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国際協力の現場におけるリーダーシップトレーニングの設計とその効果 東ティモールにおけるケーススタディ―



グループ名
代表者氏名 徳 恵利子 さん
URL
助成金額 30万円

研究の概要

東ティモールにおいて、開発における外部者の関わりの可能性について検討する
 開発の目標が、経済発展から「人間の潜在力」を最大限に引き出し、それによって生活の向上と自立、選択の自由を促進するプロセス?エンパワーメント?を目指すよう変化して20余年が経つ。
 本研究は、筆者が2001年から2007年まで滞在した東ティモールの人びとのエンパワーメントに焦点を当て、本来主体的な行為であるはずのエンパワーメントに外部者がいかに関わるかについて検討し、実際の介入を実施、介入の効果を評価することで今後の開発における外部者の関わりの可能性について検討することを目的としている。

 東ティモールにおけるエンパワーメントを考察するにあたり、歴史の中でどのように人びとのディス・エンパワーメント(非力化の過程)がすすんだのかについて着目した。
 そこで見えてきたのは支配者/リーダーと人びとの関係性である。
 東ティモールはもともと小さな王国の集合体であり、王による専制政治が確立していた。その後は、ポルトガルによる植民地支配やインドネシアによる武力併合と力によって人びとを支配する時代が続いた。またインドネシア時代に水面下で継続した独立抵抗運動においては、人びとは司令官の命令に従うことが必須であった。つまり、東ティモールの人びとは長い時間をかけて、主体的・自律的に生きるより誰かに従って生きることを内面化してきたと言える。
その東ティモールも2002年に独立を達成し、「民主的な社会」をつくろうとしている。民主的な社会とはすなわち、一人ひとりの人間が尊重される社会であり、民主的な社会の実現には誰かに追従するのではなく、一人ひとりがエンパワーされて自らの潜在力に気づき、その潜在力を最大限に伸ばし発揮することが必要である。
 2007年11月、東ティモールのコミュニティにおいて人びとのエンパワーメントを目指し活動している団体の関係者を対象に、コミュニティの目的達成のためにどのようなリーダーを必要としているか、インタビュー調査を実施した。
 結果をKJ法的に分析、リーダーに必要な力として
 ?リーダー自身のモチベーション
 ?コミュニケーション能力
 ?リーダーの知識
 ?先導力
 ?サポート力
 ?調整力
という6つの力が抽出された。この結果は、近年の東ティモールの政治・社会的変遷の中で必要とされるリーダーシップが、一方的に命令を下し集団を目的達成に導くタイプから、集団の人間関係に配慮しながら目的達成をめざすタイプへと変化していることをあらわしている。必要とされるリーダーシップの変化は、現場のリーダーたちにとっても大きなチャレンジであることは想像に難くない。

 このように現在の東ティモールでは、多様な能力と機能を発揮できるリーダーを必要としている。これらの多様な力を万遍なく発揮するためには、これまでのように単独のリーダーがその役割を担うのではなく、複数の人間がそれぞれの特性を活かしながらリーダーシップを分担して発揮することが合理的かつ有効であると考える。
また、複数のリーダーによるチーム活動は、メンバー同士の相互作用を通して個々のエンパワーメントの促進にもつながると期待できる。

 そこで、リーダーがチームとして活動する中で、チームメンバー一人ひとりの個性やカリスマを認めあい、協力してリーダーシップを発揮できるようなトレーニングプログラムの設計、実施を計画した。
  
 2008年5月、東ティモールの首都ディリにおいて実施した2泊3日のトレーニングには、地域でヘルスワーカー、ユースグループのリーダー、コーヒー生産者組合の役員等コミュニティリーダーとして活躍している4チーム25名が参加した。プログラムはチーム内のコミュニケーション、意思決定、リーダーシップ、問題解決過程等、チームメンバーの相互関係への取り組みを取り上げ、相互関係について意識的に取り組むことでチームの信頼関係の醸成がすすみ、一人ひとりの個性を発揮しながらリーダーシップを補い合うことを目的とした。
  
 トレーニングの効果については、トレーニング前と後に参加者に対してインタビューを実施し、語りの中に表出した言葉や表現の変化から意識の変化を抽出、現地で働くワーカーたちと共同で作成したエンパワーメント指標と照合し、トレーニングがエンパワーメントに対して与えた影響について考察した。
 さらに、参加者3日間のトレーニングにおけるチームの様子をビデオ撮影し、チームの話し合いにおける発話者や発話の方向からチームの関係性の変化についても観察、チームのエンパワーメントにも目を向けた。
 現場で参加者とともに働く日本人ワーカーからトレーニング前と後の参加者の変化を聞き、客観的なデータとして取り入れた。
 
