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再生可能エネルギーとしてのパーム油利用問題に関する調査研究



グループ名 熱帯林行動ネットワーク 研究成果発表会配布資料[pdf]
代表者氏名 川上 豊幸 さん
URL http://www.jatan.org/
助成金額 40万円

パーム椰子の運搬

パーム椰子の農園

バイオマス発電のFIT認定量が急増し、そのうち燃料にパーム油を含むものの割合が多い。PKSはPalm Kernel Shell(ヤシがら)(資源エネルギー庁「一般木材等バイオマス発電について」2017年11月より)

研究の概要

2016年12月の助成申込書から
 欧州では、森林減少や人権侵害を引き起こさないという観点からRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)認証のパーム油を選択する動きがある。パーム油生産は土地や労働の人権侵害の問題とともに、気候変動への影響も大きい。RSPO委託調査やUNEPによるパーム油の温室効果ガス排出係数では、森林転換、泥炭地開発や管理状況により大きな幅があるが、下限値では石炭等の化石燃料の排出係数より大きい。ところが、再生可能エネルギー電力買取制度(FIT)において、パーム油を燃料とした発電事業が可能で、一件で現在の全輸入量の25%近い量のパーム油を利用する発電事業も検討されている。こうした事業が拡大すると、むしろ温室効果ガス発生を増加させ、環境社会問題を拡大してしまう。日本ではパーム油の排出係数をゼロとする場合や、FITでは持続可能性条件もなく、「農産物の収穫に伴って生じるバイオマス」として24円の買い取り価格が設定され、世界の認識と大きなギャップがある。そこで、既存の排出係数推計内容を精査し、森林減少と泥炭地開発の排出係数への影響評価の整理を行う。加えて、その情報開示としての認証制度の有効性を検討する。現在、RSPOやRSPO NextやPOIG等の自主的な認証に加え、ISPOやMSPO等の生産国が進める認証制度があり、実態を踏まえた上で、これら認証制度の有効性を評価する。これに基づき、日本でのFIT等の政策やカーボン・フットプリントの議論に影響を与えたい。

中間報告

2017年10月の中間報告から
 パーム油は、生産に伴う生物多様性へのダメージ、土地と労働における人権侵害などの問題とともに、気候変動への悪影響が指摘されています。パーム油開発は、森林転換や泥炭地排水により、膨大な温室効果ガスを排出するものと認識されています。RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)委託調査やUNEP(国際連合環境計画)によるパーム油の温室効果ガス排出係数では、状況により大きな幅がありますが、下限値では、石炭等の化石燃料の排出係数より大きいとされています。
 ところが、日本の再生可能エネルギー電力買取制度(FIT)において、パーム油を燃料とした発電事業が可能となっています。2017年3月末時点で、バイオマス発電のFIT認定量は1242万kWですが、パーム油やPKS(パーム椰子殻)を利用する一般木材等が1147万kWとなっており、このうち、パーム油を利用するものが、38%(出力ベース)、PKSの利用を含むものが45%に達しています。よって、バイオマス発電のFIT認定量全体の、76%がパーム油及びPKSを利用する発電施設ということになっています。
 また、パーム油もバイオマスの一種とされており、FITでの買い取り価格は、24円となっています。2017年10月以降は、出力2万kW以上の場合は21円となりますが、2万kW以下では、引き続き24円のままです。
 加えて、木材については必要となる合法性確認の条件すらなく、こうした価格が適用されます。これでは、炭素排出量を実質的に増大しているだけのことになっています。FITの調達価格等算定委員会において、パーム油やPKSについての持続可能性基準の導入や、ガイドライン強化を通じて、パーム油製品利用による人権侵害や気候変動を含む環境被害を抑制する取り組みが必要です。そこで、既存の排出係数推計内容を精査し、森林減少と泥炭地開発の排出係数への影響評価の整理や、その情報開示としての認証制度の有効性などを検討することとしました。これに基づき、日本でのFIT等の政策やカーボン・フットプリントの議論に影響を与えていくことを目指しています。
 現在、他団体とも協力して、パーム油利用によるバイオマス発電を計画している企業への働きかけや、FIT調達価格等算定委員会の委員への働きかけを行っており、今後は経済産業省やメディアへの働きかけも行っていく予定です。

結果・成果

完了報告・研究成果発表会資料より
 私たちは、従来から、パーム油を生産するアブラヤシ農園の問題に取り組み、食品や日用品利用を行う企業に対し、森林減少や泥炭地の開発、人権侵害にも加担しない責任ある調達方針を求めて、他団体と活動を行っていました。
 ところが、2016年にはパーム油を再生可能エネルギー燃料として利用しようというプロジェクトが持ち上がり、ニュースとなりました。その規模は大きく、一つのプロジェクトで日本の既存のパーム油需要の1割にも達することから、危機感を持ちました。
 本調査研究では、「既存のCO2排出係数推計方法を精査し、パーム油のエネルギー利用がもたらす森林減少と泥炭地開発によるCO2排出の影響評価の整理を行う」ことを提案し、加えてパーム油認証制度の有効性の評価も行い、日本での固定価格買い取り制度(FIT)等の政策や、カーボン・フットプリントの議論に影響を与えようと考えました。ただ、既存の排出係数の精査過程でエネルギー向けのパーム油利用では、個々の直接的な事業活動の排出量だけでなく、「間接的土地利用変化」の影響も含めてセクター全体としての影響評価が必要で、その最新の推計でも、通常の化石燃料よりも多いCO2排出を引き起こすことが判明しました。
 さらに、他団体と協力しながら、日本でのFITの調達価格等算定委員会への働きかけを行いました。結果として、業者向けの「事業計画策定ガイドライン(バイオマス発電)」(2018年4月改訂)が強化されました。このガイドラインは全ての事業に適用され、既存の事業についても、2019年3月末までに原則RSPO(*)認証パーム油のみを利用することが規定されました。これによって、コスト高となり、想定外に急増したパーム油発電事業は、実質的に抑制効果が期待できることとなりました。
 しかし今後、上記の「ガイドライン」をも満たすかたちで、低価格のRSPO認証パーム油が大量に供給可能になった場合、これまで食品と日用品向けに供給可能となっていたパーム油利用が圧迫されてしまうという影響もあり、大きな課題ともなるため、引き続き、パーム油を燃料としたエネルギー利用を排除するような規定を盛り込めるよう活動を継続していく予定です。

(*)Roundtable on Sustainable Palm Oil:環境・社会に配慮したパーム油の生産を推進する国際的な非営利組織

その他/備考


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