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沖縄県における肥満と血中の残留性有機汚染物質  perfluoroalkyl substances (PFAS)濃度の関連調査



グループ名
代表者氏名 徳田 安春 さん
URL http://nsleep.com/
助成金額 100万円

名嘉村クリニックの遠隔診療機器で発熱外来診療中の徳田安春さん (主任研究者)

PFOAと中性脂肪に正の関連がみられた。 年齢性別調整後の回帰係 数は21.25(95%信頼限界4.81 〜 37.70:P=0.012)

研究の概要

2021年4月助成申込書より
PFOS、PFOA、PFNAなどのPerfluoroalkyl substances (PFAS)への曝露と肥満、糖尿病、非アルコール性脂肪肝炎の発症との関連性を示す研究はいくつかある。このように健康に有害である可能性が示唆されているPFAS曝露が日本人においてすでに広がっているが、肥満と血中PFAS濃度の関連について日本人成人を対象にした研究はまだない。市民にとって重要な飲料水に含まれる残留性環境汚染物質であり、健康影響を調べることは大切である。すでに病気を発症している人々においてこの物質の関与を調査することで、直ちに曝露を減らすなどの予防対策をとる必要性が判明する。横断研究によって、肥満、糖尿病、非アルコール性脂肪肝炎を有する患者群と非患者群の血液を採血する。肥満、糖尿病、非アルコール性脂肪肝炎に関連する身体所見データや定期検体検査や画像検査のデータも合わせて収集する。血中PFAS濃度は京都大学の共同研究者の施設において測定される予定である。多変量線型回帰モデル分析を行い、PFAS血中濃度と肥満、糖尿病、非アルコール性脂肪肝炎やそれらのバイオマーカーとの関連を解析する。PFAS血中濃度と肥満、糖尿病、非アルコール性脂肪肝炎などの生活習慣病の存在との関連を認めた際には、PFAS曝露を最小限にするための政策介入を行うように自治体へ働きかけを行うエビデンスとして研究結果を活用する。

中間報告

中間報告より
 本研究は、PFAS(パーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物の略)の人体内での血中濃度と肥満等との関連をみる目的で行われています。PFAS は、1940年代頃から使われるようになった化学物質で、水や油をはじく、熱に強い等の特性を持ち、消火剤等に用いられてきています。軍隊の飛行場で使われる泡消化剤にも用いられていることから、沖縄県内の米軍基地でも使われています。PFAS 曝露は健康に有害である可能性が示唆されており、基地内で使用後のPFAS が付近の地下水や河川に流れ、飲水などで地域住民の体内に取り込まれていることが危惧されています。この物質はForever Chemical とも呼ばれているように分解されにくく、体内に長年留まるので、すでにさまざまな健康問題をきたしている可能性があります。PFAS は体内の脂質に類似した構造を持つため、肥満、糖尿病のリスクに関連することが示唆されていますので、今回の研究では、PFAS 血中濃度と肥満、糖尿病、脂肪肝の発症との関連性をみています。先行研究では、肥満、糖尿病、メタボリック症候群等のリスク増加との関連を示していますが、日本における同様の研究はまだありません。沖縄県では広範囲にPFAS の環境汚染が認められており、かつ肥満、糖尿病、メタボリック症候群の発生頻度も多いことから、沖縄県での調査研究が必須と考えました。  2022年2月末までに、採取した血液サンプル数は200検体で、これまで3 回に分けて京都大学へ送付しました。また、オミクロン株の感染拡大のため発熱外来の受診者が多く、診療のなかでのPFAS の説明・同意取得に苦慮している中、サンプル数は300 以上の収集をしたく、クリニック職員にも声掛けをして、さらに100 検体以上の同意取得を目指しています。当院の職員にPFAS 血液検体提供への参加を募るため、同意取得者にクオカード(一人あたり1,000円)の配布をする予定です。職員の採血は、発熱外来の様子をみながら、看護師が採血を行い、血液の分注は検査技師が行う予定です。

結果・成果

2022年8月の完了報告より
 私たちは、血中の残留性有機汚染物質per fluoro alkyl substances(PFAS)濃度と肥満やメタボリック症候群との関連をみる研究を行いました。研究対象の人々は、沖縄県浦添市の医療機関に通院する患者さんと職員の皆さんで、研究に同意した人々に対して採血を実施しました。  研究を行う前に立てた仮説は、PFAS曝露は肥満の関連因子である、ということでした。具体的には、PFAS濃度とBMIや血圧、血糖、HbA1c、中性脂肪、HDLコレステロール、ALT等の関連をみました。PFAS濃度の測定は、京都大の共同研究者で実施しました。対象者は178人で、平均年齢が55歳、男性が55%でした。測定したPFASは12種類であり、代表的なPFASの血中濃度をみると、PFOSの平均±標準偏差は5.36±3.69ng/mL、PFOAでは1.98±1.05ng/mLでした。BMIの平均±標準偏差は26.4±5.4でした。解析を行った結果、今回測定した12種類のPFASの血中濃度とBMIには、関連を認めませんでした。PFASの血中濃度と、血圧、血糖、HbA1c、中性脂肪、HDLコレステロール、ALTとの解析では、中性脂肪に対するPFOAの影響が有意に正の関連をみました。  以上、PFAS血中濃度と肥満との関連を認めませんでしたが、メタボリック症候群のうちの2項目(中性脂肪とALT値)に関連を認めました。今回の結果は全検体のうち約半数であり、全数の解析による結果は異なる可能性があります。全数解析の結果が判明した時に迅速に報告する予定です。  今回の健康アウトカムは、肥満やメタボリック症候群に関連する項目でした。2022年度に実施予定の新型コロナワクチン抗体価の測定研究によって、PFAS 曝露と免疫能低下の関連についても検討する予定です。

その他/備考


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