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日本の原子力政策と原子力政策策定プロセスにおける市民参加



グループ名
代表者氏名 Philip White さん
URL
助成金額 50万円

研究の概要

2011年12月の助成申込書から
 福島第一原発震災後、日本政府はエネルギー政策見直しを開始しました。抜本的な政策転換になるかどうかは、議論の幅および市民参加の度合いにかかっているでしょう。  この研究プロジェクトの目的は、日本の原子力政策の議論がいかに制限されていたかを探り、この制限がもたらした社会的・環境的影響の考察、および原発震災前後の政策策定プロセスの変化と、それが原発震災に与えた影響の考察にあります。  渡日に先立ち、下記の三つの政策見直しプロセスに関する文献調査を行います。(1)1990年代後半に行われた原子力政策に関する円卓会議、(2)現在の原子力政策を策定した2004〜5年のプロセス、(3)現在行われている原子力政策見直しプロセス。この三つの政策見直しプロセスの分析を踏まえ、日本の原子力政策決定プロセスおよび市民参加に関するより広い分析を行います 。  2012年末ごろから4ヶ月程度、日本の原子力策定プロセスに直接関与された方々にインタビューするため渡日する予定です。この 渡日にかかるコストを補うために今回高木基金に申請しました。  このプロジェクトはアデレード大学アジア研究センターにおける博士コースの一部です。

中間報告

2012年10月の中間報告から
 福島第一原発震災後、日本のエネルギー・原子力政策が抜本的に転換するかどうかは、市民参加の度合いにかかっています。「国民的議論」を経て、2012年9 月14日に政府が「原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」と掲げた「革新的エネルギー・環境戦略」を発表しましたが、その直後、「原発ゼロ」目標に対する巻き返しが始まりました。「原発ゼロ」を実現するため、市民が積極的に参加し、声を挙げ続けることはますます重要となります。  この研究では、過去の原子力政策策定への市民参加がいかに微力だったかを検証し、また今後の市民参加の発展の可能性を探ります。そのために次の三つの政策見直しプロセスの分析を行います。 (1)1990年代後半に行われた原子力政策に関する円卓会議 (2)2005年の原子力政策大綱の策定プロセス (3)現在行われているエネルギー・原子力政策見直しプロセス  昨年来、過去のプロセスに関連する文献を収集すると同時に、東京電力福島原発事故以降のプロセスに関連する審議会と「国民的議論」をインターネットでフォローしてきました。特に、3・11以降のエネルギー・原子力政策を対象とした市民社会の活動が、日本における参加型民主主義の深化につながっていく可能性に注目しています。8月28日〜9月12日に訪日した際、日本のエネルギー・原子力政策の策定プロセスや日本における市民参加に詳しい11人にインタビューしました。収集したインタビューデータを踏まえ、2012年12月5日〜2013年4月3日に、再度訪日し、さらなるインタビュー・フィールドワークを行う予定です。

結果・成果

完了報告・研究成果発表会資料より
 この研究プロジェクトでは日本の原子力政策形成プロセスにおける公式および非公式の市民参加について歴史的な観点から調べ、福島原発事故前後のプロセスを比較します。高木基金の助成金を得て、日本での4ヶ月間のフィールドワークで何らかのかたちで直接的に原子力政策に係ったことのある60人以上の原発批判派、推進派の双方の立場の人々にインタビューすることができました。これから1年半ほど費やして滞日中に行ったインタビューおよびその他収集した資料を分析し博士論文を書く予定です。  福島原発震災後、当時の民主党政権はエネルギー政策見直しを開始し、2012年9月に「革新的エネルギー環境戦略」を発表しました。周知の通り、戦略は2030年代に原発ゼロという目標を掲げました。矛盾だらけの戦略でしたが、「ゼロ」という言葉が含まれたことは画期的なことでした。  「革新的エネルギー環境戦略」のもう一つ画期的なことは、政府の原子力政策に関する公式な政策文書の内容に市民が影響を与えたことです。市民からの圧力は二つの形で現れました。2012年7月、8月に行われた国民的議論で明確に表現された「ゼロシナリオ」への支持と、同時に官邸前でくり広げられていたデモです。この研究はこうした公式及び非公式の形式の市民参加がどのように相互作用し、民主党政権の決定に影響を与えたかを検討します。  2012年12月の選挙で自民党が政権を取り、前政権の脱原発方針を見直すことを発表し、エネルギー基本計画を作成する委員会から原発に対して批判的な委員のほとんどが排除されました。しかし、自民党でさえ、もはや政策決定過程から市民を完全に排除することはできません。市民に参加の機会を最大限に与えるよう政府に働きかけたい方々は昨年の国民的議論から学ぶべきことがあると思います。

その他/備考


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