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これまでの助成研究・研修

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水俣市の廃棄物最終処分場建設予定地周辺の水環境に関する調査研究――建設反対のための科学的データの収集と分析



グループ名 水俣病センター相思社
代表者氏名 遠藤 邦夫 さん
URL
助成金額 50万円

2006年6月1日 鹿谷川・湯出川で水質分析のための採水

2006年6日25日 産廃阻止!水俣市民総決起大会

2006年7月の豪雨で崩れた湯出川沿い斜面

研究の概要


中間報告

中間報告から
調査研究・研修の概況  水俣市の水源である湯出川の上流に、民間の廃棄物処理業者により204万?という民間施設としては日本最大規模の管理型産業廃棄物最終処分場の建設が計画され、現在、熊本県の条例による環境影響評価の準備書手続きが進行中であると業者は述べている。  予定地の真下に位置する大森地区には20数箇所の湧水があり、地区住民の飲み水となっているほか、7キロ下流には市内の上水道の取水口がある。 今年2月の水俣市長選挙で処分場建設反対の市長が当選したことにより、住民の産廃処分場建設反対の意思は明確に示された。4月に市役所に産廃対策室が設けられ、6月末には「産廃反対!水俣市民会議」が市内52団体の参加のもと結成され、全市をあげての反対体制が整った。住民の産廃反対のアピールに加え、水俣病公式確認50年の年に水俣への関心が高まったことにより、水俣の産廃処分場計画は全国的にも認知されるようになってきた。7月には、業者がすでに買収を終えていたとされる予定地内に、国有地が存在することが明らかになり、水俣市に払い下げを受ける方法が模索されている。  業者は昨年11月には2006年度中に準備書を提出すると述べていたが、その後「8月までに」「夏じゅうに」と二転三転している。住民にとっては対応を進める準備期間ができたともいえるが、一方で、業者の動きが見えないことで市民の関心が薄まることが懸念される。  私たちは、市民の立場から、処分場建設がもたらす水環境への影響を正しく予測するため、産廃処分場予定地下流の湯出川・鹿谷川の河川水の水質調査を行った。6月に鹿谷川および湯出川下流の2ヶ所で採水し、株式会社ニチゴー九州に38項目の分析を依頼した。結果は、予想通りではあるが、おおむね国の環境基準を大きく下回り、鹿谷川、湯出川とも非常に良好な環境であることが数値的に証明された。  7月には「水俣に産廃はいらない!みんなの会」との共催で、久留米大学医学部教授の河内俊英さんを講師に招き「市民による環境調査の考え方と方法?久留米市の処分場反対運動から学ぶ」と題して講演会を行い、久留米市の住民による環境調査の事例を学んだ。これらの成果は、市民団体の会合などで配布したほか、相思社の機関紙「ごんずい」95号(7月発行、約3,000部)にて市民の一部や全国の会員に報告した。  高木基金助成金を受けての調査活動のうち主なものは前期で終了した。今後は市民団体や水俣市の産廃対策室および地元の専門家と協力し、引き続き学習会活動や可能な調査を行い、それらの成果も含めて、アセスメント準備書への住民意見書に活用するほか、漫画等の分かりやすいツールにして市民に伝える。また、年度末または適切な時期に報告会を開く予定である。

