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これまでの助成研究・研修

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児童生徒疾病調査をもとに神奈川県全域の大気汚染を検証する



グループ名
代表者氏名 西岡 政子 さん
URL
助成金額 30万円

ごみシンポの神奈川新聞記事

研究の概要


中間報告

中間報告から
調査研究・研修の概況 【1】ごみ焼却場とぜん息との相関関係を複数の事例から明らかにする。  (1)横浜市、川崎市、横須賀市、鎌倉市の各市立小中学校の学校保健(児童・生徒疾病等傾向)実態調査データを入手し、平成12年〜17年度、6年間の累積を分析し、9項目の元データを作成した。  疾病項目:ぜん息、心臓疾患、腎臓疾患、てんかん、アレルギー性鼻炎、その他の耳鼻咽喉疾患、アレルギー性結膜炎、その他の眼疾患、アレルギー性皮膚疾患  基礎データを入力後、迅速かつ精度の高い分析やマップ作成技術を習得するために、3回にわたりExcel等の技術習得の個人研修を受けた。 作成した横浜市のデータ添付します‐1  (確認事項)  横浜市栄区を事例として、休止していた焼却場再開によるぜん息被患率の変化を検証したところ、稼動後半月で周辺小学校4校で患者数が1〜9人の増加を確認した。 横浜市小学校ぜん息上位校表 を添付します‐2  (2)川崎市立小学校のぜん息被患率ワースト1の小学校を中心に王禅寺焼却工場周辺の現地調査を実施した。(7月26日 参加者数4人) 現地見学写真添付します‐3  (確認事項)  川崎市立小学校(114校)中で平成16年度ワースト1の東生田小学校の原因として、位置的に見て王禅寺焼却場による影響を否定できないことを実感した。更に周辺環境の詳細な調査の必要性を感じたため、再視察を計画中。調査に加わる地元の団体、個人を募集している。  (3)横浜の事例を発表  プラステイック焼却はNO!世田谷区民集会(4月1日)  主催:生活クラブ運動グループ世田谷地域協議会 他  ごみ焼却を止めるとぜんそくが減る!?(5月27日)  主催:東村山のごみを考える会  燃やしていいのプラステイック!!(6月27日)  主催:東京マイコープ  第11回 東京とことん討論会(8月18日)  主催:東京23区とことん討論会実行委員会 分科会アドバイザー資料添付します‐4  (確認事項)  廃プラステイックを燃やしている横浜・川崎に比べ、東京都の小学校ぜん息被患率平均値はかなり低い。(平成16年度 横浜市9.1%、川崎市8.4%、東京都5.7%)       東京、神奈川ぜん息被患率マップ添付します‐5 【2】自動車排気ガスとぜん息との相関関係を明らかにする事例に取組む。  昨年度までは神奈川県下各学校の健康調査電子データが、県教委より無償で提供されたが、今年度からは殆どの市町村に情報開示手続きをしなければ入手できなくなった。