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テライ地域における石綿調査と注意喚起【ネパール】



グループ名 CEPHED Center for Public Health and Environmental Development 国家石綿プロファイル(国家石綿プロファイル(NAP: National Asbestos Profile of Nepal))[]
代表者氏名 ラム チャリトラ サー さん
URL http://cephed.org.np/
助成金額 50万円

アスベストを使用した政府庁舎前で

販売用アスベストタイル

CEPHED アスベスト建材を積んだトラック

アスベスト含有屋根材の下で食品を売る屋台

NAP:国家石綿プロファイル (成果物の冊子)

研究の概要

2015年8月の助成申込書より
 ネパールは年間1200トンもの石綿を輸入し、建築資材として使われてきました。しかしながら、石綿の大量使用と廃棄石綿の不適切な管理により、特に南部のテライ平原地域では多くの労働者が石綿に曝露し、中皮腫の罹患例も増加しているほか、水質汚染など環境悪化も懸念されています。2015年6月、ネパール政府は石綿の輸入・販売・流通・使用を例外除き原則禁止としましたが、依然として石綿は大量に輸入・使用されているため、この現状を改善していくことが喫緊の課題となっています。  本調査では、以下の手法で、当該地域の環境汚染や健康影響の事例研究を行い、ネパールにおける石綿の実状を把握し、それを元に、国家石綿プロファイル(NAP: National Asbestos Profile of Nepal)を作成・配布し、石綿の使用禁止を全国に訴えていきます。 1)石綿を多量に用いている村落を5ー10カ所訪ね、アスベスト廃棄場所や被害者に関する地図の作成やリストアップを行う。 2)被害者の健康影響や環境汚染のホットスポットに関する事例研究を行う。 3)中国あるいはインドとの国境の税関を訪問し、石綿輸入状況を把握する。 4)NAPの作成と配布を行い、地方自治体、国におけるその政策の徹底を図る。 5)一般市民への普及啓発活動として、石綿の危険性を知らせ、石綿の使用をストップさせるため、テレビやラジオ、SNSなど各種メディアを活用する。

中間報告


結果・成果

2016年12月最終報告書より
ネパール政府は2015年に石綿の輸入・販売・流通・使用を禁止しましたが(一部例外あり)、いまだ大量に輸入・使用されていることから、汚染地域の実情を明らかにするために、石綿の輸入、販売、流通、使用禁止の実態、コンプライアンス状況、それに伴う健康被害や環境影響を調べ、データの公表とともに、具体的な行動計画の提言を取りまとめた「国家石綿プロファイル(NAP: National Asbestos Profile of Nepal)」を作成・発行しました。 ※NAP原本はページ右上からダウンロード&閲覧できます。 調査手法としては、テライ地方の中央部と東部をフィールドに、市場や村落、税関を訪問しての情報収集、ホットスポットマッピング、石綿の輸入、販売、流通、使用に関わる様々な関係者とのアンケート調査、職場や公共施設など石綿使用が疑われる各所での石綿製品・粉じんのサンプル採取と分析を行いました。 調査の結果、石綿含有製品全体の輸入は減少しているものの、完全にストップしているわけではなく、不法輸入が続いていること、法律施行日以前の在庫が大量にあること、また、対象地域のほとんどの村で石綿の飛散・曝露が疑われる場所(ホットスポット)が存在していることが明らかになりました。サンプル採取と分析では、国内各所から採取した屋根材や石綿製造ラインからの粉じんなどを調べたところ(検査は東京労働安全衛生センターに依頼)9つの検体中6つが主にクリソタルタイプの石綿含有建材で、その含有量は5〜50%であることが明らかになりました。 NAPでは、こうした実態を公表するとともに、効果的な対策(法的、制度的枠組みなど)が取られるよう、1)石綿含む有害廃棄物の安全かつ環境に配慮した管理システムの確立、2)震災後の再建含め、ネパールにおける石綿その他有害物質を含まない建設資材の使用の呼びかけ、3)全国および特にテライ地域で使われている石綿の削減・除去、4)石綿暴露疾患(あるいは可能性含む)労働者数に関する人口統計的と疫学研究調査、5)OSH(労働安全衛生)プロジェクトの推進、石綿の曝露上限値の設定とその監視システムの実施など、様々な提言を盛り込んでいます。 NAPは、中皮腫や石綿関連疾患の健康被害を受けた(あるいはリスクのある)住民や労働者、環境保全に関わる行政担当者や関連企業など、あらゆるステークホルダーに向けた、初の石綿関連資料となり、ネパール国内の石綿関連政策の実効性を高める具体的な参考ツールなるのはもちろん、隣国の南アジア諸国やその他の諸国にも参考になると考えています。 NAP作成・発行と同時に、石綿に対する市民の意識を高めるために、紙媒体によるニュース発信、SNS、ラジオ番組を通して普及啓発事業も実施してきました。 ネパールからあらゆる形態の石綿の全面排除に向けて、引き続き関連機関と協力しながら取り組んでいきたいと思います。 ※申請者のラムトラチャー氏は、こうした環境と公衆衛生への功績が認められ、2016年6月の世界環境デーにおいて、環境保全賞を受賞しました。

その他/備考


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