結果・成果

完了報告から
調査研究・研修結果の概要  2006年6月1日、排出水を放流する鹿谷川、および下流の湯出川で河川水の採水(参加者7名)を行い、(株)ニチゴー九州に分析を依頼した。目的は現状で汚染がないことを確認することであったが、当然ながら、湯出川・鹿谷川とも水質に問題なく、環境基準のAランクを満たす結果であった。また、カドミウム、シアン、水銀等の重金属や、PCB ・トリクロロエチレン等も基準値を大きく下回るか、検出されなかった。  7月に久留米大学助教授の河内俊英さんの講演会を行い、久留米での取り組みから市民調査のあり方について学んだ。11月に行った地質についての現地学習会では、水俣高校の長峰智先生の案内で、現地の特徴的な地質の状況を歩きながら学習した。板状節理の発達した安山岩からなる予定地の台地は、透水性が高く、豊富な地下水をはぐくみ、湧水の恵みをもたらしてくれることが分かった。  研究の成果は機関紙「ごんずい」上で逐次報告したほか、報告書にまとめ、市民に配布した。成果の一部は分かりやすく漫画にして配布し好評であった。それとともに、2007年2月12日、水俣病センター相思社にて成果報告会を開催した。  2月22日より環境影響評価準備書が縦覧となっている。調査を通して得た知識が、地下水・湧水や排水処理・地質等の項目において、事業者側の調査の不備や矛盾点を見つけ出すことに役立った。3月11日には準備書に関する事業者説明会が開かれ、特に湧水をめぐって事業者側と住民が激しく対立した。私たちは事業者の調査の不備を追及し、湧水の再調査・ボーリングコア・柱状図の公開と、説明会の再開催を約束させた。4月9日に湧水調査を行い、5月13日にやり直しの説明会を開催することになっている。私たちは、そこでも引き続き事業者の環境影響評価の問題点を厳しく追及していきたい。  2007年度は、2006年度の成果を踏まえて、詳細な地質踏査を行い、基本的な地層の重なりを把握し、湧水箇所・断層・崩落危険箇所等の存在を明らかにする予定である。  その他、産廃反対の市民団体・市の産廃対策室などと協力して湧水量調査・交通量・騒音振動調査を行う予定である。 また、市民からは、産廃ができるとどういうことが起こるのか、もっと平易に分かりやすく伝えてほしいという要望もあった。市民向けに広く分かりやすい広報活動を、市や各市民団体と協力しながら行いたい。 調査研究・研修の経過  2006年6月1日 鹿谷川・湯出川で水質分析のための採水(参加者7名) 2006年6月16日 (株)ニチゴー九州より分析結果が届く 2006年7月1日 河内俊英氏講演会「市民による環境調査の考え方と方法?久留米市の処分場反対運動から学ぶ」を開催(参加者30名) 2006年8月12日 熊本県環境センターの講座で水質の機器分析の実習 2006年11月3日 現地地質学習会「ながみね先生と歩く、楽しい地質学講座」(参加者20名) 2007年2月12日 水俣病センター相思社にて成果報告会を開催(参加者15名) 2007年2月22日 環境影響評価準備書の縦覧開始 2007年3月11日 事業者による環境影響評価準備書説明会開催(事業者が質問に答えられず、5月に再度説明会を開催することになった) 調査研究・研修の成果 水質調査  6月に排出水を放流する鹿谷川、および下流の湯出川で河川水の採水(参加者7名)を行い、(株)ニチゴー九州に依頼して分析を行った。目的は現状で汚染がないことを確認することであったが、当然ながら、湯出川・鹿谷川とも水質に問題なく、環境基準のAランクを満たす結果であった。また、カドミウム、シアン、水銀等の重金属や、PCB ・トリクロロエチレン等も基準値を大きく下回るか、検出されなかった。 学習活動  7月、久留米大学助教授の河内俊英さんの講演会では久留米での取り組みから、専門家と市民が協力しての調査のあり方について学んだ。11月に行った地質についての現地学習会では、水俣高校の長峰智先生の案内で、現地の特徴的な地質の状況を歩きながら学習した。板状節理の発達した安山岩からなる予定地の台地は、透水性が高く、豊富な地下水をはぐくみ、湧水の恵みをもたらしてくれることが分かった。普段気にも止めずにいた地形が、実は地質学的には貴重なものであることも分かった。 報告会の開催  研究の成果は機関紙「ごんずい」上で逐次報告したほか、報告書にまとめ、市民に配布した。成果の一部は分かりやすく漫画にして配布し好評であった。それとともに、2007年2月12日、水俣病センター相思社にて成果報告会を開催した。水俣の命と水を守る会、水俣に産廃はいらない!みんなの会など市民団体の事務局、みなまた茶組合の生産者、水俣市産廃対策課、マスコミなど20人が参加した。参加人数は少なかったものの、今までそれぞれの方面で運動に関わってきた主要なメンバーが集まり、ざっくばらんに意見を交換した。 環境影響評価準備書をめぐっての闘い  2月22日より環境影響評価準備書が縦覧となっている。調査を通して得た知識が、地下水・湧水や排水処理・地質等の項目において、事業者側の調査の不備や矛盾点を見つけ出すことに役立った。  3月11日、環境影響評価準備書に関する事業者説明会が開かれた。この説明会では特に、湧水が争点となった。事業者側は準備書の中で、恣意的でずさんな調査をもとに、豊富な湧水の存在を頑なに否定した。私たちは、事業者の調査の不備を追及し、湧水の再調査・ボーリングコア・柱状図の公開と、説明会の再開催を約束させた。