廃棄物焼却場や化学工場など、大気汚染の元凶と思われる汚染源が少なく、道路公害だけが予測できるローカルのデータ入手が困難のため苦慮している。引続き努力することで目的に適合した自治体をみつけ、現地調査を実施するところまでは実現したい。 (なお残された課題)  ぜん息被患率が恒常的に高順位にあった横浜市瀬谷区の二つ橋小学校と上川井小学校の過去数年の変動が大きい。周辺環境に何らかの変化が起きていないか、現地調査を実施して調べたい。  入手すみの平塚市、逗子市のデータの分析。 調査研究・研修の進捗状況・計画の変更などについての特記事項 ☆全県下学校ごとの学校保健(児童・生徒疾病等傾向)実態調査票の入手が困難になったため、全自治体の基礎データの作成を断念せざるを得なくなったのですが、以下の事実から事態を誘引したのは、実は私だったかもしれません。  神奈川県教委に聞いたところによると、横浜の場合、各学校の集計作業を市側で行うというので、他の市町村も今年度からは県に集計結果のみ報告する事にしたということでした。  ぜん息データが環境を検証する指標になってしまうからでは? 横浜市金沢区の臨海部に最大級の産廃焼却場の建設計画があり現在、アセス中です。 計画に反対する住民達は、反対署名30,000筆、アセス意見書6,300通、審査会での意見陳述も10人がしました。  運動がここまで盛り上がるきっかけを作ったのが、私が提供したぜん息被患率データでした。彼らは、平成10年から金沢区の小学校はぜん息ワースト1であることをそれまでは知らなかったばかりか、海が見え緑の多い金沢区は環境がよいと信じていたのです。  アセス審査会は、真実を知った区民の訴えを無視できず環境サーベーランスを持出して否定的な見解を述べました。市教委は、金沢区の小中学校だけぜん息発作を起こしていた生徒数を再調査して、金沢区の被患率は低いと言い出しました。  計画地の付近には1,200トンの一般廃棄物焼却場や産廃焼却場、下水汚泥焼却場の他に工業団地など、大気汚染源がひしめいているのです。  産廃焼却場の建設事業者は、地元説明会でうっかり共用後、現況より大気汚染が増して住民の健康が損なわれるようならば、即刻操業を止めると明言してしまったのです。  どうやら横浜市にとって、教育委員会の健康調査は不利な資料のようです。 ☆子どものぜん息被患率がごみ焼却場の停止で、激減した横浜市の事例は、特に首都圏で注目を集めており、集会で発表する機会が多くありました。これには東京都が以前は燃やさずに埋立ていた廃プラを、焼却する方向に転換しつつある事が影響しているようです。 東京都のHPから、各区市ごとの被患率の入手が可能なことがわかりました。  廃プラを焼却していない東京都と川崎や横浜市のように混合収集、混合焼却の多い神奈川県との比較を小学校のぜん息被患率を元に試みることにしました。

