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外環道大深度工事で発生した振動・騒音・低周波音による被害の実態把握とそれへの対策に関する調査



グループ名 市民科学研究室
代表者氏名 上田 昌文 さん
URL http://www.shiminkagaku.org
助成金額 96万円

・*南行が2019 年1月21 日、北行が同2月25 日に掘進を開始。矢印の赤は南行、青は北行の工事の時期の影響と考えられるもの。 ・23,22,21 が世田谷区、24,25が狛江市、ほかはすべて調布市。行の色分けは近隣地域を同色としている。 ・「23 女」の方は長期間にわたって断続的に知覚・体感。「11 女」と「8 女」の方は時期の記憶が不確で「おそらくこの頃」という推定。  「2 女」の方は停止後のボーリング調査工事でさらに体調悪化。 ・体調悪化、通院、避難などの●▲★は女性、●▲★は男性。  【作成:上田昌文(NPO 法人市民科学研究室)2021/12/11(2022/01/08 に補足追加)】

外環道大深度地下トンネル問題の構造と調査のねらい (成果発表会での報告スライドから)

研究の概要

2021年4月助成申込書より
2020年10月18日に調布市で起こった、外環道トンネル工事に伴って発生した陥没事故では、周辺地域住民の間に「陥没」にとどまらない様々な被害が生じている。利害調整を図ることも同意を得る必要もないという「大深度法」に守られた工事であるために、この工事が、どのような事前調査のもとにどう判断して行われたのか、なぜ振動・騒音・低周波音、陥没・空洞、建物被害が生じたのか、十分な情報開示と説明が事業者からいまだになされていない。被害地の住民は不安と苦痛を感じながらの生活を強いられている。問題解決に向けて、複数の住民グループが活発な運動を続けているが、事業者とは独立した、工事の工法、地盤、振動や騒音、建築など多分野の専門家の本格的な協力が不可欠であるにもかかわらず、それが実現していない。本調査は、そうした専門家らの協力体制を築いていくことを念頭に、振動・騒音・低周波音の問題に焦点をあてる。被害者住民の側に立って、その被害の実態を正確に詳細に把握し、そのことをふまえて原因究明と問題解決のための科学的証拠をできるだけ素早く提示することを目指す。

中間報告

中間報告より
 2020年10月18日に調布市で起こった、外環道トンネル工事に伴って発生した陥没事故では、これまで報道されてきた周辺地域の地盤・建物の損壊に加えて、住民の間に騒音・振動・低周波音による健康被害が生じていることが、本調査で明らかになりました。地元住民と市民科学研究室とがこの問題の究明に向けて「外環振動・低周波音調査会」を結成し、毎月3回ほどの定例会を持ちながら、現地での調査を続けています。2021年11月末までに25名の被害住民に対して詳細な聞き取り調査を実施し、その結果を12月11日に現地で発表しました。長期にわたって持続的に(平均して1ヶ月弱)、微振動と聴覚範囲外の周波数を含むとみられる低周波音の双方に曝露するという事態は、おそらく前例をみないものであり、低周波音被害に特徴的なものとして、従来、指摘されてきた知覚・体感や体調悪化の証言が多数得られたのも、そのことのためであると考えられます。  本調査から、(1)シールドマシン工事の進行の時期と振動・低周波音の体感ならびに体調悪化の時期的な相関はきわめて高い、(2)25名(女性18名、男性7名)のうち、何らかの大きなストレスや精神苦痛を覚えた者が15名、うち何らかの症状を発症したものが13 名、そしてそのうちの6名(すべて女性)が工事停止後も過敏化した症状に今なお苦しんでいる、ということがわかりました。  調査会では、北海道大学ならびに電気通信大学の研究者の協力を得て、事業者が行う地盤調査や地盤改良のための工事なども対象にして、住民が被害を未然に防ぐために、自身で振動計を用いて監視を強めていく計測網の確立にすでに着手しています。

結果・成果

2022年8月の完了報告より
 市民科学研究室は、2020年10月18日に調布市で起こった、東京外環道トンネル工事に伴って発生した陥没事故の被害実態の究明と問題の解決に向けて、地元住民と「外環振動・低周波音調査会」を結成し、毎月3回ほどの定例会を持ちながら、現地での調査を続けています。  巨大なシールドマシンによる地下40メートルでの掘進工事によって微振動と聴覚範囲外の周波数を含む低周波音が長期にわたって発生しました。その双方に地上の住民らが持続的に(平均して1カ月弱)曝露しました。聞き取り対象25名(女性18名、男性7名)のうち何らかの大きなストレスや精神苦痛を覚えた者が15名、特徴的な病状(めまい、耳鳴りのような圧迫感、夜中の突然の目覚め、聴覚過敏、嗅覚喪失など)を発症したものが13名、そしてそのうちの6名(すべて女性)が工事停止後も過敏化した症状に今なお苦しんでいることが判明しました。また、建物に生じた損壊(事業者は自ら「補償対象地域」を決め、工事前から発生していただろう経年劣化もいっしょくたにして個別の「補修」でことを済ませようとしている)については、その全貌を把握するために、1軒1軒を巡りながら写真を撮り記録しました(合計177軒)。Google Street Viewの過去の写真との照合などを経て、トンネル直上エリアを中心に、損傷が工事後に新たに発生したと確定できた事例が25軒、工事に起因すると強く疑われる事例(地面の沈下・隆起による、大きい亀裂、門や扉やブロック外壁に隙間や傾斜)が34軒あることが判明しました。調査会では、今後、リニア中央新幹線を含めて大深度地下工事で発生する恐れのある種々の被害を防ぐために、発生する振動を常時モニタリングする必要を痛感し、簡易な振動計(中古iPhoneを活用)を個々の住宅に設置してWi-Fiを用いてデータを自動記録するシステムを開発しました。現在は、その普及にも努めています。  今後は、これまでの被害調査の結果をわかりやすくまとめ、振動計モニタリングの意義を知ってもらうためのパンフレットを作成し、広く普及していきます。また、関連分野の専門家と事業者側を招いての公開討論会を実施し、大深度地下工事の問題点やリスクを徹底的に明らかにし、公共事業として何をどう改めるべきかを広く行政担当者や市議・都議・国会議員らにも訴えていきます。

その他/備考


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