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コンクリート・プロブレム:インドのセメント処理施設における有害な混合焼却による環境影響



グループ名 脱焼却炉グローバル連合(GAIA)
代表者氏名 アン・ララカス さん
URL http://www.no-burn.org/
助成金額 40万円

ヒマーチャル・プラデシュ州Baddiのセメントプラント

グジャラート州Sanghiのセメント工場

大気の粉塵をとらえたフィルター(左側)

研究の概要


 CO2排出量削減のため、セメント処理に石炭などの代わりに都市廃棄物や有害な産業廃棄物を燃料として使用する「混合焼却(Co-incineration)」が推進されています。しかし、削減効果が疑わしいのみならず、複数の調査で有害物質の排出増加による環境や地域住民への影響が指摘されています。本調査研究では、インドで混合焼却を導入する15のセメント工場の排出物に関する包括的な科学分析を行い、州当局のモニタリング・サンプルデータとの比較などを行います。調査結果はコミュニティと共有し、インドでの混合焼却や廃棄物のごみ固形燃料(RDF)への転換に反対するキャンペーンに使用する他、関係当局に提出し、厳格な汚染規制を求めます。また、混合焼却に反対するアジアやラテンアメリカの団体にも情報発信します。

中間報告


結果・成果


 インドの中央公害管理局(CPCB)が2010年に示したガイドラインによって、インドのセメント工場では、石炭などの代わりに産業廃棄物や都市廃棄物を燃料として利用する「混合焼却(Co-incineration)」が可能となりました。セメント業界は、廃棄物を代替燃料として利用することによって、CO2排出量の削減につながることや、都市や産業が直面する廃棄物問題を短期的に解消することを利点として主張しています。しかし、インドのセメント工場では、石炭など従来型の燃料を使用している現状においても、工場から排出されるばい煙などによる大気汚染が問題となっています。こうした状況において、CPCBなどの規制当局が混合焼却の認可にともなう厳しい排出管理規制を行うことが可能なのか、疑問です。そこで本調査研究では、従来型の燃料を使用するセメント工場の大気汚染サンプル調査を行い、州の公害管理当局によるモニタリング体制の実効性を問うとともに、有害廃棄物の混合焼却にあたって前提とされる長期的なモニタリングや規制をCPCBが実施することが可能かどうかを検証することにしました。  プロジェクトでは、第1フェーズとして、インド国内の4州にある7つのセメント工場周辺の10カ所(*)でエアーサンプラー「MiniVol」を用いて大気測定を行いました。分析はオレゴン州のCHESTER LabNet で行いました。また、第2フェーズとして、国や州政府当局への情報公開請求を行い、セメント工場ならびに混合焼却の関連情報を入手しました。第1 フェーズの結果、10カ所のサンプルすべてから、インド国内の基準(24 時間60μg/m3) を超すPM2.5( 微小粒子状物質)が検出されました(多いところでは基準の6 〜7 倍)。また、10カ所中9カ所のサンプルから、米国環境保護庁(EPA)の標準濃度( 年0.05μg/m3) を超過するマンガン、10 カ所中5 カ所のサンプル中から、EPA の基準(3 カ月0.15μg/m3)を超す鉛、10 カ所中2 カ所のサンプルから、米国カリフォルニア州環境保護庁の環境健康有害性評価局(OEHHA)の基準(年間0.03μg/m3)を超す水銀、10 カ所中2 カ所のサンプルから、カリフォルニアの基準(年0.014μg/m3)を超すニッケルが検出されました。  一方、州の公害管理当局から、これらのセメント工場の排出データを入手したところ、以下のことが分かりました。   (1)PM2.5 は、取得データの大半がインドの大気環境基準を超過している。   (2)重金属については、全く分析されていない。   (3)どの分析結果にも、サンプル取得に関する手法や詳細情報(場所、風向き、天候など)が記載されておらず、信頼性が乏しい。  さらにCPCBや州の公害管理当局に対し、セメント工場での混合焼却に関する情報公開請求を行ったところ、少なくとも11州39カ所のセメント工場で、混合焼却が実施されており(試験運転を含む)、11州のいずれも排出モニタリングや記録に関する体系的な手法が確立されていないことが分かりました。さらに試験運転での重金属の排出レベルがEPA基準を超過しているケースがあることもわかりましたが、重金属については国の排出基準がないため、法的措置を取るのが難しいのが現状です。なお、焼却されている廃棄物は、自動車産業、車両工場、精錬所、化学工場、都市廃棄物、農薬工場などからのものであることがわかりました。セメント工場では、従来型の燃料を使用した場合でも深刻な環境汚染をもたらしており、規制当局が汚染物質の規制に関する適切な能力を有していないことは明らかです。このような状況で、有害廃棄物を燃焼する「混合焼却」を安全と見なすことは到底できません。都市や産業から排出される廃棄物問題は取り組みの必要な大きな課題であり、「混合焼却」では決して解決できないものなのです。 (*)サンプルを取得した州およびセメント工場 ・ グジャラート州:Sanghi Cement(2 カ所で取得)、Jaypee Cement ・ チャッティースガル州:ACC Jamul / Hocim Cement(2 カ所で取得)、LaFarge Cement(2 カ所で取得) ・タミル・ナードゥ州:Dalmia Cement ・ヒマーチャル・プラデーシュ州:ACC Cement、Jaypee Cement

その他/備考


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