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原子力発電所の再稼働判断における周辺住民(30キロ圏)の意思の反映についての調査研究ー東海第二原子力発電所を例に



グループ名 原子力規制を監視する市民の会 研究成果発表会配布資料[pdf]
代表者氏名 阪上 武 さん
URL http://kiseikanshi.main.jp/
助成金額 30万円

「安定ヨウ素剤の配付を求める政府交渉」(2017年3 月31 日)の様子

研究の概要

2017年12月の助成申込書から
 脱原発を求める世論は根強く、世論調査でもほぼ6から7割で、脱原発を求める声が多数を占める状況が続いている。しかし、福島第一原発事故後においても、原発再稼働の判断でそうした世論が反映されたとは言い難い。  その原因として考えられるのが、安全上の諸問題についての問題点が周辺住民に対し、十分に説明されておらず、原子力規制委員会による許認可によってよしとされてしまっていること、避難計画が審査対象になっていないこと、そして、再稼働に際しての地元合意が、立地県と立地市町村の首長の判断に限られる点が挙げられる。  こうした中で、首都圏唯一の原発で、2018年11月に運転期限の40年を迎える東海第二原子力発電所について、運営する日本原子力発電(原電)は、再稼働に際しては、立地する東海村だけでなく、周辺30キロ圏内の5市の同意をとる方針を示した。実現すれば非常に画期的なことである。報道されている新協定案には、事前協議について「6市村それぞれが納得するまでとことん協議を継続する」との文言があるという。事前了解については「事前了解は規定されていないが、事前協議により実質的に担保されている」との文言があるという。  東海第二原発の審査は、原子炉設置許可についての審査がほぼ終わり、年明けにも許可の手続きがとられる予定でいる。2018年11月の期限に向けて、工事計画認可と運転期間延長認可に係る審査が行われる。審査の過程で、防潮堤の地盤問題、新たな代替冷却装置の設置に係る問題、高濃度汚染水対策、基準地震動評価の問題、火山灰評価と対策の有効性等々などさまざまな問題が指摘されている。これに老朽化による影響が加わる。さらに、唯一首都圏にある原発で、30キロ圏に日本最大規模の96万人が居住する状況で、避難計画の有効性や安定ヨウ素剤の配布問題などの課題もある。安全上の問題に限らず。原電が安全対策に必要とされる約1,700億円の借り入れに際して、東電と東北電の債務保証を受ける件や、廃炉に必要な解体引当金を取り崩して敦賀原発3、4号機の建設費に流用していたことなど、原発の運転を行う事業者としての適格性に係る問題も指摘されている。  新潟県は、柏崎刈羽原発の再稼働判断に際し、原子力規制委員会の審査とは独立に、外部有識者を含めた検証委員会を設置し、県独自の検証作業を行うとしている。その中には、避難計画や安定ヨウ素剤の配布に係る検証も含まれている。茨城県は、東海第二原発の再稼働判断に際し、県の原子力安全対策委員会を通じ、独自の(安全性の)検証をすすめていくという。  このような状況から、本研究では、東海第二原発の再稼働をめぐる論点を明らかにし、周辺住民や自治体関係者と情報の共有を図りながら、原発から30キロ圏の周辺住民の意思の反映がどのような形でどの程度なされるのか、調査研究を行うものである。

