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千曲川における河床土砂堆積と水害に関する調査研究



グループ名 国土問題研究会 千曲川土砂堆積・水害調査団
代表者氏名 中沢 勇 さん
URL
助成金額 50万円

研究の概要

完了報告から
千曲川では同じ洪水流量でも最近の洪水ほど水位が高くなるなど,水害ポテンシャルが上昇している。本調査研究はその原因とメカニズムを解明し水害対策に寄与しようとするものである。調査は本年10月完了の予定であるが,現段階における主原因は,河川改修により氾濫原がなくなったことと一部で川幅が減少したことと考えられる。調査研究は以下の3つの観点から推進しようとしている。第1は,西大滝ダムやその他の人工構造物が河床変動と水位上昇にどのような影響を与えているかということ,第2に,盆地部と狭窄部が交互に配置された千曲川の特徴的な地形が洪水流下にどのような影響を与えているかということ,そして第3に,千曲川流域はフォッサマグナ地域や火山地域を含み,地殻変動のはげしい地域であるがそれが水害特性にどのような影響を与えているかということである。 第1の観点からの調査成果としては,県に河川管理が委託されている指定区間(西大滝ダムを含む千曲川最下流部の22kmの区間)では,河床高さは大洪水により低下し,洪水がない年は上昇するという変動を繰り返しており,既往最高河床高と最低との間に数mの差があることが示された。ただダム設置後20年間ほどのダム堆砂にともなう河床変動が大きかったと考えられるが当時の河床高さに関する資料がまだ得られていない。また,西大滝ダムの高さは15m以上あり,河川法上のダムに相当するにもかかわらず,現実には河川法44条の規定(従前の機能維持の義務づけ)の適用を免れているのではないかという問題が提起された。 第2の観点,千曲川の巨視的な地形特性から千曲川の洪水流下特性をみてみると,盆地部が洪水ピーク流量の減衰に大きな役割を果たしていること,しかし,同じ洪水流量でも最近水位は高くなっていることが洪水の水位流量データから示された。また高水敷河道における土砂堆積が顕著であることが懸念されたが,飯山盆地内では低水路河道での河床低下が著しく河道横断面積が土砂堆積により減少したとは言えないことがわかった。ただし,飯山盆地上流部の綱切橋?中央橋あたりで土砂堆積が顕著であり,これは洪水時に盆地部河道がダム湖のような挙動をするためであると言える。このような現象が生じるメカニズムとその上流への影響についてはさらに検討をつめたい。また,飯山盆地の高水敷で堆積土層の剥ぎ取りサンプリングを実施したが,その結果が過去の洪水履歴と明瞭に対比できることがわかった。 第3の観点からの調査としては,第4紀更新世?完新世における立ヶ花狭窄部周辺の丘陵部の隆起あるいは延徳低地の沈降は100年あたり100mm程度であり,人工的改修にともなうあるいは自然の土砂堆積による河床変動に比べて無視しうる量であることが示された。また,河道狭窄部に生じる「自然の堰」や崩壊の場所は褶曲軸や断層が千曲川を横断する個所と一致しており,それらの成因には地盤変動が関わっていることを示した。このような特性は,立ヶ花狭窄部河道で顕著であり,市川狭窄部では支川からの土石流供給も関連がありそうである。「自然の堰」がどれほど洪水流下を阻害しているかについてはさらに検討を要する。

中間報告

中間報告から
飯山盆地・長野盆地では千曲川の河床が上がっており,また洪水時の流量が同じでも水位は高くなってきており,水害のポテンシャルが上昇している。本調査研究はその原因とメカニズムを3つの観点から解明しようとするものである。すなわち,?千曲川の流域特性から,?盆地と狭窄部が交互に現れる河道地形特性から,?下流の西大滝ダムの影響から,である。以下に,現在までに判明したことをごくかいつまんで述べる。 西大滝ダムによる堆砂現象により戸狩狭窄部河道では河床がダム建設以前よりおよそ2m上昇していると見なされる。さらに,ダム堤体によりダム地点における洪水の疎通が妨げられ,そこでの水位が高められる。これらの原因で,洪水時における戸狩狭窄部河道での水位はダム建設以前より2m前後上昇していると見なされる。これにより洪水時には飯山盆地の水位は高くなり,盆地全体がダム湖のようになり,そのため,高水敷に浮流砂が堆積する。とくに中央橋下流部の河川幅が急拡しているあたりで(そこは飯山盆地における「河川の節」と見なされる),水裏にあたるところではとりわけ堆積が進んでいるようであり,堆積量は大きなところでは10年間で1mに達することが確かめられた。  つぎに,長野盆地の洪水時水位が上がっていることの主原因については,上記「河川の節」における堆積進行によることと,さらに綱切橋・古牧橋の間で昭和58年災害後堤防建設により河道が人工的に狭窄化されたことと考えられる。さらに,立ヶ花狭窄部河道での土砂堆積の影響についても検討する必要がある。

