高木基金について助成応募の方法これまでの助成研究・研修高木基金の取り組みご支援のお願い

これまでの助成研究・研修

トップページ > これまでの助成研究・研修 > 助成事例の詳細


韓国・使用済み核燃料再検討委員会の進行過程における社会運動団体の脱原発フレーム拡張に関する研究



グループ名
代表者氏名 高野 聡 さん
URL
助成金額 40万円

ウルサン市北区での住民投票の投票所風景(2020年6月5日)

蔚山で開催された韓国の環境社会学会2020年春季学術での発表の様子(2020年10月17日)

乾式貯蔵建設に反対する月城住民から聞き取り調査(2020年10月17日月城にて)

研究の概要

2019年12月の助成申込書から
 韓国のムン・ジェイン政権は2019年5月に高レベル核廃棄物管理政策のあり方を議論する「使用済み核燃料再検討委員会」を設置し、現在も活動が継続中だ。長い時間をかけて、段階的に、社会の多様な層を包括した公論形成の方式は熟議民主主義と呼ばれ、高く評価されることもある。一方、脱原発団体は韓国の原発政策の歴史的背景や政治・経済的な力学を軽視した現在の公論形成では、一部権力者の意志が政策に反映され、社会的少数者の意見や声は尊重されないと反発し、社会対立が増している。
 そこで本研究はフレーミング分析を通して、現在進行中の高レベル核廃棄物に関する公論形成の過程で、社会運動団体がどのように問題を指摘し、自らの主張の正当性を訴え、他の主体と連携し、脱原発フレームを拡大しようとしているのか分析する。またフレーミング分析だけは運動団体内部の戦略や主張のみに焦点をあて、社会全体の構造を軽視してしまう危険性があるため、政治的機会構造論を導入することで、原発をめぐる韓国社会の権力構造やダイナミズム、歴史的文脈を十分考慮した分析を行う。本研究の方法は文献調査、参与観察、インタビューを中心とした定性研究である。
 韓国では2021年にウォルソン原発で使用済み核燃料の貯蔵が飽和状態を向かえるため、原発推進団体は使用済み核燃料の議論を通して、乾式貯蔵増設の必要性を強く訴えている。問題の緊急性が増す中、研究の必要性も高いと考える。

中間報告

中間報告から
 この研究の目的は、韓国政府が2019年5月末に設置し、現在まで続く「使用済み核燃料管理政策再検討委員会」での公論化政策を把握し、社会運動団体がどのようにして対抗的な公論形成を行っているのかを分析することです。文在寅政権は、朴槿恵政権で策定された計画が社会的受容性の低いものだったため、新たに委員会を設置し、計画の見直しに着手しました。
 しかしこの委員会にも反発が起きています。象徴的なのがウォルソン原発から半径20km以内に21万人が住むウルサン市北区です。委員会はウォルソン原発内に乾式貯蔵施設を建設するかどうかの議論に関して、原発のあるキョンジュ市とは行政区が違うという理由で北区住民を排除。これに抗議するため北区住民は独自に2020年6月に民間主導で住民投票を実施し、独自の公論形成を行いました。
 私はこのウルサン市北区の住民投票に選挙スタッフとして参加し、大統領府前でウルサン住民と共に抗議行動をするなど参与観察を行ってきました。また住民投票を含めた、社会運動による公論形成のダイナミズムを体系的に分析するための理論的枠組みを構築することを目指してきました。
 その分析内容は韓国の学会で10月に発表しました。また10月1日発行の原子力資料情報室通信556号にも研究内容の一部が掲載されました。今後は脱原発団体メンバーや再検討委員会の委員にインタビューを行い、公論化を巡る双方のフレームがどのように異なるのか、集中的に分析を行う予定です。

結果・成果

2021年5月の完了報告から
本研究は2019年5月から2021年3月まで開催された韓国の使用済み核燃料政策管理政策再検討委員会による公論形成過程とそれに抗議する脱原発団体の運動を扱った。特に争点となったのが原発立地地域にある使用済み核燃料の乾式貯蔵施設建設の是非を議論する地域公論化だ。慶州(キョンジュ)での地域公論化に対し、蔚山(ウルサン)の脱原発団体は民間住民投票による対抗的な公論形成を行った。本研究ではこの抵抗運動を政治的機会構造分析という社会運動理論を用いて分析した。また研究方法としては、質的研究の代表的な手法である文献調査、参与観察、インタビューを採用した。
 脱原発団体は、再検討委員会が乾式貯蔵施設建設のための拙速な公論化のために設立され、原発推進派による建設の既成事実化の動きに対するコントロール能力もないため、再検討委は原発推進派の脚本通りに動く操り人形に過ぎないと認識した。また原発から近いにもかかわらず、立地自治体ではないという理由で地域公論化に参加できないのは、政治的主体性を剥奪する構造的暴力に等しいと評価した。したがって市民統治を回復する対抗的な公論形成の場が必要であり、その実践として民間住民投票という「直接公論化」を行う戦略を取った。
 この事例についての分析の結果として、政府主導の公論化政策に対しては、公正な公論形成が可能かどうか適正に判断し、欠陥がある場合には対抗的な公論空間を創造することが社会運動団体の大きな役割の一つだと評価できる。この政策的示唆は日本で政府主導の公論化政策が実施された場合にも生かせると考える。

その他/備考


HOME助成応募の方法これまでの助成研究・研修高木基金の取り組みご支援のお願い高木基金について
ENGLISHサイトマップお問い合わせ 個人情報の取り扱い