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津波被災地域における「かさ上げ盛土工事」をめぐる市民の論理



グループ名
代表者氏名 山崎 真帆 さん
URL
助成金額 20万円

研究の概要

2018年12月の助成申込書から
 本調査研究は、東日本大震災津波被災地域における「かさ上げ盛土工事」をめぐる市民の論理を整理、体系化し、行政の論理への対抗軸として提示することを目的とする。2011年の巨大津波により甚大な被害を受けた被災地域では、現在復旧・復興事業が佳境を迎えつつある。特に被害の大きかった一部地域では、津波による浸水から住民の命、暮らしを守る目的で、市街地などを数m〜十数m程度かさ上げする「かさ上げ盛土工事」が選択された。同工事は行政や防災分野の専門家の「安全性を高め『住民の命・暮らしを守る』」という論理を背景に、景観や構造を大規模に改変してきた。しかしながら、同工事の実施にあたっては、守られるべき「命」「暮らし」の主語たる住民の視点が見落とされてきている。また防潮堤の建設や高台移転の実施といった「住民の命・暮らしを守る」ための関連事業においては、すでに住民や研究者・実践者らの手により対抗論理が構築されつつあるが、本課題については未だ目立った運動が見られない。
 申請者は、市民の立場から本課題に取り組み、同工事にかかる上記行政論理の相対化を目指す。具体的には、従前の中心市街地において「かさ上げ盛土工事」を実施した宮城県本吉郡南三陸町においてインタビュー調査を実施し、同工事それ自体やその結果に関する住民の意見を整理、「住民の論理」として体系化する作業に取り組む。また最終的には、本調査研究の成果を以て、近い将来に想定される大災害からの復興において、行政がより市民の視点に即した選択肢を提示できるよう働きかけていく予定である。

中間報告

2019年10月の中間報告から
 東日本大震災により甚大な津波被害を受けた東北の被災地では、現在、「復興まちづくり」が進んでいます。一部の自治体では、市街地などを数m?十数m程度かさ上げする「かさ上げ盛土工事」が、被災それ自体と同等、あるいはそれ以上に、「まち」の景観や構造を大規模に改変しています。
 この工事は、「津波による浸水から『住民の生命・財産を守る』」という行政や防災分野の専門家の論理に基づいて進められてきましたが、一方で守られるべき「命」「暮らし」の主語である住民の視点は見落とされてきました。また、「防潮堤」や「高台移転」といった関連事業と違い、かさ上げ盛土事業については住民や研究者、実践者による目立った運動・活動(勉強会の開催や反対運動の展開等)が見られません。そこで本調査研究では、市街地において一体的かつ大規模なかさ上げ盛土工事を実施している宮城県本吉郡南三陸町を対象とし、工事が実施されるに至った経緯、そしてそれが地域住民にもたらしたもの等を検討していきます。
 これまでに、行政資料の収集・通読作業を通し、南三陸町における「かさ上げ盛土工事」が、「安全」を重視する考えのみならず、費用負担の問題や、高台移転、河川堤防・護岸、国道のかさ上げ等といった、他事業との兼ね合いのなかで進められてきたことが明らかになりました。また、南三陸町における現地調査(特に同町住民に対するインタビュー調査)では、記憶のなかの「ふるさと」の姿との違いに対する戸惑いや、かさ上げ地の「揺れやすさ」への不安、かさ上げ地で稲作を続けることへの諦めなどといった、住民の声の聞き取りを続けてきました。残りの期間では、文献資料の通読と、更なる現地調査の実施を予定しています。

結果・成果

完了報告から
 2020年現在、東日本大震災により甚大な津波被害を受けた東北の被災地では、大規模に展開されてきた復旧・復興のための公共事業が大詰めを迎えています。最大15メートルにもなる防潮堤の建設や高台移転の実施に加え、一部の自治体では、市街地などを数から十数メートルかさ上げする「かさ上げ盛土工事」が被災それ自体と同等、あるいはそれ以上に、「まち」の景観や構造を大規模に改変しています。
 私は、このかさ上げ盛土工事がどのような経緯で実施されるに至ったのか、そしてそれが地域住民に何をもたらしたのかについて研究するため、行政資料や文献資料の調査と、宮城県本吉郡南三陸町を対象とした現地調査を行うことにしました。
 その結果、同町ではかさ上げ盛土工事が、「安全」を重視する考えのみならず、費用負担の問題や、高台移転や河川堤防・護岸、国道のかさ上げ等といった他事業との兼ね合い、国や県などとの交渉のなかですすめられてきたことを明らかにしました。また、「生命、財産を守る」という復興行政の態度・ 論理の背後には、関東大震災からの帝都復興以来、都市計画的、開発的性格が強く経済成長を前提とした災害復興手法が復興の“デフォルト”となってきた日本社会特有の文脈があることもわかりました。一方で町民へのインタビュー調査を通して、記憶のなかの「ふるさと」の姿との違いに対する戸惑いや、かさ上げ地の「揺れやすさ」 への不安、かさ上げ地で稲作を続けることへの諦めなどといった声を聞き取ることができました。
 今後は、問題の本質により深く迫れるよう、研究の枠組みを再構成し、調査研究を継続する予定です。この調査研究は、高木基金から今年度も引き続き助成いただけることとなりましたので、今年度も同様に復興公共事業の「終わり」が近づく南三陸町を対象に、復興事業の主軸として展開された大規模な公共土木工事が、地域住民の生活に実際に与えた影響を見ていきます。

その他/備考


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