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インド北東部マニプル州・ナガランド州におけるインパール作戦と和解ー知られざる被害と果たされなかった戦後補償



グループ名 インパール作戦後の和解を考える会
代表者氏名 木村 真希子 さん
URL
助成金額 80万円

研究の概要

2019年12月の助成申込書から
 アジア太平洋戦争中のインパール作戦に関しては、軍事史研究や日本における軍隊内での意思決定と兵士への影響といった観点から研究されてきた。とくに、無理な作戦により戦闘ではなく、飢餓や疾病による日本兵への被害が大きかったことが強調されてきた。しかし、戦場となった現地であるインド北東部の被害状況に関してはほとんど研究の蓄積がない。1950年代以降、現地は紛争の影響により外国人の立入が制限され、戦闘の被害に関する包括的な研究は進んでおらず、日本にも伝えられてこなかった。  しかし2011年以降、戦場となったナガランド州、マニプル州への渡航制限が緩和され、観光目的であれば一般市民が渡航することが可能になった。インド政府が日本政府に投資を働きかけ、同地を訪問する日本人も増加した。2019年6月には日本財団の支援によりインパールに平和祈念資料館が開館し、また12月には安倍首相の現地訪問も計画されている。しかし、現在までのところ、大使館関係者が現地を訪問しても、被害や謝罪については全く触れられていない。政府が過去にあった被害と向き合うことに後ろ向きな現状を踏まえ、被害の事実を把握し、その後の関係を考えることは市民科学にとって重要な課題であると考える。  本研究では、以下の2つの成果を出すことを目的とする。 (1)ナガランド州、マニプル州における被害の全容を歴史的資料と聞き取りから明らかにし、学術的な資料として出版する。 (2)日本においてインパール作戦の戦地における被害状況を伝え、補償がなされていないことについての問題提起を試みる。  また、来年度以降に市民同士の交流と和解の可能性を探り、現地での共同研究の開始につなげたい。

中間報告

中間報告から
 本調査研究の目的は、インパール作戦時にどのような被害が現地の人々にもたらされたのか、公文書等の文書資料とインタビューによる聞き取りに基づいて明らかにすることです。  当初の予定では、4月からすでにインドに留学中の渡部が参与観察を実施し、日本在住の木村と石坂は8月から9月の間に現地調査と資料収集を実施する予定でした。また、同時にインドの首都デリーか調査地インパールで、現地協力者のナオレムも交えて研究打ち合わせを実施する予定でした。  しかし、コロナ禍で上記の予定通りの調査が困難になり、各自それぞれ以下のように予定を変更して今までの調査のまとめや資料収集・分析を進めています。 ・木村は6月から8月にかけて過去の聞き取りのノートを整理しながら、日本語の先行研究や資料の読み込みと分析を進めた。 ・石坂は5月から8月にかけて過去に実施した聞き取り録音データの文字起こしと整理を実施した。同時に日本語と英語の関連文献を読み込み、分析を進めている。 ・渡部は4月から6月にかけて過去データの整理と書き起こし・分析を進めた。また、現地語学習や関連文献の読み込みを進めている。7月から8月にかけて、アーカイブ等の資料収集、現地語学習、情報収集と今後の調査計画の検討を実施している。 ・ナオレムは4月から8月にかけて、過去に収集した歴史文書を整理しつつ、今後の発表に向けた準備を進めてきた。  なお、コロナ禍を受けた計画変更について話し合うため、木村と石坂で8月に、Zoom でミーティングを実施しました。この内容はインド在住の渡部とナオレムにメールで共有しています。予定していたナオレムの日本招へい事業が難しくなったため、南アジア学会の英語パネルでオンライン報告、1月以降にオンラインで連続セミナーを実施する予定です。

結果・成果

2021年5月の完了報告から
 現在までほとんど注目されてこなかったインパール作戦の現地被害に関する調査と研究発表を実施する予定だったが、2020年度はコロナ禍のため、現地調査や海外における資料収集と現地からの研究者の招へいを中止せざるを得なかった。また、留学中だった渡部春奈はナガランドの州都コヒマで10か月以上の待機を余儀なくされたが、2021年2月に現地調査を開始し、実施中である。以上のような事情から、以下の3つの代替手段で研究を進めた。  第一に、今までに収集したインタビュー資料を整理・分析し、その成果をまとめた。同時に、二次資料の収集と読み込みを進め、まずは手持ちの資料で分かることを明らかにした。第二に、それらの資料を基に日本南アジア学会で英語のパネルを組み、学術的な成果として発表した。さらに、現地研究者ディーパク・ナオレムを招へいしてのワークショップの代わりに、連続オンラインセミナーを3回に分けて実施した。連続オンラインセミナーでは内海愛子など、この分野で経験と実績のある研究者を討論者として招聘し、非常に有益な知見を得るとともに、今後の研究の方向性に重要な示唆を得た。  オンラインセミナーと学会発表の実施により、インパール作戦の現地被害については現在のところ断片的なデータの収集にとどまっており、今後も資料の収集と分析が必要であることが明らかとなった。また、現地の研究者の間でもこの問題はあまり取り上げられてこなかったが、非常に関心が高いことがわかり、今後は現地の研究者と連携して共同研究の可能性を模索したい。

その他/備考


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