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石膏鉱山開発が及ぼしうる健康・水資源・空気への影響、生活の質の低下、 生活基盤の脆弱化ついて、コミュニティ全体で理解を促進する



グループ名 Earth Guardians of Bhutan
代表者氏名 チャンドラ・マン・ライ さん
URL
助成金額 4,000USD=約40万円

鉱山活動によりむき出しになった山肌 

鉱山活動から生じる廃棄物が小川に流れ込んでいる

住民とのインタビューの様子

研究の概要

2019年9月の助成申込書より
 ブータンは急速に経済発展を遂げていますが、自然資源や社会への脅威は年々、増しています。ブータンにおいて社会に与える影響が最も大きい経済活動の一つは鉱山開発です。 不適切な計画や法令違反などにより、鉱山事業は水、大気、土壌を汚染し、取り返しのつかない損害、環境劣化を引き起こしてきた結果、 地域社会は多くの代償を支払ってきました。  現在のブータン政府の計画では、国の主要な財源として鉱山事業を優先させる方針をとっています。しかしながら、 多くの事業実施予定地は辺境の地にあり、そこに暮らす人々は主に農民ですが、識字率も低く、鉱山開発がもたらすと考えられる影響(森林資源が破壊されたり、水や大気が汚染されたりすることで農作物の状態が悪くなること、それにより、地域住民の生計手段や日々の暮らしに影響が出ること、鉱山に関係する車両の往来が激しいことから、 地滑りや交通事故などの安全上の問題が起きていること、健康影響などの潜在的なリスクがあること、など)について、あまり理解していません。 本調査では、政府関係者、企業、地域社会などの関係者を交えたワークショップ、参加型農村調査(PRA)、半構造化面接、フォーカスグループディスカッションなどの手法を用いて実施するとともに、鉱山周辺の水質や大気の調査を行い、 健康面については医療機関に協力を仰ぐなどして環境・健康影響を調べていきます。また、地域のあらゆる人々を調査に巻き込むことを重視し、 鉱山事業がもたらす社会環境影響について住民自身が学び取れるように配慮する一方、 鉱山会社には、 これらの影響に対して責任を果たすよう求めていきます。  研究の成果は、メディアやウェブサイト、レポートなどで発信し、政府の鉱山事業に関する政策、意思決定に反映されるように働きかけていきます。

中間報告


結果・成果

2021年1月の報告書より
急速な経済発展を遂げるブータンで、環境、社会に与える影響が最も大きい経済活動の一つが石膏鉱山開発です。本調査では、鉱山周辺の住民へのインタビューや水質や大気の調査を行い、環境・健康影響を調べました。 採掘現場の近隣住民を対象にしたインタビューや、社会、経済、環境の側面から調査を行った結果、大量の粉塵放出によって、土地や水、大気、農業および生物多様性への影響が深刻になっていることが分かりました。 例えば、70%以上の回答者が粉塵や粒子状物質が大気中を舞うことで、青空が見えにくくなったと答え、野生動物が姿を消したという証言も複数ありました。同じく粉塵が植物や樹木にも降りかかることで、 農作物の発育不良や収量の減少につながり、家畜の飼料としても使えなくなったなど、90%以上の回答者が、農業に大きな悪影響を及ぼしていると述べています。また、約90%の地元住民は、鉱山からの廃棄物や、行き来するダンプカーから出る排気ガスなどが、大気や川を汚染していると訴えています。さらに、車両は高速で行き交うため、歩行者の安全上の問題や、岩石を爆破する騒音や振動問題も深刻です。また、採掘現場近くで、電気伝導度の水質調査を行ったところ、上流の水質に問題はないものの、事業活動から出る廃棄物が川に流れ出すため、鉱山周辺から下流域は水質が悪 化していることが明らかになりました。 それでも一部に、鉱山労働者相手に商売ができたり、トラックの運転手や現場監督などの雇用があるなど、 開発事業が、経済的な恩恵になっているという声もありました。 今回の調査で、 鉱山事業が自分たちの暮らしや生計手段に及ぼす問題について、地域コミュニティが、自ら調べ、自ら声をあげることができたこと、また、調査結果を鉱山会社に伝えたことで、 会社側が、 影響を受けるコミュニティに対して、緩和・適応策を検討し、支援していくことを表明したことは大きな成果だと考えます。引き続き、政府にもデータを共有し、水や大気、人々の健康、生物多様性といった環境問題に率先して取り組んでもらえるよう働きかけていきたいと思います。

その他/備考


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