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「食産業の海外展開等によるフードバリューチェーン」政策の「途上国」への環境・社会影響



グループ名 グローバル・フードシステムを考える市民グループ 研究成果発表会配布資料[pdf]
代表者氏名 舩田クラーセン さやか さん
URL http://farmlandgrab.blog.fc2.com/
助成金額 40万円

3カ国民衆会議 政策協議の様子

3カ国民衆会議 国際シンポジウムの様子

研究の概要

2017年12月の助成申込書から
 2014年6月、農水省は「グローバルフードバリューチェーン戦略」を策定し、「オールジャパン」の「食産業の海外展開」に取り組んでいる。「食料の生産から流通・消費」までの全工程における日本の産官学の関与を通じて、「(1)食産業の海外展開と成長、(2)民間投資と経済協力との連携による途上国の経済成長、(3)食のインフラ輸出と日本食品の輸出環境の整備を推進」し、海外売上高の倍増(約5兆円)を目指すという。アジア・中南米・アフリカなど所謂「開発途上国」が主たるターゲットとなっている。  一見問題のない計画にみえるが、この「戦略」は、現在世界で進行する「食料をめぐる覇権争い」―国境をまたぐ「新たな囲い込み」ともいうべき動き―に日本が積極的に加わろうとするものである。「食」を一人ひとりの命の源としてではなく、鉱物資源と同様の「企業利益を生み出す産業資源」として扱う政策の加速化は、生産地や輸送ルート地域にネガティブな環境・社会的影響をもたらす結果となっている。  この「新たな囲い込み」には、現地の当事者団体などから批判の声があがり、オルタナティブとしての「アグロエコロジー」「食料主権」などへの転換が呼びかけられ、実践も積み重ねられている。しかし、世界中で食と農の分野への日本の官民アクターの関与が強まっているにもかかわらず、これを監視し政策転換を促す日本国内の研究・市民活動は活発ではない。また、日本には、この分野で中南米やアフリカに関わる団体も少なく、現場での影響の把握、政策への還元ができないまま現在に至る。  以上を踏まえ、本研究では、市民の立場から、(A)日本の政策と世界的動向の把握、(B)日本の官民による環境社会影響の世界マッピング、(C)南米での影響とオルタナティブに関する調査を行い、(D)その成果を日本社会に還元するとともに、(E)新たな対象とされているアフリカのパートナーにも成果を還元することで、(F)日本内外の政策転換に繋げていく

中間報告

2018年10月の中間報告から
 2014年6月、農水省は「グローバルフードバリューチェーン戦略」を策定し、「オールジャパン」の「食産業の海外展開」に取り組んでいます。「食料の生産から流通・消費」までの全工程における日本の産官学の関与を通じて、「(1)食産業の海外展開と成長、(2) 民間投資と経済協力との連携による途上国の経済成長、(3)食のインフラ輸出と日本食品の輸出環境の整備を推進」し、海外売上高の倍増(約5兆円)を目指すとされています。アジア・中南米・アフリカなど所謂「開発途上国」が主なターゲットとなっています。  この「戦略」は、現在世界で進行する「食料をめぐる覇権争い」、国境をまたぐ「新たな囲い込み」ともいうべき動きに日本が積極的に加わろうとするものです。「食」を一人ひとりの命の源としてではなく、鉱物資源と同様の「企業利益を生み出す産業資源」として扱う政策の加速化は、生産地や輸送ルート地域にネガティブな環境・社会的影響をもたらす結果となっています。  本研究では、市民の立場から、日本の政策と世界的動向の把握、日本の官民による環境社会影響の世界マッピング、南米での影響とオルタナティブに関する調査を行っています。具体的には、主に農水省のホームページを介して日本の海外での農業政策の確認を行い、6 月26 日のレクチャーにて結果報告を行いました。また、現在、国連人権理事会で進む「小農と農村で働く人びとの権利に関する国連宣言(小農権利宣言)」の最終化の討論について、モニタリングと分析を行い、その結果をブログや雑誌記事などで発表しました(*)。また、共同研究者(ブラジル)が調査に協力したパートナー団体(GRAINとRede Social)による報告書の翻訳、分析、普及を行っています。  さらに、その成果を日本社会に還元するとともに、新たな対象とされているアフリカのパートナーにも成果を還元することで、日本内外の政策転換に繋げていきます。特に、今年11 月に開催される3 カ国民衆会議( 日本・ブラジル・モザンビーク)への協力を通じて、これらを実現していきたいと思います。 (*)たとえば国連人権理事会の席上で、日本政府代表は、この小農権利宣言の中に含まれる「種子の権利」(すべての人・農家は種子にアクセスすることが保障される権利)は権利として認められないとする旨の発言をした。 「グローバル・フードバリューチェーン戦略」の元になった外務省・農水省「海外農業投資促進」における「官民連携モデルのイメージ」(外務省・農水省「海外農業投資推進」第四回会議資料(2009年)より)

結果・成果

完了報告・研究成果発表会資料より
 現在、世界では「食料をめぐる覇権争い」が進行しています。日本もまた政府の「グローバルフードバリューチェーン戦略」などを通じて、とくに「途上国」と呼ばれる南の国々で、国境をまたぐ「新たな囲い込み」に関与しています。その結果として、生産地や輸送ルート地域にネガティブな環境・社会的影響をもたらす結果となっています。これに対し、南の小農や先住民族は、オルタナティブとしての「アグロエコロジー」「食の主権」への転換を呼びかけ、実践も積み重ねています。しかし、日本において、これらはほとんど知られていない現状にあります。  以上を踏まえ、本研究は、市民の立場から、(1)日本の政策と世界的動向の把握、(2)日本の官民による環境社会影響の世界マッピング、(3)南米での影響とオルタナティブを日本で紹介するとともに、(4)その成果を日本社会に還元し、(5)新たな対象とされているアフリカのパートナーにも成果を還元することで、(6)日本内外の政策転換に繋げていくことを目的としました。  こうした目的から、特に、日本が輸入に依存する「途上国」での油糧作物生産と流通に注目した調査・分析を行いました。そして、東京で3日間にわたって日本・ブラジル・モザンビークの市民社会組織による「3カ国民衆会議」を開催しました。この会議(その後の動画等も含む)を通じて、延べ600人を超える広い層の日本の人びとに、現地の人びとの声を直接触れてもらうとともに、研究成果を還元することができました。  今後は、本研究で実現したこれらの成果を、実際の日本の政策転換、企業の行動に反映させる必要があります。そのためには、国連で2018年12月に採択された「小農と農村で働く人びとの権利に関する国連宣言」や「国連ビジネスと人権のための指導原則」などの「人権重視」の国際規範化の動きを、より広い層の人びとの衆知し、活用していくことが肝要だと考えています。

その他/備考


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