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北海道における旧炭鉱の「ズリ山」の放射能汚染について



グループ名 岩内原発問題研究会 研究成果発表会配布資料[pdf]
代表者氏名 斉藤 武一 さん
URL
助成金額 40万円

「ラドンスカウトプラス」による測定の様子

自然発火が続いているズリ山の様子

自然発火しているズリ山での測定の様子

研究の概要

2016年12月の助成申込書から
 泊村、夕張市など旧炭鉱の「ズリ山」がある北海道の6市町村で、ガンの死亡率が非常に高くなっている。「ズリ山」の石炭に含まれているウランからラドンガスが発生していると考えられる。  北海道には「ズリ山」は全部で100以上あるが、そのうち何地点かを選定(今のところ3地点を予定)し、「がん」とラドンガスの関係を明らかにしたい。  ラドンガスの実際の濃度測定は泊原子力発電所近くの旧茅沼炭鉱を含む「ズリ山」でラドンガス測定器を用いて調査し、期間を設け季節ごとに行う。  ラドンガスの測定には、家庭用や低価格の携帯用機器では測定時間が長時間にわたり(24時間以上かかる)、ズリ山での測定には不向きである。10分程度の短時間でも測定できるスポットタイプの測定器が必要になる。アメリカ製のスポット測定機器「ドーズマン」の仕様は、シリコン半導体検出器でアルファー線スペクトルをもとにラドン濃度を測定、ラドン濃度・湿度・温度・気圧・平均ラドン濃度を測定できる。また測定間隔(時間)の任意変更が可能となっている。  測定調査後、結果を取りまとめ公表し、関係機関に対策を求めていく。

中間報告

2017年10月の中間報告から
 旧産炭地である泊村、夕張地区(夕張市、赤平市、三笠市、歌志内市、上砂川町)は、がんの粗死亡率(一年間の死亡数をその年の人口で割った値)が高く、過去39年間の平均では、泊村が全道1位、次いで夕張地区が高くなっています。粗死亡率は1974年からのデータがあり長期間の平均値が出せます。両地域の粗死亡率の高さは、高齢化率が高いことが一因でもありますが、両地域にはズリ山(石炭の廃石)があり、そこから放出されるラドン(気体)が健康被害をもたらしている可能性があるのではないかと考えています。石炭には微量のウランが含まれ、ウランはラジウムに変化しラドンが発生します。ラドンは肺がんの原因となります。  2017年5月に夕張地区のズリ山の位置、高さなどを事前調査しました。6月にはラドン測定器「ラドンスカウトプラス」(ドイツ製、シリコン半導体検出器)を購入し、6?9月に23地点、33回測定を実施しました。  各地点測定時間は60分、Bq/m3で表示されます。測定結果は、泊村のズリ山地表では9Bq/m3。ズリ山地表高さ1m測定では、赤平市9Bq、上砂川町27Bq、夕張市清水沢0Bqとなりました。ズリ山が真正面に見える市街地の公園での測定は、泊村9Bq、上砂川町88Bqでした。この2地点は、ともに山に囲まれた、言わば谷底となっています。また、上砂川町のズリ山は自然発火し続けていて、石炭を燃やしたときに出る独特の匂いが測定した公園に漂っており、それらが谷底地形により滞留している可能性があるのではないかと考えられます。しかし、この地点での別の日の測定では0Bqとなりました。また、夕張市清水沢のズリ山から500mにある公園での測定値は0Bqでした。  こうした測定結果が出ているのは、ラドンが風の影響で拡散することも一つの原因ではないかと考えています。ラドンの測定は数多くの地点で行う必要性があることを痛感しました。 (なお、ラドンの日本全国の室内平均は、欧米の半分以下の15.5Bq/m3です。)

結果・成果

完了報告・研究成果発表会資料より
 北海道におけるがんの粗死亡率(10万人当たりの死亡数1974〜2012 年)において、泊村が全道第一位で、次いで高いのが夕張地区(夕張市、赤平市、三笠市、歌志内市、上砂川町)でした。どちらにもかつて炭鉱があり、質の悪い石炭などを捨てたズリ山があります。石炭には微量ですがウランが含まれています。ウランはラジウムに変化し放射性気体のラドンが発生します。そこで、旧産炭地の粗死亡率が高いのは、ズリ山から発生しているラドンが影響しているのではないかと仮説を立てました。  2017年5月、事前調査するため夕張地域の10個のズリ山を見分してきました。上砂川町のズリ山は、自然発火しており、ひどい悪臭が漂っていました。6 月、支援を受けてドイツ製のラドン測定器「ラドンスカウトプラス」を購入しました。7月、泊村のズリ山に登りラドンを測定しました。中腹で8Bq/m3(地表よりの高さ40 cm)、頂上で9Bq/m3(地表)でした。8月、夕張地区に行きました。赤平市の旧赤間炭鉱のズリ山は中腹で9Bq/m3(高さ1m)、頂上で9 Bq/m3(1m)、同ズリ山がみえる市街地の公園では9 Bq/m3(1m)でした。  近くに空知川があり谷底になっています。上砂川町の旧三井炭鉱のズリ山が見える公園では88Bq/m3(1m)でした。このときは、ズリ山と同じ悪臭を感じ、雲が低く、小雨が降っていました。ズリ山のラドンが山と山とに囲まれた公園に垂れさがり、ラドンが滞留していたようです。後日、晴天の同地点での測定値は0Bq/m3(1m)でした。夕張市の清水沢のズリ山は0Bq/m3(1m)でした。ここは高さが60m で小学生でも登れるズリ山となっており開けた場所です。  以上からズリ山からラドンが発生していることは確認できましたが、測定回数が少なく、ズリ山から年間どの程度のラドンが発生しているのかを推定するところまでは至りませんでした。一方、粗死亡率の高さと高齢化率の高さには相関関係がみられます。夕張地域は北海道でも高齢化率が高く、そのことが粗死亡率の高さにもつながっていると考えられます。  今回の観測だけでは、ズリ山から年間どの程度のラドンが発生し、身体にどのような影響をもたらしているのかは不明です。WHO(世界保健機構)によると、室内のラドンは、喫煙に次いで肺がんの要因とされています。土壌から発生したラドンが床下に溜まり、屋内に入り込むため換気が必要です。  屋内のラドンに比べて屋外のラドンと健康被害についての調査はほとんど行われていません。よって、炭鉱の後始末という観点からも、国の責任で旧産炭地のズリ山のラドンの測定を行い、疫学調査を実施すべきと考えています。

その他/備考


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