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原発の犠牲者としてその声を社会に発信すること ― 韓国での「均道(キュンド)一家」のケースを事例に



グループ名
代表者氏名 Kim, Woo-Chang さん
URL
助成金額 4,000USD=約40万円

釜山のイムランビーチから臨む古里原発

釜山のイムランビーチから臨む古里原発

参考:古里原子力発電所の位置(事務局補足)

研究の概要

2020年9月の応募書類から
古里第一原子力発電所は、1977年6月19日に運転を開始した韓国で最初の原発です。文在寅政権は、40年間の運転後、完全に停止することを決定しましたが、依然として韓国国内では24カ所の原発が稼働しており、原発立地周辺住民の間では、不可解な病気が発生しています。 今回、調査対象者となるキュンドさん一家は古里原発から3km以内に住み、家族全員が深刻な病気を抱える典型的な事例だと考え、調査対象にしました。 キュンドさん自身は発達障害を持って生まれ、彼の父は大腸がんで、彼の母は乳がんに罹りました。キュンドさん一家の病気と原発の関係について、因果関係を証明する科学的証拠はほとんどありませんが、 本研究の目的は、 彼らが自分たちの病気をいかにして社会問題化し、 反原発運動を始めたかを分析することです。また、原発所有企業の韓国水力・原子力会社(KHNP)に対する訴訟は韓国で初めてだったことから、その運動がもたらした意味を調べていきます。 この課題に取り組む上で、 「リスクスケープ」という概念(リスク社会に地理的要素を加えた空間イメージで、韓国のLee Sang Hun教授が発案したもの)を用いて、どのように住民が原発を捉え、KHNPが認識するものとは違う、住民サイドのリスクスケープについて調べていきます。キュンドさんは、父親とともにこれまで4回も世界を旅し、自分たちの体の痛みが、単なる個人的に起きた不運な出来事ではないということとともに、反原発を訴えてきました。 この調査研究では、キュンドさん一家が、孤立しがちな通常の住民運動とは一線を画して、病気という個人的な問題を、どのようにして、公共的かつ制度的な問題として提起したか、また、法律や医療分野の専門家の助けを借りて、自分たちが抱いた疑問を一般化してきたかについて注目していきます。

中間報告


結果・成果

2022年1月の報告書より
本調査研究では、 韓国で古里原子力発電所の近隣に住み、ガンや発達障害などの病気を抱えたキュンドさん一家が、原発所有企業の韓国水力・原子力会社(KHNP)に対して訴訟を起こすことによって、自分たちの病気を単なる「 個人的なこと 」 ではなく、社会問題化しようと奔走してきた姿に密着し、彼らが反原発運動を始めたプロセスを分析しました。 また、 原発所有企業に対する訴訟は韓国で初めてだったことから、その運動がもたらした意味を考え、 住民側とKHNP側で異なる原発に対するリスク認識を、「リスクスケープ」という概念(リスク社会に地理的要素を加えた空間イメージで、韓国の Lee Sang Hun教授が発案したもの)を用いて、調べてきました。 キュンドさん一家は古里原発から3km圏内に住み、キュンドさん自身は生まれながらにして発達障害を、父は大腸ガンを、 母は乳ガンを罹うなど、 家族全員が深刻な病気を抱えています。KHNP は、 原発は安全なものだと一方的に言い続けているため、キュンドさん一家が原発と病気に因果関係があると主張するならば、 訴える側の彼らが証明しなければならない状況を作り、メディアも、病気を抱えたキュンドさん一家の闘いを美談に仕立てて報じるだけで、どちらもこの問題を正面から向き合ってきませんでした。 原発は近隣住民にとってはそれ自体リスクのある施設である一方、それを所有する側にとっては、自分たちの生業や権利を維持するためのものであり、今回の訴訟は、同じ場所を巡るリスク認識の違いに問題提起するためのものでもあったと分析しています。 最終的に住民側がKHNPに勝つことはできませんでしたが、多くの人がキュンドさんの後に続こうとし、 原発の危険性について問題提起をしたり健康問題を真剣に考えたりするなど、原発周辺住民に深い影響を与えたと言えます。 今回の調査では、キュンドさん一家以外に、原発賛成・反対含めて、様々な立場の方々に、インタビューをする予定でしたが、非常に敏感な問題であり、かつコロナ禍とい う理由から、受けていただくことができず、キュンドさん一家の声を拾うことが中心となりました。 私はソウル出身で、 原発周辺に住むということの意味や感覚を理解することができていなかったのですが、本調査を通してキ ュ ンドさん一家や古里周辺が抱える問題は一個人やその地域に限ったことではないことを実感できました。住民は今も継続的に原発反対運動を行っていますので、私も引き続き調査を続けていきたいと思います。

その他/備考


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