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今も続く葛藤:強制移転の長期的なマイナス影響に対するカンボジア地域社会の評価と反応



グループ名 今も続く葛藤:カンボジアのコミュニティが経験した強制移転の長期的な負の影響に対する評価と対応[]
代表者氏名 リーカナ・コル  さん
URL
助成金額 4,500USD=約45万円

調査対象地の地図

ストゥンスロット村の典型的な家屋と住民共同の井戸(手前)

研究の概要

2019年9月の助成申込書より
 カンボジアは他の途上国と同じく、依然として、ダムや道路などの大規模開発によるコミュニティの強制移転が、主な環境、社会問題であり、人権侵害も引き起こしています。地域社会への影響は深刻で、長期間に亘って住民の暮らしや生計手段に大きな問題をもたらしていますが、強制移転がもたらす負の影響は十分認識されていません。  本調査で取り上げる事例は、2000 年代初めにアジア開発銀行(ADB) の支援による国道 1 号線の建設事業で、カンボジア南部のストゥンスロット村が移転させられた問題ですが、20年経 った今もその影響に苦しむ住民の姿があります。今回の研究では、コミュニティが直面してきた長期的な影響と今も抱える問題(家や土地、安全な水や食料、医療、教育、生計手段といった基本的な生活に関わるものから、経済移民の増加、洪水被害、不法占拠など、問題は多岐にわたる)を明らかにし、地域コミュニティにおける経済的社会的な弱者が移住によってどのような不利益を被っているのかについて、開発側、すなわちカンボジア政府やADBなどに知らせるとともに、今後の暮らしへの影響を予測して事前に適切な対策をとるように求めていきます。また、ストゥンスロット村の人々が団結し、現状を改善するために話し合う機会も提供していきたいと考えています。  調査手法としては、コミュニティが直面している強制移転の影響の全体像を把握するために、 地域住民を中心とする参加型行動調査を用います。 特に女性参加者には積極的に意見を求め、データ収集、分析、報告にも参加してもらうようにします。コミュニティとしても、移転が原因となっている未解決の課題について議論し、アイデアを出し合い、解 決に向けて取り組むことは重要なステップであり、このことは、 開発がもたらす同様の問題が起きている他の地域でも応用できると考えています。  調査結果は、各種メディアを通じて、政策決定者、役人、開発の専門家、企業、NGO、一般市民に知らせるとともに、本問題を国際 NGO から ADB やその出資元である日本及び主要ドナー国に知らせることで、政府レベルで議論してもらうことを期待しています。

中間報告


結果・成果

2021年1月の報告書より
本研究調査の目的は、カンボジアで、アジア開発銀行(ADB)の融資によって実施された国道1号線改修事業にのために立ち退きを求められたコミュニティが、どのような長期的影響を受けてきたかを把握することです。 調査対象地となるカンボジア南部のストゥンスロット地区(以下、SSC)は、2000年代初めに、当該事業により63 家族が非自発的な移転を余儀なくされました。 調査時点で、21 家族が再定住地にそのまま居住し、8 家族は大都市や外国へ移住し、34家族は土地を売り村外に出るものの、多くが国道1号線沿いに住んでいます。今回、世帯調査やインタビューから得られた40家族の回答(回答者の44%が再定住地区の居住者)を抜粋して紹介します。 ・日雇い労働などの不安定な雇用が移転前より増加した。(10→14%) ・主婦の割合は移転前に比べて大幅に減少したが(33 %→24%)、出稼ぎ世帯が2倍以上増加した。 ・世帯の平均月収は、移転前の水準(約100USドル)に戻ったが、世帯間の収入格差は拡大した。 ・18歳未満の子供がいる世帯の44%は、経済的理由などから定期的に学校に通わせていない。 ・約4分の3の世帯で、病気の家族を抱えているが、貧困家庭として登録し、無料の医療サービスを受けているのはごく一握りである。 ・公共サービスが行き届かず、多くの人が適切なゴミ処分をしていない。自宅に水洗トイレのない世帯もある。 ・1日3食の十分な食事を取れると回答したのは7%で、多くの人にとって食料の確保が課題になっている。 SSC再定住地区は、南部経済の中心地となったネアックルン地区から近く、国道改修事業によって、地域経済は急成長を遂げましたが、SSC に住む世帯の多くは、その恩恵を受けることはなく、むしろ物価上昇や自然・ 土地環境の悪化により、生活が厳しくなっています。 今回の調査で、非自発的な移転が長期間にわたってマイナスの影響をもたらしてきたことが明らかになりましたが、現状を改善するために、コミュニティのメンバー自身から様々な提案(農業振興策、土地問題解決、コミュニティの再編成、インフラ整備、生計向上プログラムの実施、金融支援、教育支援、環境保全、清掃活動、食糧確保、福祉プログラムなど)が出されるという成果もありました。 今回の調査結果は、※ADBの非自発的住民移転政策の改善や他国での類似事業への教訓として活かすために、NGOの機関誌などで発表していきます。 ※ADB事業を監視するNGOネットワークの機関誌『BANKWATCH』2021年3月号で発表された記事は高木基金のウェブサイトでもご覧いただけます。 http://www.takagifund.org/granteenews/index.html

その他/備考


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