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たらちねβ線放射能測定プロジェクト



グループ名 いわき放射能市民測定室 たらちね 2016年度研究成果発表会配布資料[pdf]
2016年度研究成果発表会配布資料[pdf]
代表者氏名 織田 好孝 さん
URL http://www.iwakisokuteishitu.com/
助成金額 2015年1月〜2019年12月(※) 500万円

たらちねベータ線測定ラボでの測定関連作業の様子

福島第一原発沖1.5kmでの海水および魚類の採取の様子

福島第一原発沖1.5km定点観測サンプリングの位置

研究の概要


※高木基金の通常の助成は、期間1年間、上限金額100万円ですが、β核種測定のための測定設備を整備する大がかりな取り組みであることを考慮し、5年分の助成を一括して実施するかたちで、500万円の助成を行いました。 2016年の助成報告書から  福島原発事故により放出されたβ核種(ストロンチウム90、トリチウム)を特定し測定するため、液体シンチレーションカンターを備えたラボを開設しました。これまで、β核種の測定は、前処理の困難さから、国等の専門機関以外では、ほとんど行われていませんでした。  2014年4月から約1 年間かけてラボの整備や分析法の開発を行い、2015年4月にベータラボをオープンし、主に住民の方々から持ち込まれる食品や環境試料中のストロンチウム90及びトリチウムの分析を開始しました。測定結果を早く知りたい住民の皆様のため、分析に長い時間をかけないように、迅速な分析法の開発に取り組み、ストロンチウム90と放射平衡にあるイットリウム90のチェレンコフ光を計測する方法で、ストロンチウム90の測定を行っています。  2015年度ベータラボの測定依頼件数は143件でした。野菜や果物などの市販の食品に加え、自家栽培野菜や山菜、キノコなどの食品、土壌や植物、河川水、生活用水、水道水、海水などの環境試料、ワカメやカキ、シャケなどの海産物試料、また貝殻を原料とするチョークなどの工業品の分析依頼もありました。試料によって前処理方法が異なるため、これらのすべてに対応しきれてはいませんが、順次、対応していく予定です。  また、2015年9月に開始した福島第一原発(1F)沖での海洋調査により、1F沖1.5km付近の海水、魚の測定を開始しました。測定核種はセシウム134・137、トリチウム自由水・組織結合水、ストロンチウム90です。  今後の課題としては、以下のようなものが挙げられます。(1)海水のストロンチウム90 分析法確立。(2)骨・歯のストロンチウム90 分析法確立。(1)(2)とも標準試料を使い、分析の精度を上げる努力を行っています。

中間報告


2017年の助成報告書から  「たらちね」では、子どもたちを被曝から守り、健康な体を維持しながら育てるために放射能を測定し、被曝の軽減に役立てようと努力してきました。測定核種はセシウムだけでなく、2014年からベータ線核種であるストロンチウム90とトリチウムの測定にも着手しました。ストロンチウム90やトリチウムはガンマ線を放出する性質がなく、ベータ線をとらえることでしか測定する方法がないため、設備も大掛かりなものを必要とし、分析の技術も難しいものです。そのため、市民の間で測定が行われたことはありませんでした。しかし、この原発事故により、私たち自身が自分たちの身を自分たちで守る術として、ベータ線を測り、子どもたちを守っていくことが必要であるという考えのもと、「たらちねベータ線測定ラボ」を立ち上げ、日々測定を行っています。  現在、測定しているストロンチウム90、トリチウムの試料は一般の人々が持ち込む食品や土壌、資材、水などの他に、福島第一原発沖1.5kmで採取した海水や魚などです。2016年は、海水と骨の分析の技術の構築も行い、測定試料の種類が大きく広がりました。  測定してみてわかったことは、私たちの庭先にもストロンチウム90は存在し、一般食品の中にも含まれていることです。カルシウムなどの栄養価が高いほど、ストロンチウム90をとりこみやすく、それらのストロンチウム90が含まれた素材を使用した加工品が全国に流通していることもわかりました。  測定のデータは、毎月ホームページから発信しており、だれでも知ることができるようになっています。ストロンチウム90の値や、トリチウムの存在を知ることは、環境汚染の実態を知る上で非常に重要なことだと考えています。  専門的知識と人材育成については、この2年間の測定活動の積み重ねでたらちねの職員のスキルも上がり、「市民が測ることができるベータ線核種のラボ」という形が定着しつつあります。今後も測定技術の研鑽を継続したいと思います。

