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家庭用品から大気中に放散されるマイクロプラスチックによる汚染実態調査



グループ名 空気汚染による健康影響を考える会
代表者氏名 山本 海 さん
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助成金額 40万円

研究の概要

2018年12月の助成申込書から
 近年、柔軟剤、洗剤、芳香剤や消臭スプレーの家庭用品には、接着性のある合成樹脂成分のマイクロカプセルに包まれた香料や抗菌成分が用いられている。このマイクロカプセル化技術は、内包した化学物質の徐放性や残留性を目的としたもので、日用品を対象に実用化されるようになってからまだ10年程しか経たない新規技術である。  マイクロカプセルの材料として、メラミン樹脂や、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等が使われており、マイクロカプセルは、マイクロプラスチックの一種に分類される。その大きさは数μm〜数百μmであり、大気環境に放散されれば粒子状物質として存在する。また、場合によっては、光や熱による分解を受けて、SPM(浮遊粒子状物質:粒子径<10μm)やPM2.5(微小粒子状物質:粒子径<2.5μm)となり、それをヒトが吸入することで物理的に肺や気管に影響を及ぼすと考えられる。加えて、接着性をもつプラスチック成分そのものや、その分解モノマーおよび添加物の可塑剤成分が揮発性物質として環境中に放出され、複合大気汚染へと繋がっている可能性が高い。  消費者が、上述の家庭用品を利用することにより、マイクロプラスチックが、一般生活環境中に排出されていると考えられるが、これまで家庭用品により大気環境中に放散されるマイクロプラスチックの排出実態やその大気環境影響について検討する研究は行われていない。  本研究では、家庭用品より大気中に放散され残留するマイクロプラスチックの測定を行い、生活環境における汚染実態調査を行う。

中間報告

2019年10月の中間報告から
 柔軟剤、洗剤、芳香剤、消臭スプレー等の家庭用品から放散される物質により、呼吸器症状や中枢神経症状等の症状を訴える方々が増えています。近年、こうした家庭用品には、接着性のある合成樹脂成分のマイクロカプセルに包まれた香料や抗菌成分が用いられています。このマイクロカプセル化技術は、内包した化学物質の徐放性や残留性を目的としたもので、日用品を対象に実用化されるようになってからまだ10年程しか経たない新規技術です。  マイクロカプセルの材料として、メラミン樹脂や、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等が使われており、マイクロカプセルは、マイクロプラスチックの一種に分類されます。その大きさは数μm?数百μmであり、大気環境に放散されれば粒子状物質として存在します。また、場合によっては、光や熱による分解を受けて、SPM(浮遊粒子状物質:粒子径<10μm)やPM2.5(微小粒子状物質:粒子径< 2.5μm)となり、それをヒトが吸入することで物理的に肺や気管に影響を及ぼすと考えられます。加えて、接着性をもつプラスチック成分そのものや、その分解モノマーおよび添加物の可塑剤成分が揮発性物質として環境中に放出され、複合大気汚染へと繋がっている可能性が高いと考えています。  その原因となるメカニズムを探るため、以下の通り柔軟剤などの家庭用品の利用により、微小粒子状物質がどれだけ空間中に放散されるか、どのような成分であるか、そして、それらの一部がマイクロプラスチックであることを明らかにする調査を行っています。併せて、一般生活環境の室内大気においてどのような粒子径の微小粒子状物質がどれだけ存在するかを測定しています。 1.家庭用品から放散される微小粒子状物質の粒子数の測定  気中パーティクルカウンターを設置した閉鎖環境を作成し、柔軟剤や洗剤を適用した布から放散される粒子数と、対照の布から放散される粒子数を比較する調査を行っています。また、顕微鏡画像を撮影し、家庭用品から放散され平面に落下した粒子数を計測する手法を検討しています。 2.家庭用品から転移・放散される微小粒子状物質の定性分析  洗剤3品目、柔軟剤4品目、芳香剤2品目、消臭スプレー1品目について、FT-IR(フーリエ変換赤外分光法)で、どのような成分の微粒子であるか、プラスチックの成分も含めて分析を行っています。 3.気中パーティクルカウンターによる一般生活環境の室内におけるPM1、PM2.5、PM10、PM20計測および落下塵サンプルの観察  国内と台湾の室内約200ヶ所(スーパー、コインランドリー、ドラッグストア、病院、コンビニエンスストア、ホテル、一般家庭など)で計測を行いました。現在解析中ですが、PM1はアロマディフューザー常設のロビー、PM10はコインランドリー等で高値となっていることが判明しました。

結果・成果

完了報告から
 近年、柔軟剤、洗剤、芳香剤、消臭スプレー等の家庭用品から放散する物質により、呼吸困難や、頭痛、めまい、全身倦怠感等の症状、湿疹や結膜炎等のアレルギー症状が起きるとの声が上がっています。そのメカニズムを解明することを最終的な目標として、2019年度は以下の探索的な調査に着手しました。 ●一般生活環境の室内におけるPM1、PM2.5、PM10の計測  パーティクルカウンターを用い、国内と台湾の室内約200カ所(スーパー、コインランドリー、ドラッグストア、病院、コンビニエンスストア、ホテル、一般家庭など)で微小粒子状物質がどの程度存在するかを調べました。PM1.0について、調査地点の中で最も高値を示したのが、国内のアロマディフューザー常設のホテルのロビーで10.4μg/m2、都庁ロビーでの計測値の約8倍になっていました。また、PM2.5は、前述のアロマディフューザー常設のホテルのロビーにて28.6μg/m2、国内のあるコインランドリーにて24.9μg/m2と高い値を示していました。 ●家庭用品を適用した布から放散される微小粒子状物質(0.3から10μmの粒子径毎の粒子数)の計測  パーティクルカウンターを設置できる小型閉鎖チャンバーを作成し、コントロールの布と、家庭用品を適用した布から放散する粒子数をそれぞれ計測し比較して、一部の柔軟剤や洗剤から0.3から10μmの微小粒子状物質が放散されていることが示唆されました。 ●家庭用品から放散される微小粒子状物質の顕微 FT-IR法による成分分析  顕微 FT-IR 法により、家庭用品から放散される微小粒子状物質の成分分析を一部行いました。  2019年度の調査手法では、1.10μm以下の微小粒子状物質の定性が困難である点、2.一部の製品から放散される微小粒子状物質に金属化合物の粒子が存在する可能性が示唆されたが完全には定性できない点、3.0.3μm以下の粒子の放散の有無が調べられない点が限界となっていました。  2020年度は、10μmより小さい粒子を定性できるラマン分光法やSEM(走査型電子顕微鏡)による元素分析も併せて実施し、家庭用品から放散される微小粒子状物質の定性分析を引き続き行います。また、サンプルとして取得した微小粒子状物質が、実際に適用した家庭用品から放散されたものであることの検証も行いたいと考えています。そして、2020 年までに得られた知見をもとに、2021年以降は家庭用品から放散される物質による細胞や生物の個体への影響を確認する研究へと繋げたいと考えています。

その他/備考


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