高木基金について助成応募の方法これまでの助成研究・研修高木基金の取り組みご支援のお願い

これまでの助成研究・研修

トップページ  > これまでの助成研究・研修 > 助成事例の詳細


福島県飯舘村の村民のための、放射能による村内環境汚染の実態調査



グループ名 研究成果発表会配布資料[pdf]
代表者氏名 伊藤 延由 さん
URL
助成金額 30万円

「山形産」として直売所で売られていたコシアブラ

木村真三氏・東京新聞との調査で購入した山菜の汚染状況。測定:獨協医科大学国際疫学研究室

研究の概要

2017年12月の助成申込書から
 2017年3月31日に村内の一部帰還困難区域を除き国の避難指示は解除されたが、村内の放射能による汚染環境は何ら変わらず依然として高い状態にある。  現在行っている調査研究では、“自然の循環サイクルに組み込まれた放射性物質は調査困難”を実感しているが、避難指示解除で帰還した村民の被ばくを避けるように、汚染状態の情報を発信し続ける事を主眼に調査研究を進める。 (1)山菜、茸の経年変化調査  ・経年とともに減少傾向の物(ふきのとう)  ・乱高下を繰り返す物(ワラビ・コゴミなど多くの山菜)  ・生育環境には変化が無いにも関わらず97%も低減する山菜(タラの芽)  これらの追跡調査と変化の原因調査を継続する。 (2)脱セシウムの追加調査  フキ、ワラビについては塩蔵塩出しによるセシウムの大幅減少を確認しており、量を増やし塩出しのタイミングによる減少率の確認等を行う。 (3)土壌セシウム濃度の推移調査  農地は除染により大幅に低下したが経年による変化を追いその原因を調査する。  これらの調査結果を用い帰還住民の被ばく(内部、外部)低減に役立てる広報を行う。  事故により失った自然の恵みの補償と称する補償は2018年3月を持って終わるが補償継続の運動につなげる。

中間報告

2018年10月の中間報告から
 福島県相馬郡飯舘村は、2017 年3月31日に村内の一部帰還困難区域を除き国の避難指示は解除され、住民の帰還が始まりましたが、村内の放射能による汚染は、空間線量率、土壌のセシウム濃度、山菜・茸の汚染度合いなど、どの値をとっても人が住むには相応しくない環境です。しかし、国および村は、その環境下でこれまで村外の仮設校舎で行っていた幼保や小中学校を、村内で認定こども園、小中一貫校として開校しました。現在は100余人が村外からマイクロバスで通学しています(村内居住は5名)。  一方、住民の帰還はそれほど進まず、以下のような状況にあります。  未帰還者の多くは既に村外に住宅の購入・新築をしており、その数は1,000棟余りとなっているため、今後帰還者の増加は少ないのではと思います。一方、帰還者の多くは自然の恵みは享受出来るものと思っており、村は村内で生活する被ばくのリスクは一切語りません。  そうした中、現在行っている調査研究では、自然の循環サイクルに組み込まれた放射性物質の調査の困難さを実感していますが、避難指示解除で帰還した村民の被ばくを避けるように、汚染状態の情報を発信し続けることを主眼に調査研究を進めています。  飯舘村以外の問題に気がつくことも多々あります。私は、飯舘村に住みながら、常に個人被ばく線量計での被ばく線量を測定し、定期的にホールボディカウンター(WBC)で内部被ばくについても測定をしています。2017年7月に受けたWBCの結果では、1,834Bq/Bodyという結果が出ました。それまでは常に下限値以下でしたが、こうした値がでたことに驚き、さまざまな検討をしました。その中で思い当たったのは2017年5月24日に猪苗代町でコシアブラを購入して食した山菜ごはんでした。コシアブラは福島県内は出荷制限ですが、このコシアブラは山形産とありました。  2018年5月2日に、東京新聞記者と木村真三・獨協医科大学准教授の同行で調査した結果、基準値超えのコシアブラが販売されていました。東京新聞から福島県に報告し、福島県保健福祉部による現地調査でも基準値超えが販売されていた事が確認されました。なお、この直売所は「付き合いの長い福島県内の人が『山形で採ってきた』と言って」いたため販売したとしています(私たちが山形県の道の駅で購入したコシアブラは基準値100Bq/kgを下回っていました)。  またもう一つのテーマである塩蔵による脱セシウムの試験を行っています。大きな効果と思われる結果が得られていますが、科学的裏付けと効果の範囲を見出すため、検体を増やし試験を続けます。

結果・成果

完了報告・研究成果発表会資料より
 2011年3月11日に発生した東日本大震災により引き起こされた福島第一原発事故。原発から30km 圏内に数軒がかかる飯舘村(大半は35〜45kmの範囲にある)は自然豊かな村でした。約1か月後に全村避難の指示が出て、2017年3月末に避難指示が解除されましたが(長泥地区を除く)、放射能の汚染環境は続いています。2019年4月1日現在、その村に1,258名(620世帯)が帰村しています。しかし、村(国)は被ばくのリスクを一切語らず、帰村者、転入者の優遇策を打ち出すのみです。 原発事故から7年、避難指示解除から2年以上が経過した村内で、放射線量や土壌、作物、山菜、キノコ等に含まれる放射性物質をつぶさに測定してきました。村内の自宅には各位の協力のもと放射性物質の濃度を測定する装置を備えています。現場である村内で採取し、村内で測定出来る環境にあります。大学での精密測定をお願いするほか、村が村内の9ヶ所に設置した非破壊型測定器も併用しています。山菜、キノコについては、2018年度は20種96試料を調べました。  山菜についてはふきのとう等一部で食品基準値100Bq/kgを下回りますが、ワラビ、ゼンマイをはじめ、基準の数倍のレベルであり、コシアブラは数万Bq/kgを検出し続けています。キノコはこれまで8年間、自らの測定でも最低250Bq/kgで、数万Bq/kgがごく普通に検出されます。一方、米や野菜については自らの栽培実験でも測定していますが、ジャガイモで若干検出されていますが、その他は検出できないレベルです。  貴重な村の産品であった山菜を、何とか食品基準値をクリアするようできないかと思い、山菜を塩漬けにすることでセシウムを減らせるのでは考え、実証的に取り組んでいます。塩漬けにした期間が短時日のものは非破壊検査、10ヶ月のものはゲルマニウム半導体検出器による測定であり、単純に比較は出来ませんが、塩漬けによるセシウム除去は非常に効果的だと確かめられつつあります。  この8年間で得た結論は“測った物はこうだった”、“測っていない物はわからない”です。放射性物質の構成、特にセシウム134は既に全体の5〜6%程度に低下し、自前の測定器では検出できない状況になっています。しかし“測らないと分からない”ことから、これまでと同様、ひたすら測り続け、事実を発信し続けます。 山菜の塩漬け実験の結果 キノコ類の経年変化

その他/備考


HOME助成応募の方法これまでの助成研究・研修高木基金の取り組みご支援のお願い高木基金について
ENGLISHサイトマップお問い合わせ 個人情報の取り扱い