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沖縄県沖縄市泡瀬干潟の埋立工事に伴う干潟環境・生物相の変化



グループ名 泡瀬干潟を守る連絡会
代表者氏名 前川 盛治 さん
URL https://saveawasehigata.ti-da.net/
助成金額 40万円

新たに発見されたヒメマツミドリイシ群落

クビレミドロ(黄緑藻類)。絶滅危惧IA 類、世界でも泡瀬干潟など沖縄でのみ確認されている

研究の概要

2018年12月の助成申込書から
 これまで泡瀬干潟のサンゴ群落、貝類、ホソエダアオノリなどの調査を実施してきましたが、泡瀬干潟の現状を把握するため引き続き調査を実施したい。サンゴ群落の定点観測(以下1の(1))は埋め立て工事の周辺の環境への影響を測ることを目的とし、移植サンゴの現状調査(1の(2))は事業者が行った環境保全措置の適正を見ることを目的とします。ホソエダアオノリの大発生は工事の影響により水の流れに変化が生じたことによるものと思われるため、大発生による生物への影響を測ることは工事の影響を測ることにつながります。 1.サンゴ群落の調査(2005年〜2018年) (1)2005年より2016年までの西防波堤北西部のヒメマツミドリイシの定点(100Mライン)。2016年以降現在までの新たな25平方枠のヒメマツミドリイシの定点調査 (2)沖縄市やNPO法人が実施したサンゴ移植地の定点調査(東防波堤西側のテトラポット移植サンゴ及び海域の移植サンゴ 2.貝類調査(2017年度)  2017年4月以降の緑藻類(ホソエダアオノリ)の大量発生による貝類(おもに二枚貝)の大量死 3.2019年度調査 (1)これまでのサンゴの定点調査では、サンゴの被度が大きく低下し、継続調査の意義が失われましたが、消滅したヒメマツミドリイシ群落の周辺に新たな群落が形成されており、その場所の25平方枠を新たに2箇所設定し、継続調査したい。また、移植サンゴについても継続調査したい。 (2)泡瀬干潟では、2017年度からホソエダアオノリの大量発生があり、2018年度も大量発生があった。その貝類や他の生物に対する影響を引き続き調査したい。

中間報告

2019年10月の中間報告から
 これまで泡瀬干潟のサンゴ群落、貝類、ホソエダアオノリなどの調査を実施してきましたが、泡瀬干潟の現状を把握するため引き続き調査を実施しています。  これまでのサンゴの定点調査では、サンゴの被度が大きく低下し、継続調査の意義が失われましたが、消滅したヒメマツミドリイシ群落の周辺に新たな群落が形成されており、その場所に新たに3ヶ所、調査場所を設定し、継続調査しています。また、移植サンゴについても継続調査しています。  泡瀬干潟では、2017年度からホソエダアオノリの大量発生があり、2018年度も大量発生がありました。この大発生により、貝類( おもに二枚貝) の大量死が起きています。そうした生物への影響を測ることは工事の影響を測ることにつながります。  2019年度は、泡瀬干潟でクビレミドロの激減があり、そのことをマスコミに公表し、埋立事業者(沖縄総合事務局、沖縄県)に原因究明と対策を要請しました。この問題について、2019年7月9日の環境監視委員会での事業者の報告に対し、私は地元新聞の論壇に投稿し、事業者の報告に対する疑問を次のように指摘しています。  事業者は、クビレミドロの激減は認めていますが、原因については、「海水温の高さ」をあげています。私は、「海水温の高さが面積減少の原因」という説明には、次の理由で疑問を持っています。

(1)事業者は、水温の影響について、「クビレミドロ保全技術マニュアル」で「出芽は28度に上げたあと20度に下げると出芽誘引」「糸状体の生育、藻体形成は、野外では13.6〜25.4度」を示しているが、泡瀬で12月頃の平年値は24度前後で出芽しており、20〜26度での出芽については解明されていない。また、H30年12月〜H31年3月は、泡瀬の海水温はほとんどが25.4度以下であり、糸状体・藻体の生育条件の範囲内である。
(2)「出芽・生育期間海水温の平年差とクビレミドロ生育面積の変化」(H11年〜H30年)を見ると、H28年5月〜H29年4月は平年差は+1.0で、面積減少率は-46%であり、H30年5月?H31年4月の平年差は+0.8と小さいのに減少率は高く、-61%である。平年差(水温の高さ)とクビレミドロ面積との相関関係は明確ではない。

結果・成果

完了報告から
 沖縄県沖縄市の泡瀬干潟では、国・沖縄県による埋立事業がすすめられています。泡瀬干潟は、環境省が定めた「日本の重要湿地500」の一つであり、ラムサール条約湿地に登録して保全するべき生物多様性の宝庫です。しかし、埋め立て事業の海上工事が本格化した2006年頃から、干潟環境の大きな変化が続いています。  私たちは、泡瀬干潟の現状を把握するため、サンゴ群落、貝類、ホソエダアオノリなどの調査を実施しました。サンゴ群落の定点観測は、埋め立て工事の周辺の環境への影響を把握することを目的とし、移植サンゴの現状調査は、事業者が行った環境保全措置を検証することを目的として実施しました。2019 年度の調査の結果、沖縄市などが移植したサンゴは、一部で順調に生育しているところもありましたが、市側が「順調に生育」と報告している複数のエリアのサンゴの生育状況が「順調」ではないことを確認しました。  泡瀬干潟では、2017から2018年にホソエダアオノリが異常発生し、絶滅危惧種を含む貝類の大量死が起こっています。これは工事の影響により水の流れに変化が生じたことによるものと思われます。2019年度は、クビレミドロの激減があり、その原因究明と対策を要請しました。事業者の報告では、「工事の影響ではない、海水温の高さが原因」とされていますが、私たちは、過去の国側のデータから、クビレミドロの発芽・生育時期の平均水温の平年差と生育面積の関係を分析し、海水温の上昇がクビレミドロ減少の説明にはならないことを明らかにしました。  沖縄県は泡瀬干潟のラムサール条約湿地登録をすすめようとしていますが、沖縄市が賛同しないため進展がありません。連絡会として、2020年1月に、ラムサール・ネットワーク日本、日本自然保護協会とともに、沖縄県に対して、泡瀬干潟の特別鳥獣保護区の設置を求める要望書を提出しました。泡瀬干潟の貝類の調査も計画していましたが、調査協力者の山下博由氏が病気入院、その後急逝のため実施できませんでした。

その他/備考


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