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諫早湾調整池から有明海に排出されたアオコ毒ミクロシスチンの残留、分解と水生生物への蓄積



グループ名 諫早湾調整池アオコ毒素研究チーム
代表者氏名 高橋 徹 さん
URL
助成金額 50万円

研究の概要

2019年12月の助成申込書から
 諫早湾干拓事業は有明海の潮流に影響し、赤潮大規模化や貧酸素の原因になったとされている(田中ほか, 2019)。さらに、調整池からの排水による漁場への直接的悪影響が懸念されている。夏期には有毒アオコの発生が常態化しており、調整池で産生されたアオコ毒ミクロシスチン(MCs)が年間数十〜数百kg海域に排出されていることが判明している。
 諌早湾調整池は水深が浅く、微細粘土粒子が浮遊している為、透明度が極端に低い(15-20cm)。この事が、夏期のアオコ発生の原因となり、冬期には不十分な光合成による富栄養排水が、海苔に被害を与える冬期の赤潮に繋がっている可能性がある。本研究では、その点をより明白にするために、13Cを用いた純一次生産の測定を実施したい。
 なお、MCsは通年にわたって海底の堆積物に残留している事が確認されたが、農水省は、アオコは海域に排出されると死滅し、毒素も分解菌に分解されるから問題ないとしている。しかし、我々の予備的室内分解実験では、 20℃以下ではMCsの分解が止まり、合成は進行していた。本研究では、より詳細な実験を行い、堆積物中のMCsの消長を遺伝子レベルで明らかにしたい。このことで、冬期の残留が分解速度低下に起因する事を証明し、アオコ発生期以外にも警戒が必要であることを示したい。このように、調整池の特性と排出された毒素の行方を把握することで、海水を導入する以外、有明海の広域汚染を解決する方法がない事をより明確に示したい。

中間報告

中間報告から
 諫早湾干拓事業は有明海の潮流に影響し、赤潮大規模化や貧酸素の原因になったとされています。さらに、調整池からの排水による漁場への直接的悪影響が懸念されています。夏期には有毒アオコの発生が常態化しており、調整池で産生されたアオコ毒ミクロシスチン(MCs) が年間数十〜数百kg、海域に排出されていることが判明しています。
 諌早湾調整池は水深が浅く、微細粘土粒子の浮遊により透明度が極端に低い(15-20cm)ことが、夏期のアオコ発生の原因となり、冬期には不十分な光合成による富栄養排水が、ノリに被害を与える赤潮に繋がっている可能性があります。本研究では、その点をより明白にするために、炭素13を用いた純一次生産の測定を実施する計画でした。
 しかし、上半期は、コロナ禍の中で、共同研究者が県境を越えた移動や外部との接触を禁じられ、サンプル処理に必要な機器が備わった熊本保健科学大学総合実験室が9月前半まで封鎖という状況になってしまいました。9月中旬になり、実験室立ち入りは可能となりましたが、総合研究室で私が利用していた機器類の多くが、COVID-19のためにずれ込んだ学生実習のスケジュール消化のために撤去されてしまい、このまま調査を行っても当初計画通りの実験は実施困難となりました。そこで、異例とはなりますが、大幅な計画変更を行い、まず、調整池が通常の湖沼生態系の機能を有しているかを検証する為に、生態系の出発点となる基礎生産速度を測定することにしました。
 具体的には、調整池の表層水を採取し、透明度、水質などを測定した上で、4段階に遮光したボトルに試水を分注し、炭素13を添加し、表層に浮かべて培養したものを、4時間後に現場で濾過し、濾過したフィルターを凍結して、同位体比分析にかけ基礎生産速度を算出します。この現場測定を最低限、夏季と冬季の2回、可能であれば4回実施する考えです。これらの研究から、調整池が果たす負の役割を浮き彫りにしたいと考えています。

結果・成果

2021年5月の完了報告から
2020年度、5月〜10月にかけ、COVID-19のため、約半年にわたって、使用を予定していた大学の研究室が閉鎖となり、その後も、停滞していた学生実習等との関係で、進展の見通しが立たない状態が続いたため、研究方法を見直し、諫早湾調整池の生態系を読み解く上で重要な基礎生産の測定に切り替えることとした。
 諫早湾調整池は年間を通して透明度が10-20cm程度しかなく、植物プランクトンが効果的に光合成をおこなえる補償深度は25-50cm程度となっている。そのため、それ以下の水深は深海同様の無生産ゾーンと言える。もちろん、湖底に藻などは一切生えていない。生態系の出発点となる光合成が機能していないので、そこに生息する生物相も貧弱であるが、水温が25˚Cを越える時期になると、表層にアオコ(シアノバクテリア)が拡散し、強力な肝臓毒ミクロシスチンが沿岸生態系に拡散されている。当初の研究目的は、この残留プロセスをより明確にする事を主眼としていた。しかし、前述の事由により、当面、毒素を取り扱う研究に支障が生じたため、副次的に計画していた基礎生産の測定を主題にすることした。
 これまでの研究で、諫早湾調整池は他の天然湖、人造湖と異なる、特異な性質があり、その事が有毒アオコの発生を常態化している要因である事がわかってきた。今回、そのことを具体的定量的に示したい。

その他/備考


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