上関の自然を守る会『レッドリスト上関2016 山口県上関の希少野生動植物』(2016年9月発行)

カンムリウミスズメ調査。周年生息を確認。

2017年2月25日に「上関ネイチャープロジェクト」を立ち上げた。ユネスコの未来遺産登録や“かみのせきまるごと博物館”の設立、訪問客の受け入れなど自然を活かした町作りの充実を目指す

高木基金「市民科学 研究成果発表会 2017」での発表の様子(高島美登里さん)

研究の概要

2015年12月の助成申込書から

 上関原発計画は福島第一原発事故後、埋立工事が中止している。しかし中国電力が2015年5月に提出した再延長申請の判断を山口県知事は国のエネルギー計画での位置付けが不確定であるという理由で2018年6月まで先送りした。エネルギー基本計画で原発が重要なベース電源であるとの位置付けがなされ、再稼働の動きが加速化する中、上関原発計画についても予断を許さない。生態解明のスキルアップを図り、上関原発建設計画を中止させる科学的論拠を構築する。
1.生態調査
(1)カンムリウミスズメ調査:上関周辺海域は世界で唯一の周年生息域である。内海繁殖地探査/換羽過程などの解明を行い上関個体群の特徴を解明する。
(2)オオミズナギドリ調査:宇和島の親鳥は採餌域が世界最小であるが、繁殖成功率が低いなど特異性があり、個体群の維持や保護対策の確立を図る。
(3)稚魚&プランクトン調査:希少海鳥のエサ資源を調査し温排水の影響予測の基礎データとする。
2.成果の活用
(1)上関原発計画中止の科学的論拠を構築する。
(2)研究者/研究機関などと共同でシンポジウム等を開催し、成果を共有する。
(3)自然を活かした町作りへの貢献
 上関町は原発交付金に依存しない町政運営を選択せざるを得ない状況にある。世界中から研究団体/研究者/自然愛好家などを受入れ、フィールドワーク/民泊など財政的な基盤強化の一助とする。将来的には「上関生物多様性センター(仮称)」を設立するなど“自然生態系調査研究の町・上関”を目指す。

中間報告

2016年10月の中間報告から

 上関原発計画は福島第一原発事故後、埋立工事が中断されていますが、山口県は8月3日、中国電力が申請していた上関原発の建設予定地の公有水面埋め立て免許の延長を許可するなど、予断を許しません。  現在、原発予定地の埋立免許取消をめぐる裁判は自然保護の観点から「自然の権利訴訟」、漁業者の立場から祝島漁業者74名が原告となって「公有水面埋立免許取消訴訟」が連携して闘っています。両訴訟の原告団の要請を受けて、7月28日に山口地方裁判所が現地視察を行いました。上関の自然を守る会は原告団として加藤真氏(京都大学)や高島美登里が自然生態系の価値と原発計画による壊滅的なダメージを直訴しました。当日は原発予定地田ノ浦に支援者80名が結集し、裁判所の現地視察を見守りました。  こうした状況の中、調査研究は以下のように進めました。
A)カンムリウミスズメの生態解明調査
(1)繁殖地探索:ウミスズメ類の研究に精通しているDarrell Whitworth 氏の協力も得て繁殖地探索のため、4/2、4/3、4/5 にスポットライトサーベイを実施しましたが、島の周囲で個体確認はできませんでした。
(2)生態把握:海上センサスでは毎月カンムリウミスズメを確認し、周年生息域であることが検証できました。また、今年度から換羽の状態を詳細に把握するため、写真撮影に加えビデオ動画による記録を導入しました。
(3)ヒナ連れの家族群の確認:5/14 に成鳥2 羽とヒナ1羽、5/22 に成鳥2羽とヒナ1羽の家族群を確認しました。上関海域でのヒナ連れの家族群の確認は2008 年に調査を開始して以降、上関の自然を守る会が3回、武石全慈氏が3回の計6回であり、上関が恒常的な子育ての海域であることを示唆しています。世界的にも、この海域の重要性がクローズアップされています。
(4)Pacific sea bird group メンバーが上関を視察:4/28 にPacific sea bird groupのメンバーがフィールド調査に同行し、カンムリウミスズメ2羽の飛翔を確認しました。
B)オオミズナギドリ調査 福山大学海洋生物行動学研究室のバイオロギング調査に同行しています。結果は同研究室が集約中です。 C)プランクトン/稚魚調査 新たにプランクトンネットを購入して、5/14、7/2、9/3に調査を実施し、同定を依頼中です。

結果・成果

完了報告・研究成果発表会資料より

 上関原発計画をめぐる情勢としては、福島第一原発事故後、埋め立て工事は中止していました。しかし2016年8月3日に山口県知事が埋め立て免許延長を許可し、2017年5月17日に中国電力が福島原発事故以降、中断していた原子炉設置許可申請のためのボーリング調査再開を発表しました。また、国のエネルギー政策に新増設を明記する動きが顕在化しつつあり、埋め立て再開や建設への動きは予断を許しません。
1.調査の実施状況
A)カンムリウミスズメ調査:海上センサスを計50回行い、計92羽を確認しました。調査に延べ525名が参加しました。2016年5月14日と2016年5月22日に家族群を確認しました。2008年以来計6回目であり、研究者から恒常的な育雛域とみなされるとの見解を受け、中国電力に申し入れ、マスコミにも発表しました。
B)オオミズナギドリ調査:営巣調査を2 回、繁殖期調査を5回行いました。
C)プランクトン/稚魚調査:プランクトン/稚魚調査を6回行いました。
2.普及活動
A)報告集の作成:「カンムリウミスズメ調査報告集」、「レッドリスト上関2016」を発刊しました。
B)対外発表:(ア)2016 年9 月16 日に日本鳥学会でポスター発表を行いました。(イ)2016年4月25日〜4月28日に太平洋海鳥会議よりHarry Karter氏、Nina Kakovsky氏が山口県庁を訪問し、保護対策を要請しました。
3.自然を活かした町作り  2017年2月25日に「上関ネイチャープロジェクト」を立ち上げ、ユネスコの未来遺産登録や“かみのせきまるごと博物館”の設立、訪問客の受け入れなど自然を活かした町作りの充実を目指しています。

その他/備考


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