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伊達市の除染における住民対策についての調査研究ならびに宮崎早野論文の成立の経緯についての調査および市民による論文内容の批判と検証



グループ名
代表者氏名 島 明美 さん
URL
助成金額 100万円

2019年5月26日 日本科学史学会 2019年度総会で報告

研究の概要

2018年12月の助成申込書から
 伊達市で2011年から実施されているガラスバッチ測定結果をもとに、福島医大の宮崎真氏と東京大学早野龍五氏は独自に解析を行い、2本の共著論文として発表した。これらの論文は、ICRPの勧告や国の被ばく防護政策に反映され、世界の原発政策に影響を与えている。
 本研究は、伊達市が「除染都市」として世界に名を知られる、世界の被曝防護政策を塗り替えていく経緯を詳細にたどり、検証するとともに、住民のデータを解析し、論文を執筆するにあたって行われた様々な不正の全容を調査するものである。
 具体的には、情報公開請求及び独自調査、またデータや論文検証を実施し、
(1)伊達市独自の除染方針の決定プロセスと汚染状況および世論調査
(2)伊達市民データを用いた研究に伴う倫理指針違反の実態調査
(3)個人線量計のおよび取得データの問題の検証
(4)内部被曝データが論文化されなかった背景の検証
(5)研究論文の誤り・不正の検証
(6)世論を封じ込めるために、電通を使って実施したアンケート調査の背景
(7)伊達市に置ける放射線アドバイザーおよび放射線安全フォーラムの関与と意味
(8)低線量被曝ワーキング・帰還のための安心安全検討チーム、原子力規制委員会や放射線審議会に対する伊達市データの影響
(9)ICRP・IAEA・UNSCEARに対する伊達市データの影響
以上を調査し、報告書にまとめて広く発信するほか、この伊達市の住民データを活用した研究者(田中俊一氏・早野龍五氏ら)と、黒川眞一氏と市民との対論(ダイアログ)を開催する。

中間報告

2019年10月の中間報告から
 本研究は二本の柱から成り立っています。第一の柱は、伊達市が全市民を対象としてガラスバッジやホールボディカウンターによる外部・内部被曝線量測定事業を行った背景と、これらのデータを用いて執筆された宮崎真氏と早野龍五氏の論文(宮崎・早野論文)の作為性(都合の悪い事実の無視、都合の良いデータの恣意的な選択、および改竄)を市民の手で、情報公開によって入手したデータを使って検証することです。宮崎・早野論文は、原子力規制委員会および放射線審議会での除染目標の基準値を緩和する動きの根拠ともなっているほか、ICRPのセミナーで発表されるなど世界の原発政策に影響を与える可能性もあります。この問題の検証のために、以下の活動を実施しました。
(1)個人被ばく線量データおよび個人情報提供に関する情報開示請求を進めた。
(2)日本科学史学会総会(5 月26 日・岐阜市)において関連情報を収集するとともに専門家とのネットワークを形成した。
(3)住民への共有を目的とした勉強会「宮崎・早野論文問題研究会」を開催した。
(4)伊達市住民による市民団体「個人被ばく線量計データ利用の検証と市民生活環境を考える協議会」を設立した。
(5)共同研究者との打ち合わせを複数回実施した。

 第二の柱は、伊達市が実施した「C エリア除染調査」(住民アンケート)ならびに「低線量地域詳細モニタリング事業」(アンケートで回答が返ってきた住民だけを対象にしたフォローアップ事業)の実態を明らかにすることです。これらの事業は、実際の汚染の状況の把握や除染による改善が主目的とはされず、伊達市の除染方針(市の面積の約半分を占めるCエリアは除染しない方針)を住民にいかに納得させるかという「住民対策」が目的となっていた疑いが強いです。この結果や報告書は現在、伊達市が所有・保管しています。これらには市民の多様な意見が記録されていますが、分析・公開がされていません。これらの文書は破棄される可能性がある(保存期間5年)ことから、緊急に入手し、市民側が保管し内容を把握しておく必要があります。この問題についても、上記の勉強会や市民団体の活動を通じて報告データの存在とその問題性を住民に知らせるとともに、データの重要性を市議会に共有し、その獲得と保管の方法について検討を進めました。
 これらの活動により、論文検証を進展させ、伊達市の除染関連データを今年度の後半に入手するための準備を整えました。また、その存在やその問題性を知らされていない当事者(住民)に周知しました。

結果・成果

完了報告から
 この調査研究の対象は福島県立医科大学(以下、医大)の宮崎真氏と東京大学の早野龍五氏がJournal of Radiological Protection(JRP)誌上で発表した2つの論文(宮崎早野論文)と、伊達市の7割の市民が居住する空間線量率が相対的に低いCエリアの住民に対して行われた、「除染は不要である」という市主導の市民宣撫についてです。
 宮崎早野論文は福島原発事故後、伊達市が行ってきた市民を対象としたガラスバッジによる外部被曝線量測定データを用いて作成されました。私たちは2018年12月と2019年1月に東京大学と医大に対し倫理指針違反と研究不正について申立てを行いました。両大は2019年7月19日に、誤りはあるものの不注意によるもので研究不正ではない、また医大は倫理指針に対する重大な違反や過失は認定できないという報告書を出しました。また、伊達市が前年2月に設置した伊達市調査委員会は今年3月17日に調査報告書を発表しました。私たちはこれらの報告書の詳しい文書を情報公開請求で入手、さらに新たな情報公開請求を行うことで、論文の核心に迫る新事実を明らかにしました。中でも特筆すべきものは、ガラスバッジ測定データの最後の1年分(2014年7月から2015年6月)が著者に提供されていないことです。この時期に対応する論文の複数の図は、データがないのに作成されており、捏造が疑われます。
 宮崎早野論文を批判するLetter to the Editor(既発表論文についてコメントする論文、以下、Letter)がこれまでに4編作成されています。最初は黒川の単著であり、2018年8月にJRPに送付され、2020年3月23日には正式にaccept for publicationになりました。さらに、黒川ほか5名の研究者が、今年3編のLetterを送付し4月はじめまでにprovisionally accept(暫定的採択)となりました。このことから、この数か月のうちに宮崎早野論文問題は大きな転機をむかえると想定していましたが、7月28日にJRPは2つの宮崎早野論文の撤回を公表しました。理由はデータ提供に不同意の市民のデータが使われたことのみで、4編のLetterが指摘した科学的問題には言及していません。今後さらに追及を継続します。
 伊達市が主導した住民宣撫については、25,000枚にのぼる資料の電子化を行うところであり、今後本格的な調査にすすみます。
 2019年5月に市民団体を立ち上げ、勉強会等を開催、伊達市民への周知のため、団体の会報を2020年5月23日に市全域(18,000部)に新聞折込みをしました。

その他/備考


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