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〈研修奨励〉 リスク社会という文脈におけるトルコの反核運動 ―メルスィンとシノップを事例に―社会学博士課程での研修



グループ名
代表者氏名 プナール・デミルジャン さん
URL
助成金額 2,000USD=約20万円

シノップ原発反対運動の様子1

シノップ原発反対運動の様子2

シノップ原発に反対する抗議集会の様子

研究の概要

2019年9月の助成申込書より
 ヨーロッパとアジア大陸の中央に位置するトルコは、近隣地域で勃発している戦争や難民の悲劇に対して果たすべき役割がある一方、 権威主義的な政治傾向が高まることによる危機感、誤った民主主義、自然と人権に対する新自由主義的な気運が高まっています。このように、政権の独裁化や新自由主義の波にさらされながら、トルコの反核運動を担う人々や団体が、どのように原発のリスクを人々に説明し、連帯してきたのかについて、研究・考察していきます。  この研究は、2010 年以降に署名された政府間原子力協定に基づく原発建設計画について、 事業実施予定地域での原発反対運動に焦点を当て、その運動の歴史が政治、経済、 社会的に見て、 どのような影響を受けてきたかを調べていきます。  トルコの原発反対運動は、 地中海沿いのアックユ原発計画(メルスィン県)に土地使用免許が交付されて以来43年間の歴史があります。政権が独裁化してきた2010年、トルコはロシアとの間でアックユ原発建設に合意しました。さらに現在トルコには、アックユ計画に加え、黒海に面するシノップ原発計画(シノップ県)があります。シノップ原発計画については2013年、 日本との間で合意が交わされました。いずれも、世界初の一括事業請負方式(Build-Own-Operate)によるプロジェクトです。2019年初頭、シノップ原発計画に関する日本とトルコの合意は取り消されたと報道されましたが、トルコ政府の説明では計画は破棄されていません。  調査は、理論的知識と経験的情報の融合を目指し、原発計画のある2つの都市でインタビュー、原発反対運動の談話分析を行い、 反原発の闘いについて考察します。 博士号取得後は、メルボルン大学でポスドク研究者になる予定です。

中間報告


結果・成果

2020年1月の報告書より
この研究では、2010年以降に合意された政府間の原子力協定に基づく原発建設計画に対して、事業実施予定地域で起きた反核運動に焦点を当て、その運動が政治、経済、社会的にどのような影響を受けてきたかを調べています。 実際の調査では、文献調査に加えて、原発予定立地のメルスィンとシノップを訪問し、反核運動の関係者55人にインタビューを行いました。その後、新型コロナウィルス感染拡大により都市封鎖となったため、 追加調査は電話で行いました。インタビュー結果は、トルコの新自由主義的権威主義下の反核運動への抵抗 」 という論文に反映させ、所属するアジア市民社会学会で発表しました。 トルコの反核運動は、 最も長い歴史を持つ社会運動であり、市民社会を中心に非常に強固なものですが、2016年のクーデター未遂以後に非常事態宣言が発令された頃から、政府は権威主義的支配を強め、意思決定プロセスから市民を排除したり、デモや集会を禁止するなど強硬的な措置を取ったため、国や行政と市民社会の間で衝突が増加しました。しかし、反核運動に参加したために拘留されたり、多額の罰金を科される、仕事を失う人も出てきたために、全体的に社会運動は下火になりました。 社会運動は、政治的プロセスに対抗して変化するものですが、トルコは、1970年代から世界を支配してきた新自由主義政策の影響下にあり、この期間は、トルコで原発の土地使用免許が交付された時代と重なっています。 そして、今日の政権が、独裁的なものに変化したのも、 反核運動が始まった時代とも重なり、 政治的プロセスと社会運動の関係性を分析するには、 まずは新自由主義化への流れを押さえなければならないということを認識しました。 反核運動の歴史は、新自由主義を追い求める政府の変容過程を観察するのに格好の題材です。 引き続き、反核運動と政府の変容との関係性について包括的な研究調査を行い、2022年5月を目処に博士論文を完成させる予定です。

その他/備考


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