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インドネシア・エネルギー転換のガバナンス ― 反原発運動から代替エネルギー開発への方針転換



グループ名
代表者氏名 Pratama Yudha Pradheksa さん
URL
助成金額 5,000USD=約50万円

小水力発電を導入する村人たち 中部ジャワ州にて

一般住民による小水力発電のメンテナンス風景

研究の概要

2020年9月の応募書類から
本研究では、インドネシアの中部ジャワ州における反原発運動から代替エネルギーの開発に方針転換した経緯を調査していきます。 2007年のムリア原子力発電所の建設が持ち上がった際に、大規模な反対運動が起きました。イスラム法学者たちは、「原発はハラム(イスラム法に反する)である」との裁定を出し、環境悪化や技術の外国依存などの懸念もあり、別の方法で電気を供給するべきだと唱え、その後、小水力発電が導入されました。 この研究では、代替エネルギーとしての小水力発電技術の開発に専門家だけではなく、一般市民がどのようにかかわったかについて、科学的に明らかにしていきます。エネルギー転換の意思決定プロセスに専門家と一般市民が共に取り組んできたことを確認することは、それが、民主的なモデルであると同時、社会的関係性が強化されきたことを提示することになります。また、宗教と科学の知識がどのようにエネルギー転換をもたらしたのか、そのガバナンスが明らかにした研究はこれまでになく、本研究調査が初めての試みとなります。 調査は、エネルギーシステムの社会技術的な要素(人間、技術、環境を組み合わせたシステム)、市民科学、知識正義を含めた科学技術社会論(STS)研究のフレームワークに、社会科学および文化人類学的な調査方法を組み合わせて、定性的なアプローチを重視して行っていきます。具体的には、イスラム法学者や地元のNGOなどへのインタビュー、観察研究、フィールド調査、文献調査、参加型アクションリサーチ、その他必要に応じて、別の手法も取り入れていきます。フィールド調査では、原子力発電所の建設に反対して小水力発電技術を開発した、中部ジャワ州のある農村を訪問する予定です。 インドネシアは市民科学やエネルギー転換の文献において、また地理的にも、目立たない存在ですが、今回の研究結果は市民科学に関する生産的な議論に利用していけると考えています。 注:新型コロナウィルスの感染状況により、インタビューやワークショップは対面調査から、オンラインによる実施となる可能性もあります。

中間報告


結果・成果

202年1月の報告より
2007年、中部ジャワ州のムリア原発建設計画が持ち上がった際、斬新なファトワ(イスラム法に基づく解釈意見)によって、 インドネシア政府は建設計画の中止を発表しました。本研究では、その後、代替エネルギーの開発に方針転換した経緯や背景を明らかにすることを目的としました。 ムリア原発に対するウラマー(イスラム法学者)たちの反対運動の歴史は長く、 原子力庁の原発を管理運用する能力や専門性に問題があることを指摘するとともに、政府に対しては、エネルギーの供給を原子力ではなく、再生可能エネルギーなどの代替エネルギーを利用するよう助言してきました。同時にキリスト教のグループや環境活動家、学生、地元住民、原子力の専門家、学者、農民、そして反原発運動関係者などと協力しながら、 小水力発電技術の開発を促進してきました。 地元住民は、ムリアの反原発運動で注目されたリスク評価を参考に、小水力発電所についても、地理的条件や経済、環境、安全性とともに、こうした技術を運用できる専門性を備えているかなどの観点からリスクと便益を評価した結果、小水力発電が地域に最も適した技術であると認識し、実際、地域のエネルギーとして選択してきました。 インドネシアは丘陵地や山岳地帯が多いため、河川や滝が豊富にあり、その自然地形が、特に小水力発電の開発に有利で、大きなダムや貯水池を持たない「 流れ込み式 」 であることからも、 持続可能なエネルギーとして注目されてきました。さらに、水の利用は、特に僻地のコミュニティに暮らす農民にとっては、日常的に水とともに暮らし、様々な用途を熟知しているため、エンジニアリングの専門的な知識を持たない地域住民も、 今や地域のエネルギー 問題の重要な利害関係者になっています。本研究の成果は、短編ドキュメンタリー(https://youtu.be/fHObd4OBATU)の製作や政策提言書の作成、ジャーナル投稿などのかたちで発表しました。 この場を借りまして、研究をサポートしてくれたアシスタント、 高木基金の支援者のみなさまに、 多くの感謝を示したいと思います。

その他/備考


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