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津波被災地域における大規模復興公共事業の「その後」についての調査研究



グループ名
代表者氏名 山崎 真帆 さん
URL
助成金額 35万円

南三陸町の観光スポットであるさんさん商店街にはられた注意書き。 外部者の訪問に伴う新型コロナウイルス感染症の拡大を恐れる町民も 多い中、さんさん商店街には県外ナンバーの車も多くみられます。

全面開園した南三陸町復興祈念公園

町民とボランティアをつないだ農工房

研究の概要

2019年12月の助成申込書から
 本研究は、東日本大震災津波被災地域において、復興事業の主軸として展開された大規模な公共土木工事が、地域住民の生活に「与えた」影響について調査・整理することを目的とする。
 甚大な被害を受けた津波被災地域では、政府が定めた東日本大震災からの復興期間の終期(2020年度末)が迫るなか、大規模に展開されてきた復旧・復興のための公共事業が大詰めを迎えている。たとえば、代表的な津波被災地である宮城県本吉郡南三陸町では、防潮堤の建設や高台移転の実施、市街地のかさ上げ盛土工事、河川の護岸工事といった大規模事業が一体となって展開され、まちの景観や構造を大幅に改変した。その背景には、行政や防災分野の専門家の「安全性を高め『住民の命・暮らしを守る』」という論理がある。こうした論理のもと、防潮堤に代表される津波防災施設の建設が復興まちづくりの前提条件であるとして住民合意が強引に進められ、守られるべき「命」「暮らし」の主語たる住民の視点はないがしろにされた。研究者・実践者らは早い段階からこうした復興制度の問題点、想定される地域社会への影響を繰り返し指摘し、積極的に提言活動に取り組んだ。
 本研究では市民の立場から、一連の復興事業の「その後」に着目する。具体的には、復興計画の最終年度(2020年度)を迎える南三陸町において地域住民を対象としたインタビュー調査を実施し、こうした事業が実際に地域住民の生活にどのような影響を与えているのかを調査する。収集した語りは、KJ法を用いて整理・分析に付す。また申請者は、近い将来に想定される大規模災害を念頭に、市民社会への成果の還元を目指して本調査研究に取り組んでいく。

中間報告

中間報告から
 東日本大震災により甚大な津波被害を受けた東北の沿岸自治体では、「復興・創生期間」が最終年度となり、大規模な公共事業を中心とする復興まちづくりが大詰めを迎えています。こうしたハード中心のまちづくりは、「住民の命・暮らしを守る」という行政や防災分野の専門家の論理のもとに進められ、住民合意が強引に進められるなど、住民の視点はないがしろにされてきました。
 本研究では、宮城県本吉郡南三陸町においてフィールドワークを実施し、大規模な公共事業を軸とする復興が、地域住民の生活にどのような影響を与えてきたのかを調査する計画を立てていました。しかしながら、現在、新型コロナウイルス感染症の拡大により、被災地も大きな影響を受けています。たとえば、南三陸町を含め、多くの沿岸被災自治体では、大規模なハード事業の「帰結」が見えつつある一方で、止まらない人口減少への対応を迫られてきました。南三陸町は交流人口・関係人口の増大にまちづくりの活路を見出していましたが、「コロナ禍」「ニューノーマル」は、同町のような戦略へと舵をきった被災地に大きな打撃となっているのです。
 本研究では、このような現状を踏まえ、調査研究の枠組みを再考しました。東日本大震災から10年の節目を前に、復興の「その先」を見据えつつある津波被災地を対象に、新型コロナウイルス感染症拡大の影響、コロナ禍への対応に焦点を当てていくこととしています。復興とコロナ禍がオーバーラップする被災地の実態のなかに、危機を乗り越えようとする市民の営為のみならず、ハード中心の復興が被災者の暮らしにもたらしてきた問題と、政府のコロナ対応における課題の接続点を見出すことができるのではないかと考えています。今後は、南三陸町民、特に「復興」の担い手となってきた交流産業の事業者らへの聞き取り調査を進めていく予定です。

結果・成果

2021年5月の完了報告から
2021年5月現在、東日本大震災により甚大な津波被害を受けた東北の被災地では、復興期間が終了し、復旧・復興のための大規模な公共事業が終わりを迎えつつあります。こうしたハード中心の復興政策は、「住民の命・暮らしを守る」という論理のもと進められてきましたが、住民合意が強引に進められるなど、住民の視点はないがしろにされました。
 私は宮城県南三陸町を対象とし、こうした大規模な復興公共事業が地域社会や住民にもたらす影響について調査研究を行ってきました。本調査研究では、復興公共事業の「その後」として、ハード中心の復興が地域住民に実際に与えた影響について調査する計画を立てました。しかしながら、新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)が被災地に大きな影響を与えている現状を踏まえ、枠組みを大幅に修正し、コロナ禍における影響と市民の対応という切り口から、大規模復興公共事業が被災した地域社会にもたらしたものを明らかにしていくことにしました。
 行政資料や文献資料等の収集・通読と、南三陸町における現地調査の結果、ハード偏重の復興まちづくりが被災自治体の人口減少をむしろ加速させ、交流・関係人口の拡大へと舵をきらせたこと、こうした文脈においてコロナ禍の影響が増幅されたこと、一方で住民は災害ボランティア等との交流のなかで「個人的なつながり」を築いてきたこと、また対面による交流はコロナ禍で途絶しつつも、アフターコロナにおいては「つながり」が“復興支援”にとどまらない関係性へと発展することが期待されていることなどがわかりました。
 一方でCOVID-19の影響もあり、本調査研究は未だ道半ばで様々な課題が残されています。今後も調査研究を継続し、問題の本質により深く迫っていく所存です

その他/備考


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