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これまでの助成研究・研修

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米国の工業的畜産と多国籍アグリビジネス支配に対抗する市民運動(サステイナブル・フード・ムーブ メント)の成果とその手法を学ぶ



グループ名
代表者氏名 野崎 壱子 さん
URL
助成金額 40万円

研究の概要

2010年12月の助成申込書から
 本研修では、米国から広がる工業的畜産とアグリビジネスがもたらす食の支配と深刻な環境・社会問題に対し、1970年代から草の根の反対運動を進める女性活動家フランシス・ムーア・ラッペ氏のサステイナブル・フード・ムーブメントの成果と手法を学ぶことを目的とする。  工業的畜産は、過密状態で高濃度飼料を与え、短期に安価で大量の家畜を育てる家畜の生産形態である。主に米国で発展し、現在は全世界に広がる。大量の遺伝子組み換え穀物飼料のほか、水や化石肥料、薬剤等を必要とすることから、(1)途上国の飢餓、(2)温暖化の進展、(3)先進国の健康・アレルギー問題を引き起こしている。  これらの問題を1970年代に初めて指摘したのがラッペ氏であり、ラッペ氏らによる市民活動・政策提言組織「フードファースト」(1975年設立)は、米国と途上国の市民らに、市民みずからの行動で食の支配に対抗する手法を伝え続ける(1987年ライトライブリフッド賞受賞)。  2002年からは、後継者であり、科学者とジャーナリストの両領域で活動する娘のアンナ・ラッペ氏とともに「スモールプラネットインスティテュート」を設立。工業的畜産による環境汚染を改めてに指摘するとともに、市民による創造的で持続可能な食を求める運動(サステイナブル・フード・ムーブメント)のリーダー組織として、新たに若い世代にも支持を広げている。  日本でも近年、狂牛病や口蹄疫などの問題や飼料穀物価格の高騰などから、畜産物の安定供給への関心は高まってはいるが、工業的畜産が引き起こす弊害への問題意識は低い。市民の食の選択が、個人の問題ではなく、深刻な社会問題や環境問題と直結することをいかに伝え、どのように市民の力を育成するのか、その手法を学ぶことで、日本の食のあり方を見直す市民運動へつなげていく。

中間報告

2011年11月の中間報告書から
 この研修では、アメリカの食育市民運動である「サステイナブル・フード・ムーブメント」がどのように進められ、成功しているかを調査することを目的としています。現在、この運動を主導するNPOのひとつ「Small Planet Institute」の取材を、9〜10月にニューヨークで行ったところです。  同NPOは、フランシスさんとアンナさんの母娘が共同代表です。母のフランシスさんは、1970年代前半に著書「Diet for a Small Planet」を記しました。飢餓問題は社会問題であることを初めて指摘し、700万部を超えるベストセラーになっています。一方、娘のアンナさんは、ウェブを活用した教育で、若い世代に支持を広げる活動家です。遺伝子組み換え飼料の問題等を指摘するとともに、解決策を分かりやすく提議して注目されています。  9月下旬には、同NPOの設立10周年記念フォーラムがありました(写真)。フランシスさん(写真・左)の対談相手として、インドの環境活動家ヴァンダナ・シヴァ氏(写真・右)が参加し、持続可能な農畜産業のヴィジョンが披露されました。フィランソロピストらから資金を集めるとともに、週刊誌「The Nation」でも同時に特集を組むなど、単なる記念イベントに終わらない仕掛けもありました。  研修後半では、アンナさんが今年から3年計画で進める「Real Food Media Project」について学びます。このプロジェクトは、アメリカ国内の主要なNPO が連携し、工業的畜産をはじめとするアメリカの食の問題を指摘するため、独自の教育ビデオ等を作るともに、メディアや行政にも働き掛けるもので大変興味深い内容となっています。

結果・成果

完了報告より
 この研修では、工業的畜産がもたらす健康・社会問題に対し、アメリカの食育市民運動である「サステイナブル・フード・ムーブメント」がどのように進められ、成功しているかを学ぶことを目的としました。研修はこの運動を主導するNPOのひとつ「SPI:Small Planet Institute」において2011年9月から1か月ニューヨークで行いました。  SPIは社会活動家のフランシス・ムーア・ラッペ氏とアンナ氏の母娘が共同代表を務めています。9月は主にNPO 設立10周年記念にあたって実施された企画「持続可能な農畜産業のヴィジョン」に参加し、フランシス氏とインドの環境活動家ヴァンダナ・シヴァ氏の対談などから学びました。10月はアンナ氏による「Food Media Project」等について取材しました。  SPIの運営方針の一つは組織を小さく留め、他の専門組織との連携を重視するというものでした。前述のプロジェクトでも分野別に全米の12組織と連携しています。  活動は多様に展開し、若者向けのビデオクリップから草の根の小規模集会まで幅広い世代へ働きかけていました。また大手メディアの報道の偏りを問題視する中で、メディアの記者へ直接情報提供をしているのも印象的でした。  研修後は、SPIが制作に関わった食育フィルムと教育カリキュラムを持ち帰り、2012年後半に開かれる日本の農業関連映画祭での上映を準備しています。このフィルムの紹介を通じ畜産の問題をはじめとする日本でまだなじみの薄い食の問題を深く掘り下げて伝える方法を考えていきたいと思います。

その他/備考


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