結果・成果

完了報告から
調査研究・研修結果の概要  周辺を3つのごみ焼却場に囲まれていた横浜市栄区の小学校ぜん息被患率は、2つの工場が停止した結果、18区の中でワースト1から、最も患者が少ない18位へ激烈な変化をとげました。  考えてみれば、焼却場さえなければ極めて環境が良い町ですから、1500トンと900トンの工場から出ていた膨大な有害ガスが全くなくなれば、喘息の子どもが発作を起こさなくなることは想像に難くありません。しかし、実のところ私にも信じられないほどの顕著な変化です。  神奈川県全体の順位においても、横浜市は川崎市や鎌倉市にその座を譲って、前年度より1%も被患率をさげました。例年悪化の一途だったことがうそのようです。  30年間ごみ問題に関わってくる中で、脱焼却の運動が正しかった事が証明されたと言えるのではないでしょうか。  しかし、横浜市金沢区の臨海部に計画されている産廃焼却場(横浜金沢シンシアRCセンター)は撤退させることはできず、このほど事業認可が下りてしまいました。  反対運動が起こった当初、市民団体に私が提供したぜん息データは、彼らを驚かせそして怒らせました。01年に横浜市の金沢工場(1200トン)が竣工以来、小学校のぜん息は1%ずつ悪化し、過去8年間のワースト1は金沢区であることがわかったからです。アセス方法書では30%がぜん息等の健康に関する意見でした。アセスにおける意見陳述は8人中7人が反対意見。全区に配布したチラシは3回、計画地直近には10回以上、アセスに対する意見書は、ごみ問題では市始まって以来の数が寄せられるなど、1年間の抵抗運動は熾烈を極めました。  07年度、被患率を年々更新してきた金沢区が3%も下がって9位になっています。何らかの操作が行なわれたか検証する必要があります。  激減した学校について周辺環境との精査で検証が十分可能と思われます。  今後の活動としては、焼却場建設や廃プラ焼却をめざしている自治体の市民団体に、栄区の事例をデータを含めて提供し、同様の事例をもとめて更に活動を続けたいと思います。 調査研究・研修の経過 4月1日 世田谷区民集会「プラステイック焼却はNO! 」 報告 5月22日 05年度横浜市立小中学校健康調査データをペーパーで入手(70枚) 5月27日 東村山市民フォーラム「ごみ焼却を止めるとぜんそくが減る!?」報告 6月22日 Excel技術研修 6月27日 地球温暖化防止/デイーゼル排ガスと健康 市民シンポ 参加 6月30日 生協・東京マイコープ学習会「燃やしていいのプラステイック!!」 報告 8月18日 Excel技術研修 6月中 川崎市王禅寺焼却場周辺の現地調査 〃   第11回 東京とことん討論会 7月中 分科会アドバイザー06年度川崎市立小中高校の基礎データの入力および分析作業 9月 06年度横須賀市立・鎌倉市立小中学校データ作成 10月7日 06年度横浜市立小中学校の基礎データの入力および分析作業 11月27日 05年度東京都データを分析。東京、神奈川ぜん息被患率マップ作成 12月15日 大田区民集会「横浜で工場が止まったらぜん息の子どもが減った?」報告  4月21日 三浦市現地調査  横浜市瀬谷区・旭区現地調査  06年度東京都ぜん息被患率データ入手、分析・マップ作成  市民オンブズマン総会で栄工場住民訴訟経緯と小児ぜん息激減について報告 調査研究・研修の成果 1.ごみ焼却場の稼動や停止により、周辺の小中学校のぜん息被患率が、大きく変動することが確認できました。  ぜん息誘引するといわれる工場や交通量の多い幹線道路が殆ど無い栄区で、街を取り囲むように立地する3つの焼却場のうち、巨大な2つが停止すれば、ぜん息の発作を起こす児童が激減するのは自然なことではないでしょうか。  今回の調査では、焼却量が少なくても管理体制が整わない焼却場の周辺の子どもに著しい影響が出ていることもはっきりしました。  成人が1日に呼吸する空気の量は15?20キログラムだそうです。(アトピッコハウスHP・NHK“ためしてガッテン“) 当然、子どもほど大気汚染の影響を強く受けることが推測されます。  処理能力150トンの今泉クリーンセンターが修理で止まった2年間には、周辺の風下の小学校のぜん息児童は揃って激減しました。市内354校中で3年間ワースト1だった約5キロ風下にある南舞岡小学校は7%も下がりました。ところが再開したとたん、再びぜん息児童がふえました。  今泉クリーンセンターの北1kmにある桂台小は、試運転から半月で9人、南舞岡小、公田小、今泉小は1〜3人ふえたのです。  昨年(08年)1月、栄工場(1500トン)に続いて2つ目の港南工場(900トン)が停止しました。  すると08年度の被患率は周辺の小学校では1校を除き全校で激減。市内で最もぜん息の少ない街になりました。3つの焼却場が操業をしていた頃は栄区が18区中でワースト1だったのです。  県下の順位でも増加の一途だった横浜市は減少に転じています。2工場の停止効果と思われます。 2.国内最大級の産廃焼却場建設反対運動にぜん息データが役立てられました。  金沢区のぜん息被患率は過去8年間ワースト1です。栄区同様に環境の良い街と思っていた金沢区民を激烈な反対運動に駆立てたのは、これ以上の汚染源などとんでもないということでした。 3.今まで埋立てていた廃プラを燃やす方向に転換した東京都の市民運動団体に情報提供しました。  東京都の実質プラステック混入率は6%です。今後廃プラ焼却に踏みきった場合は横浜や川崎のようにぜん息児童の多発を招くでしょう。