その他/備考

対外的な発表実績
2006年5月11日 「水俣の命と水を守る市民の会」の代表、熊本県庁を訪れ、住民が十分に発言できる説明会を開催するよう事業者を指導することや、県による建設予定地一帯の住民聞き取り調査実施などを求める 2006年6月27日 「産廃阻止!水俣市民会議」の代表が上京。IWD東京支社、東亜道路工業に建設計画の白紙撤回を、環境省、県選出議員に計画への積極的関与を要求 2006年8月30日 水俣の命と水を守る市民の会の代表、熊本県庁を訪れ計画中止を求める要望書を潮谷知事あてに提出 2006年9月27日 「産廃阻止!水俣市民会議」の代表が上京。 環境省・県選出国会議員に、計画撤回に向けた積極的な関与を要望。 (株)IWD東京支社、東亜道路工業を訪れ、計画の白紙撤回を要求 2007年1月 水質調査に関して西日本新聞の取材を受ける(2007日付朝刊掲載) 2007年2月12日 高木基金助成事業成果報告会を相思社で開催 2007年2月21日 環境影響評価準備書の縦覧が始まる 2007年3月11日 環境影響評価準備書についての事業者説明会開催。現地住民・下田保冨さんと相思社・遠藤邦夫が水環境について質問。回答に窮した事業者は再度調査して説明会を開くことを約束 2007年3月12日 水俣市産廃対策室と市民有志、熊本県廃棄物政策課と環境政策課(アセス担当)の担当者と面会。縦覧期間の延長と、次回説明会への立ち会い、事業者に対して準備書を精査しきちんと説明するように指導するよう求める。その後、準備書縦覧期間は5月25日まで延長、説明会は5月13日に開催と決定 今後の展望 環境影響評価準備書への対応への対応  3月1日に行われた環境影響評価準備書の事業者説明会で、住民の厳しい追求の結果、調査やり直しと説明会の再度開催を約束した。4月9日に湧水調査を行い、5月13日にやり直しの説明会を開催することになっている。私たちは、そこでも引き続き事業者の環境影響評価の問題点を厳しく追及していきたい。 広報活動  産廃問題については、機関紙の「ごんずい」で重点的に取り上げているが、産廃ができるとどういうことが起こるのか、もっと平易に分かりやすく伝えてほしいという要望もあった。市民向けに広く分かりやすい広報活動を、市や各市民団体と協力しながら行いたい。 調査の継続  2007年度は、2006年度の成果を踏まえて、詳細な地質踏査を行い、基本的な地層の重なりを把握し、湧水箇所・断層・崩落危険箇所等の存在を明らかにする予定である。産廃処分場をめぐる最大の争点は湧水と地質である。事業者は、予定地周辺に豊富な湧水があることを頑なに否定している。ボーリング調査の結果から、溶岩は風化しており透水性が低いとしているが、地質調査の手法には問題がある。処分場予定地内には断層が走っており、それが活断層である可能性があり、他の活断層が存在する可能性もある。風化の度合いによって施設が不等沈下する可能性も大きくなる。そのような危険性を、科学的に裏付けたい。  その他、産廃反対の市民団体・市の産廃対策室などと協力して湧水量調査・交通量・騒音振動調査を行う予定である。

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