2018年の研究成果発表会資料から  2011年の福島第一原発の事故により放射性核種が飛散し、地域の人々は被曝による健康被害に不安を感じています。たらちねでは、2011年11月からセシウムの測定を行ってきましたが、それ以外の危険な核種が生活の場に飛散していることを知り、2014年からベータ線核種であるストロンチウム90とトリチウムの測定に着手しました。  測定試料は食品、水、土壌などです。化学的前処理を行い液体シンチレーションカウンターで測定を行います。測定結果は、たらちねの窓口やホームページ、Facebookや通信などで公開し、人々が汚染の状況を知ることができるよう努めています。  2015年からは福島第一原発沖1.5km 地点での定点サンプリングを行い、海洋の環境測定も開始、現在も継続しています。2017年は4 回の海洋調査を実施しました。  2017年のベータ線核種の測定件数は、トリチウムを32検体、ストロンチウム90を69検体、合計101検体です。たらちねだけの可動力では、この事故の汚染の実相をすべて検証することは不可能なので、他の市民測定所でもこの測定ができるよう、難しい前処理のマニュアル化とわかりやすく解説した絵本の作成準備を進めています。  2018年度は、化学分析のしくみをより詳細に学び理解すること、これまでの測定法で疑問に感じていることを実験によりつきとめること、そして、測定の技術の土台を固め、依頼試料を迅速に処理し、より正確な測定値を出せるようになることを目標としています。

結果・成果

完了報告から
 2014年から資金準備と技術面の準備など各方面に協力を要請し、同年10月にベータ線測定のラボが完成しました。  たらちねは被災地の測定室なので、結果はできるだけ早く出せるよう、国が定める公定法( 結果が出るまでに2ヶ月程度かかる)ではなく、様々な道具を駆使した迅速法で測定することに決めました。迅速法では、測定だけならば1週間程度で結果が出ます。  ストロンチウム90の測定は、前処理の乾燥・灰化、酸処理、ミルキング、レジン処理など、測定まで様々な工程があります。ストロンチウム90を測定する場合は、双子核種のイットリウム90を抽出し、測定する方法を用います。イットリウム90は、きちんと抽出できているかの回収率を確認し、自分たちの測定が正しいかどうかのクロスチェックも必要です。測定する試料は、食品、水、土壌、海水、資材、植物、動物の骨など様々です。国では、ストロンチウム90 はセシウムを測定すれば対比が決まっているので、おおよそ判断できる、と言っています。しかし、測定をしてみると試料の成分などの違いから、一般に言われている対比の通りではないことがわかりました。例えば、カルシウム成分の多い桑の葉などは、ストロンチウム90の値が高く、土壌中に含まれるストロンチウム90を好んで吸い上げてしまう様子がわかりました。  また、たらちねでは、トリチウムの測定も行なっています。福島県沖の海水などにも含まれていますが、松ぼっくりなどの組織の中にも入り込んでいることが、たらちねの測定からわかっており、今後も継続的に測り続けることが必要だと思っています。また、一般にトリチウムの影響が大きいといわれている玄海原発近隣の植物と福島原発近隣の植物の測定結果の比較などから、福島原発近隣の方がトリチウムの値が高いことがわかりました。  2019年にたらちねではストロンチウム90の分析法を細かく記した絵本を出版しました。これは、難しいベータ線の測定を多くの人々に知ってもらい、測定の輪を広げることが目的です。  たらちねの活動は、子どもたちの健康と未来を守ることが目的であり、子どもが歩む道をととのえていくことが日々の仕事です。そのために、真面目に丁寧に仕事をし、正確な測定値を出すことを心がけ努力しています。

その他/備考


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