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メコン河流域国における開発事業に伴う人権侵害調査



グループ名 メコン・ウォッチ
代表者氏名 木口 由香 さん
URL http://www.mekongwatch.org/
助成金額 50万円

ラオスでは、韓国とタイの投資によって建設されたダムの一部が2018 年に決壊、70名以上が亡くなり、7千人以上が家などすべてを失う甚 大な事故が発生しています。写真は破壊された学校。2018 年12 月 撮影

研究の概要

2019年12月の助成申込書から
 メコン河流域の国々では、政府や民間企業の行う大規模開発により、人々の居住権や土地の利用の権利に対する侵害が発生している。  カンボジアでは、企業による土地収奪が大きな問題となってきた。ベトナムでは、大規模な公害事件による環境破壊で生業が崩壊した例も見られる。タイでは少数民族や貧困層の居住権の問題、ラオスやミャンマーでは開発に伴う強制移転や土地収用があり、住む権利や生業を営む権利の侵害が起きている。  各国ともに、環境アセスメントなどの法整備は進んでいる一方、現実には、開発事業への反対や移転への異議を唱えたことで、命を落とす、あるいは司法による圧力をかけられる人々が存在する。  本調査では、日本と関係の深いメコン河流域の5カ国(カンボジア、タイ、ベトナム、ミャンマー、ラオス)において、開発現場や土地利用に関し2000年以降の人権侵害の事例を概観、重要と思われる事例を選択し資料化するとともに、現地での事例調査によって、人権侵害が起きる現在の社会的な背景を明らかとする。「ビジネスと人権」や「ESG投資」が言われる中、既に発生している問題を顕在化し、社会に発信していく。

中間報告

中間報告から
 世界では、国連のビジネスと人権に関する指導原則や、環境・社会に配慮したESG投資に関心が高まっています。  しかし、開発の現場は依然、人権に関わる様々な問題を抱えています。調査対象のメコン河流域国では、インフラ建設や大規模農業開発により、人びとの居住権や土地利用の権利が脅かされており、問題の多くは解決されていません。  カンボジアでは、近年まで、開発による土地収奪が頻発しています。ベトナムでは、公害事件による環境破壊で、生業が崩壊した例も見られます。タイでは少数民族や貧困層の居住権の問題、ラオスやミャンマーでは開発に伴う強制移転や土地収用があり、居住権や生業を営む権利への侵害がみられます。また、電源開発などによる国境を越えた環境・社会問題も存在します。  各国ともに、住民の参加が可能な環境アセスメント等の法整備は進んでいます。一方、現実には、開発事業への反対や、住居の移転に異議を唱えたことで、司法による圧力をかけられる場合や、時には声をあげた人が命を落とす事例もみられます。  本調査では、日本と関係の深いメコン河流域の5カ国(カンボジア、タイ、ベトナム、ミャンマー、ラオス)で、人権状況に影響する言論の自由度など各国の基礎情報を文献から収集、また、過去の開発の現場での人権侵害の事例を分析しています。そこから、現在も続く権利の侵害が起きる社会的な背景を明らかにすると共に、具体的な事例を通した権利侵害の予防や改善のポイントを分析し、この地域に投資をする日本企業に対し提示することを目指します。  これまでの活動では主に、国際的な人権団体のレポートやニュースを収集するとともに、流域で活動するNGOから情報収集を行いました。メコン河流域国で一番民主的であったタイでは、近年、活動家や人権擁護者の強制失踪(国の機関などが誘拐などで人の自由を剥奪し、法の保護の外におくこと)が問題となっており、文書で情報を収集したほか、元国家人権委員会委員の方などから現状について聞き取りを行いました。

結果・成果

2021年8月の経過報告から
 世界では、国連のビジネスと人権に関する指導原則や、環境・社会に配慮したESG投資に関心が高まっている。メコン河流域のカンボジア、タイ、ベトナム、ラオスでは、住民参加が可能な環境アセスメント等の法整備は進んでいるが、現実には、開発事業へ異議を唱えることは、大きなリスクを伴う。  本調査では、人権状況に影響する社会状況を人権団体の発行する文献から収集すると共に、これまでメコン・ウォッチが関わった開発の現場で起こった人権侵害の事例を分析している。現在も続く権利の侵害が起きる社会的な背景を明らかとすると共に、具体的な事例を通した権利侵害の予防や改善のポイントを分析し、この地域に投資をする日本企業に対し提示することを目指している。  2020年度後期、引き続き人権団体の報告を収集・分析し、ここ20年ほどの人権問題の流れを把握した。ベトナム、ラオスでは経済の自由化に伴い、言論や政治的な自由が広がると思われたが単純な変化は起きず、また、民主的とされてきたタイで発生した政治的な混乱やクーデターで、対立から生じる人権侵害が増えている。カンボジアも、長期政権が続く中で選挙での圧勝を目指した政権による弾圧が政治団体だけでなく、社会のあらゆる結社に及ぶ事態となった。  各国ともに、大規模インフラや農業投資事業、都市開発において負の影響を受ける人々が、政府から対抗勢力と見なされる恐れから、問題への意見表明を行うこと自体が危険となる傾向が強い。また、影響住民を支援するNGOや法律家への圧力も、顕著となっている。更に、SNSで個人が簡単に意見表明をすることができるようになった反面、それが弾圧の対象となることも多い。  順調に民主化が進んでいたように見えたミャンマーでは、2021年2月1日にミャンマー国軍による軍事クーデターが発生し、市民への苛烈な弾圧が続いている。国軍への資金の流れを止めるため、背景状況や日本と国軍ビジネスとの関係について重点的に調査を行なった。日本政府は一部の公的資金の供与や官民ファンドの投資、そして資源の権益保有で、国軍に利益をもたらすような事業に関係している。2月より、現状を明らかとする調査と共に、資金の流れを止める運動も展開している。 (関連情報: http://www.mekongwatch.org/report/burma/mbusiness.html)  開発の影響による人権侵害で調査を開始したが、20年間の政治的な変化を看過することはできず、背景情報のまとめに苦心している。

その他/備考


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