高木基金について助成応募の方法これまでの助成研究・研修高木基金の取り組みご支援のお願い

これまでの助成研究・研修

トップページ > これまでの助成研究・研修 > 助成事例の詳細


霞ヶ浦導水事業の生物多様性影響評価研究



グループ名 霞ヶ浦漁業研究会 研究成果発表会配布資料[pdf]
代表者氏名 浜田 篤信 さん
URL
助成金額 70万円

霞ヶ浦での張網による魚種組成調査

研究の概要

2016年12月の助成申込書から
<目的>
霞ヶ浦導水事業で那珂川から毎秒15m3および利根川から毎秒25m3の取水を行った場合の那珂川・涸沼および利根川・霞ヶ浦への生態系、漁業への影響を明らかにするために以下の研究を行う。
1 霞ヶ浦の環境に与える影響(霞ヶ浦が浄化されるとする国の予測の検証を中心に)
2 全国のニホンウナギに与える影響(産卵場が全国共通のマリアナ海域なので影響あり)
3 涸沼の環境に与える影響(涸沼への影響はないとする国の予測の検証)
4 那珂川のアユ資源への影響
5 那珂川・涸沼水系のシジミ漁業への影響
6 那珂川水系の漁獲対象種の魚種毎の被害率算定

<方法>
現地調査、漁業者からの聴き取り調査、既往のデータ収集、既往文献解析

<期待される成果>
東北地方太平洋沖地震をふまえた新しい水資源開発管理への提言
霞ヶ浦開発事業、霞ヶ浦導水事業等大規模公共事業の中止、見直しの開始となる.
生態系、生物多様性価値を中心に据えた新しい地方創生案の提言
次世代を担う戦う研究者の育成 .

中間報告

2017年10月の中間報告から
 霞ヶ浦導水事業は、霞ヶ浦と利根川および那珂川を地下トンネルで連結し、霞ヶ浦を貯水池として両河川の水資源を効率的に利用しようとする、全国初の流況調整河川開発事業で、昭和40年代に建設省によって計画されました。茨城県が霞ヶ浦浄化の手段として要望したもので、1976 年調査着工、1984年建設着工した1900億円の事業です。当該事業は、(1)新規都市用水開発(毎秒9.2m3)、(2)霞ヶ浦等の水質浄化、(3)正常な流水の維持、を目指すものとされています。しかし、いずれの目的についても有効でないことが指摘されており、2000 年には市民有志によって住民監査請求、続いて住民訴訟が起こされました。
 本研究の目的は、霞ヶ浦導水事業の利根川、霞ヶ浦、那珂川各水域の生物多様性に与える影響を明らかにし、当該事業の妥当性を検証することです。
(1)那珂川・涸沼への影響
 那珂川(取水口:河口から18.5km地点)から毎秒15m3を取水した場合の那珂川下流域の基礎生産と高次生産に及ぼす影響を明らかするために、河口から0.5km地点で那珂川に合流する涸沼への那珂川河川水の逆流量の算定を行い、その涸沼の基礎生産への影響を定量化し那珂川下流の魚類生産への影響を評価しました。
(2)霞ヶ浦の水質浄化
 那珂川から霞ヶ浦へ毎秒15m3導水した場合の湖水水質への影響を、国のシミュレーション結果を検討すると同時に、独自の方法を考案し、影響を検討しました。
(3)ニホンウナギ資源への影響
 本種の資源減少原因は、乱獲、環境改変、海洋構造の3仮説が提唱、検討されていますが、より有力な新しい仮説「霞ヶ浦開発仮説」の構築検証をすすめています。
(4)控訴審
 東京高裁審(9月19日および12月)用に以下の2つの意見書を作成、弁護団会議に提出、一部が東京高裁に提出されています。
 (a)霞ヶ浦導水事業の那珂川生態系影響評価
 (b)霞ヶ浦導水事業による霞ヶ浦水質浄化効果について
(5)茨城県との交渉
 茨城県と霞ヶ浦導水事業の効果について協議、当該事業からの撤退をもとめました。水質浄化効果がないことを資料で説明しましたが、茨城県の対応は事業主体の国に伝えると回答するに留まりました。


霞ヶ浦導水事業の概要(霞ヶ浦導水工事事務所より)

結果・成果

完了報告・研究成果発表会資料より
 霞ヶ浦導水事業は、霞ヶ浦と利根川、那珂川を42kmの地下トンネルで繋ぎ、霞ヶ浦の水質浄化、新規都市用水の開発、正常な流水の維持をはかるとする国土交通省の事業です。本研究では、霞ヶ浦の水質浄化の検証と生物多様性損傷の2点に絞って調査をしました。
(1)霞ヶ浦の水質浄化
 霞ヶ浦の水質浄化を3つの方法で検討しました。シミュレーションによる予測値と実測値との間には相関関係が認められませんでした。霞ヶ浦への流入水量と湖水のCODの関係を検討したところ水資源管理の状態では流入水の増加はCODを上昇させる方向に働き、有効な方法でないことが明らかとなりました。
(2)那珂川下流域の魚貝類生産構造
 那珂川から涸沼への逆流総量を涸沼と涸沼川河口間の酸素収支から求めました。那珂川本川の河床高変動と逆流量の間に相関関係があり、逆流量が減少すると漁獲量が減少することが分かりました。涸沼への逆流量に影響を与える主要因は、河床高と流量であり、本川流量が減少すると涸沼への逆流量が減少し、このことが漁獲量低下をもたらすことが明らかとなりました。
(3)漁業被害率
 那珂川から涸沼への逆流量が、流量と河床高によって変動し、そのことが漁獲量に影響を与えていることを明らかにしました。那珂川からの15m3/秒の取水で、シジミ35%、ウナギ・アユ45%、ハゼ・フナ・ウグイ50%、オイカワ57%の被害が発生すると推定されました。利根川からの取水は全国のニホンウナギ資源に影響を与える危険性があることも明らかとなりました。

 漁獲量は激減の時代に突入し、ニホンウナギをはじめ、シジミ類やアユについても深刻な事態に立ち至っています。増え続けていた漁業者人口も減少し続けています。特筆すべきは漁業者の意識です。霞ヶ浦導水差止訴訟では、清流那珂川を次世代へ継承する一点で茨城・栃木両県の全8 漁協が決起しています。こうした事態を踏まえて公共事業の漁業や生態系への影響評価について全国規模の事後調査が必要です。霞ヶ浦導水差止訴訟は、「和解」で決着することになりましたが、わたしたちは、事業効果が認められず、多大な漁業被害と生物多様性損傷を引き起こす当該事業の中止を望んでいます。

 なお、本調査研究の成果は、霞ヶ浦漁業研究会『霞ヶ浦導水事業の生物多様性影響評価研究報告書』(2018年6月:Amazonにて注文可能)としてまとめました。

その他/備考


HOME助成応募の方法これまでの助成研究・研修高木基金の取り組みご支援のお願い高木基金について
ENGLISHサイトマップお問い合わせ 個人情報の取り扱い