その他/備考

対外的な発表実績 
<行政・公的機関などへの政策提言>  ・第5次横浜市産業廃棄物処理指導計画に対する緊急要望書    06年 3月19日  ・平成19年度予算要望書                   06年 8月31日  ・横浜市次期中期計画(素案)に対する意見書         06年10月6日  ・横浜金沢シンシアRCセンター準備書意見書          06年 2月27日  ・横浜金沢シンシアRCセンター評価書意見           06年 7月3日  ・横浜金沢シンシアRCセンター利害対象者意見書        06年12月28日  ・環境カウンセラー活動報告書                07年 2月8日 <雑誌等への寄稿> ・食べもの通信07年2月号 脱ごみ焼却のすすめ ?焼却場を2つ廃止した横浜市?  <シンポジウムでの発表>  ・世田谷区民集会「プラステイック焼却はNO! 」             06年4月1日 ・秋水園集会「横浜市の巨大ごみ焼却場を2つとめた?小中学校ぜん息調査」06年5月27日 ・東京マイコープ学習会「燃やしていいのプラステイック!!」       06年6月27日 ・第11回 東京とことん討論会                     06年8月18日 ・大田区民集会「横浜で工場が止まったらぜん息の子どもが減った?」   06年10月7日 ・かながわ市民オンブズマン総会「栄区の小中学生のぜん息が激減したのは」07年4月21日 今後の展望 1.ぜん息とごみ焼却場 ☆焼却場の排ガス中のVOCを測定する。  07年度高木基金の助成団体になった「化学物質による大気汚染を考える会」に所属しており、西岡宅でVOCを測定することで、今泉クリーンセンター(鎌倉市の焼却場)からの大気汚染の実態をしらべる。西岡宅はセンターの北1.3キロの位置にある。既存の2焼却場は廃止されたため他に汚染源はない。5月?8月に予定。 ☆他都市の事例を検証する  横浜市栄区で検証した焼却場と周辺に住む児童生徒のぜん息の相関関係を他の事例でも証明する必要があり、2度目の現地調査などにより精査する予定。  候補地? 川崎市王禅寺焼却場周辺  焼却場以外には汚染源が少ない住宅地であり、横浜の栄区と類似した環境にあるにもかかわらず、周辺の多摩区、麻生区のぜん息児童数が年々増加。1回目の現地調査では風下1.5キロメートルの生田地域で異臭を体感しました。一見したところ、緑が多く好環境。近くには川崎市の06年度ワースト1の東生田小学校がある。  新焼却場の竣工と同時に古い工場での焼却停止のため、現在もごみを燃やし続けており、ぜん息データによる検証が容易でない。  川崎市の市議の方の協力も得て、焼却場以外の汚染源の有無を5月中に再調査の予定。  候補地? 横浜市旭区川井地域  川井地域と隣接する若葉台の小学校は市内ランクで常に上位であり、特に上川井小学校は悪化する一方。周辺は大型工場や産廃焼却場などの立地がある。昨年に続き再調査。 2.車の排気ガスとぜん息との因果関係  実際にはかなり困難なことが分かった。その理由は幹線道路沿いには工場が立地する事が多く逆に人家は少ないため、ぜん息データが使えなかった。一般的には排気ガスがぜん息の主因と言われるが私には疑問だ。横浜市の事例では交通量の多い地域の小学校のぜん息被患率は必ずしも高くない。同様の意見を東村山市の青木泰氏も指摘している。 3.ぜん息と農薬の関係  06年度の神奈川県ワースト1は三浦市でした。現地調査の結果ではごみ処理との関係は認められませんでした。年間を通じてスイカや大根、キャベツを大量に生産しているため、農薬による影響が疑われます。現地調査や農薬使用状況等を三浦市農協、三浦市や神奈川県担当職員に問合せたところ、各農家では使用状況を記録する義務がありながら報告の義務は無く、種類別の使用量すら把握されていませんでした。昨年11月の現地調査では、キャベツと大根畑の真中にある学校を数多く目撃。ゴルフ場の農薬と刈り草の焼却炉についても同一線上で調べたい。  「化学物質による大気汚染を考える会」によるVOC測定の候補になるよう努力します。 4.報告集会  6月中の実施をめどに日程調整中。  「横浜・ゴミを考える連絡会」、「栄工場のゴミを考える会」の共催で実施し、ぜん息と焼却場の相関関係については西岡が報告。 5.その他  基礎データとなる各自治体の健康調査結果の入手に苦慮しました。  ホームページからメールで依頼した結果、書面による情報公開が必要な都市が多くありました。  生徒数の少ない学校のプラーバシーをたてに、癲癇のみ非開示にする学校もありました。  県下でぜん息被患率の高い学校から順に情報収集し、神奈川県下全域の小中学校ぜん息データをもとに、焼却場や工場、道路公害に迫る予定でしたが、前述したように調査の環境が整わなかった他に、極端に生徒数の少ない学校があり少ない患者数でも高い被患率の自治体があることが分かりました。  例えば清川村は小学校は2校しかなく、宮が瀬小学校は全校で8人のところに2人のぜん息患者がいるだけでどこよりも高い被患率になります。  検証には一定以上の規模である事が必要で、被患率だけでは選べない事がわかりました。  神奈川県全域の大気汚染を検証するためには長期的な調査が必要で、地元で活動する団体の発掘を含め、息長く調査活動を続ける所存です。

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