中間報告

2018年10月の中間報告から
 東海第二原発の審査は、原子炉設置変更許可についての審査が終わり、2018年11月の期限に向けて、工事計画認可と運転期間延長認可に係る審査が行われています。審査の過程で、防潮堤の地盤問題、新たな代替冷却装置の設置に係る問題、高濃度汚染水対策、基準地震動評価の問題、火山灰評価と対策の有効性等さまざまな問題が指摘されています。これに老朽化による影響が加わります。さらに、唯一首都圏にある原発で、30キロ圏に日本最大規模の96万人が居住する状況で、避難計画の有効性や安定ヨウ素剤の配布問題などの課題もあります。  さらに、東海第二原発の審査項目「経理的基礎」において、安全対策費1,740億円の調達が問題となりました。私たちは原子力発電の会計制度に詳しい立命館大学の金森絵里教授の協力で、院内での勉強会や政府交渉を行いました。原子力規制委員会は、東京電力と東北電力が資金支援の意思を表明した文書から、経理的基礎はあると判断しましたが、私たちは、?支援は債務保証だけでなく電気料金の前払いが含まれており、銀行からの借入れが困難な状況が明らかになったこと、?東電は自身が再建企業で国の管理下にあり、廃炉や賠償に資金を投入しなければならず、他社の支援を行う状況にはないこと、? 2 社は支援の確約はしておらず、東電は再稼働により利益を上げることを条件にしているが、原電の財務状況に照らせば不利益を被らざるをえないこと、等から経理的基礎はないことを明らかにしました。  審査書案のパブリック・コメントに対しては、文例案を作成し、経理的基礎に加えて、地盤の液状化、溶融燃料の水蒸気爆発の可能性、ブローアウトパネルによる放射能の意図的放出、火山灰による原子炉の屋根の倒壊の可能性、非難燃性ケーブルの問題、原子力防災計画の欠如などの問題を指摘し、広く応募を呼びかけました。パブコメ学習会を東京だけでなく、水戸でも実施しました。応募は約1,250件にのぼり、その大半が批判意見でした。許可に際しては声明を発出しました。署名活動にも取り組みました。引き続き、運転延長審査や原子力防災計画、立地自治体や周辺自治体の同意と住民の意識について調査活動等を行う予定です。  会としては、大飯原発などの火山審査、ALPS 処理水の問題、むつの中間貯蔵施設の問題などにも取り組んできました。

結果・成果

完了報告・研究成果発表会資料より
 本調査研究の前半は、日本原電東海第二原発の原子力規制委員会による審査に焦点をあて調査研究を行いました。審査項目である「経理的基礎」において、日本原電の約二千億円の安全対策費の調達が問題となりました。規制委は、東京電力と東北電力が資金支援の意思を表明した文書から、経理的基礎はあると判断しました。私たちは、日本原電は銀行からの借入れが困難な状況にあること、東電は再稼働により利益を上げることを支援の条件にしているが、原電の財務状況から、逆に不利益を被らざるをえないこと等から、経理的基礎はないと結論付けました。そして、審査書案の意見募集への応募を呼びかけました。  後半は、地元合意の中心テーマである原子力防災・避難計画に焦点をあてました。茨城県主催の規制庁の住民説明会の傍聴、ひたちなか市主催の避難計画に関する住民説明会の傍聴や住民へのヒアリング、常陸太田市の避難計画に基づく避難の実地検証作業などを実施しました。避難計画の実効性について責任を負って確認する者がいないこと、避難計画の策定と東海第二原発の再稼働判断が切り離されていることに問題があり、住民説明会が避難計画に対する不満を共感しあうだけの場になっていることが明らかになりました。原子力防災の観点から、実効性のある避難計画が策定されていることは、再稼働の最低条件であり、実効性が確認されていない以上、再稼働の合意はすべきではないとの世論形成とはたらきかけが必要となっていることが確認できました。避難元、避難先の住民と結びつきながらの取り組みが求められます。  今後は、避難計画の検証作業を、避難元の住民、避難先の住民も含めて一緒に行いながら、国や自治体へのはたらきかけにつなげていきたいと考えています。原子力災害対策指針については、安定ヨウ素剤の事前配布が5km圏に限られ、30km圏では、被ばく前の服用が困難であることなどについて、これまでも国に対し対応を求めてきました。さらに今回の調査で明らかになった、避難退域時検査(スクリーニング) において内部被ばくの把握という目的が失われた問題などもテーマに加えながら、引き続きはたらきかけを行っていきたいと思います。

その他/備考


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