結果・成果

完了報告から、調査研究・研修の成果
調査研究・研修の経過   ・2007年5月19日 調査団会議(国土研事務局) 調査の進展状況,5月末予定の現地調査の方法と内容等議論。 ・ 2007/5/27?5/31 現地調査(飯山盆地・市川狭窄部の河床変動に関する観測とヒヤリング) 高水敷堆積状況についてピット掘削およびスライスサンプリングでサンプリング(飯山右岸側)。地元住民の方々に集まっていただいてヒヤリング(5回) ・ 2007/7/24 調査団会議(国土研事務局) 現地調査の結果のまとめ,調査の進展状況,調査報告の分担 ・ 2007/11/04 調査団会議(国土研事務局) 河道平面形状の経年変化,立ヶ花狭窄部における地盤変動に伴う河道の鉛直方向変化,高水敷土砂堆積特性,指定区間の河床変動特性 ・ 2007/12/1?3 現地調査(浅川ダム問題講演,飯山盆地河床変動サンプリングとヒヤリング) 支川浅川におけるダム問題講演,飯山左岸側土砂堆積サンプリング,湯滝でヒヤリング ・ 2007/3/13 調査団会議(国土研事務局) 報告書原案持ち寄り,自然の滝の発生原因,狭窄部の地盤変動特性,スライスサンプリング結果とその解析,盆地と狭窄部地形の洪水流出特性,ダム上流部の河床変動特性,西大滝ダムの河川法上の位置づけ,ダムの設置高さ,流域の土砂流出止め工事の状況 調査研究・研修の成果  千曲川では同じ洪水流量でも最近の洪水ほど水位が高くなるなど,水害ポテンシャルが上昇している。本調査研究はその原因とメカニズムを解明し水害対策に寄与しようとするものである。 本調査では第1に,西大滝ダムやその他の人工構造物ひいては河川改修が河床変動と水位上昇にどれほど影響を与えているかについて検討した。県に河川管理が委託されている指定区間(西大滝ダムを含む千曲川最下流部の22kmの区間)では,河床高さは大洪水により低下し,洪水がない年は上昇するという変動を繰り返しており,既往最高河床高と最低との間に数mの差があることが示された。ただダム設置当初20年間ほどのダムによる土砂堆積が大きかったと考えられるが当時の河床高さに関する資料がまだ得られていない。また,西大滝ダムの高さは15m以上あり,河川法上のダムに相当するにもかかわらず,現実には河川法44条の規定(河川の従前の機能維持に関する義務づけ)の適用を免れているのではないかという問題が提起された。 第2に,千曲川の地形を巨視的に把握した立場から千曲川の洪水流下特性をみてみると,盆地部が洪水ピーク流量の減衰に大きな役割を果たしていること,しかし,同じ洪水流量でも最近水位は高くなっていることが洪水の水位流量データから示された。また,千曲川下流部では高水敷河道における土砂堆積が顕著であることが懸念されたが,飯山盆地内では低水路河道での河床低下が著しく河道横断面積が土砂堆積により減少したとは言えないことがわかった。ただし,飯山盆地上流部の綱切橋?中央橋あたりで土砂堆積が顕著であり,これは洪水時に盆地部河道がダム湖のような挙動をするためであると言える。このような現象が生じるメカニズムにダムが関与しているかどうかについては検討中である。また,飯山盆地の高水敷で堆積土層の剥ぎ取りサンプリングを実施したが,その結果が過去の洪水履歴と明瞭に対比できることがわかった。 そして第3に,千曲川流域はフォッサマグナ地域や火山地域を含み,地殻変動のはげしい地域であるがそれが水害特性にどのような影響を与えているかということである。この観点からの調査としては,第4紀更新世?完新世における立ヶ花狭窄部周辺の丘陵部の隆起あるいは延徳低地の沈降は100年あたり100mm程度であり,人工的改修にともなうあるいは自然の土砂堆積による河床変動に比べて無視しうる量であることが示された。また,河道狭窄部に生じる「自然の堰」や崩壊の場所は褶曲軸や断層が千曲川を横断する個所と一致しており,それらの成因には地盤変動が関わっていることを示した。このような特性は,立ヶ花狭窄部河道で顕著であり,市川狭窄部では支川からの土石流供給も関連がありそうである。「自然の堰」がどれほど洪水流下を阻害しているかについてはさらに検討を要する。

その他/備考

今後の展望
・ 本調査研究は作業量も多いしテーマも大きいので,完了は2008年10月の予定であり,調査研究は現在進行中である。 ・ 水害ポテンシャルの増大の第一の原因は,河川改修により洪水流量の一部が氾濫停滞する内水地域が激減したこと,また築堤が進行して河川幅が事実上減少したことと考えられる。狭窄部における「自然の堰」が洪水流の水位押し上げにどれほど影響しているかについては今からの検討課題である。当初河床上昇を主要な原因と考えていたが,飯山盆地では河床はむしろ低下傾向と言える。長野盆地における河床変動については,今からの検討課題である。砂州が狭窄部に進入したときに狭窄部とその上流の盆地の洪水位が上がる可能性についても検討する必要がある。 ・ 西大滝ダム建設直後の1940年?1960年頃にダム堆砂の影響が大きかったのではないかと考えられるがその頃の河床高さに関する資料が得られていない。 ・ 高水敷で堆積地盤掘削と堆積土層の剥ぎ取りサンプリングを行うなどの調査活動に関して地元の方々に参加・協力をお願いするつもりである。  

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