 トレーニングの前と後に収集した参加者の語りを注意深く分析すると、1)知識を得た 2)自分は変わった 3)満足している 4)自信を持った等、個人の変化に加えて、5)共通のビジョンを持った 6)情報を共有化する 7)集団で意思決定を行った 8)互いに信頼している 9)新しい計画を立てた等チームのエンパワーメントにも効果が見られた。チームと個人のエンパワーメント過程が相互に影響し合うことはすでに多くの研究で明らかにされており、今回実施したトレーニングプログラムも、チームのエンパワーメントに働きかけることで個々のエンパワーメントにも影響を及ぼしたと考えられる。
 
 トレーニング中の各チームの討議の様子を撮影し、映像データから誰が発話し(発話者)、誰を向いて話しているか(発話の方向性)、だれが発言しているか(発言者)等分析した。その結果、初日は発話者、発言者、発話の方向性ともにメンバーが限定されていたが、時間の経過とともに不特定のメンバーによる発話が見られ、またすべてのメンバーが会話に参加するようにチームの状態に変化がみられた。この変化は、日ごとにチーム内で相互理解や相互受容、役割の分化が発生したと考えられ、集団の凝集性が高まったと言えるだろう。
 映像によるチームの変化観察はトレーニング中のみにとどまらず、トレーニング後現場に戻ってからのチームの様子についても分析、考察を加える予定である。
 
 参加者と協働する日本人ワーカーは、トレーニングの後に参加者が変化した点として?発言者の多様化?発言時の他者への気遣いが見られる?発言数の増加等を挙げた。
 一方、参加者本人たちが「自分はエンパワーされた」と認識することはないだろうが、トレーニング後のインタビューで「(自分は)変化した」と実感していることがわかっている。この変化の実感こそ、自己認識や自己肯定感の表れであり、自己認識や自己肯定感はエンパワーメントを達成するため必要な要素である。
 
 ここまで、人びとのエンパワーメントに外部者が関わる方法とその効果について考察した。
エンパワーメントそのものは主体的な行為であるが、従属意識を内面化してしまった当事者からはエンパワーしたいという主体的意思は発生しにくい。そのため、外部者の介入が人びとの主体的意思を促進する役割を担う必要がある。本研究では、東ティモールのコミュニティにおけるニーズの把握や現状分析を踏まえながらトレーニングを設計、エンパワーメントプロセスへの介入を試みた。その結果、個人とチーム両方のエンパワーメントに働きかけることへとつながった。
 これは思いがけない結果であったが、今回のプログラムを当事者のニーズに沿って設計したことが、主体的意志の発生を促進しエンパワーメントにつながったと考えられる。
 介入方法については議論を継続し、改善するべき点は多いが、外部者の関わりのオルタナティブを提示し、ある一定の効果を見出したことは有意義であったと言える。

中間報告


結果・成果

完了報告から
東ティモールのエンパワーメントについて考察するにあたり、東ティモールでエンパワーメントとは逆のディスエンパワーメント(非力化)がおこったプロセスについて検討した。その結果、東ティモールの歴史的過程の中で政治的・社会的リーダーと人びととの関係性が膠着化したことが、人びとのディスエンパワーメントの一因になっていると考え、その関係性を変化させる介入方法について検討するに至った。
そこで現在の東ティモールのコミュニティにおいて、どういうタイプのリーダーが必要とされ、求められているのか、人びとのエンパワーメントを最終目的として開発事業が展開されているコミュニティの関係者を対象にインタビュー調査を実施した。インタビューの語りからキーワードを抽出し、KJ法的に分析しながら現代東ティモールにおけるリーダー像の理解を試みた。
結果、現在の東ティモールでは?リーダー自身のモチベーション?コミュニケーション能力?知識?先導力?サポート力?調整力等の多様な力を兼ね備えたリーダーが求められており、これまでのように単独リーダーの場合、すべての力を一人でカバーすることは困難であろう。そこで、複数のリーダーがそれぞれの個性を活かしながらリーダーシップを発揮することを提案、チームでお互いの個性を活かし、発揮するためのトレーニングプログラムを設計、コミュニティリーダーのチームを対象に実施した。トレーニングの効果を測定するため、トレーニング前と後に参加者に対してインタビューやアンケートを実施、語りにあらわれる意識の変化を抽出、東ティモールのコミュニティ開発に関わるワーカーたちと作成したエンパワーメント指標と照合し人びとのエンパワーメントへの影響について考察した。また、チーム活動の様子をビデオで撮影し、個々の変化やチームの変化とその意味について行動からも省察した。
これらの情報から?一人ひとりの変化にエンパワーメント行動が見られる?チームもエンパワーメントされていることが導かれた。集団の集団成員のエンパワーメント過程は相互に影響し合うことが判明しているが、今回のトレーニングも集団に働きかけたことで、メンバー個々のエンパワーメントにもよい効果を及ぼしたといえる。
また外部者の介入が、エンパワーメント行動に影響を及ばしたと考えられる。

その他/備考


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