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東電原発事故の裁判資料や政府事故調資料の公開データベース整備拡充



グループ名 原発報道・検証室 裁判・政府事故調アーカイブプロジェクト
代表者氏名 添田 孝史 さん
URL http://level7online.jp
助成金額 40万円

復元されたメールデータに関する法務省の開示文書

公開された東京電力の内部資料(2008年9月10日付)。「津波高さO.P.+15.7m」「津波対策は不可避」との記述が確認できる

研究の概要

2021年4月助成申込書より
本調査研究では、東京電力福島第一原発事故を巡る裁判や、政府事故調が保有する資料を収集した公開データベースを立ち上げ、整理作業を続ける。 事故の原因や被害については、政府や国会の事故調が2012年に報告書をまとめたが、まだ未解明なことが多く残されている。現在、事故検証の場は、住民らによる損害賠償請求(集団訴訟だけで約30)や株主代表訴訟、刑事裁判などの法廷に移っている。裁判で提出された文書や、判決文などは、事故の実態を明らかにしたり、どのように検証されてきたかをたどったりする上で、重要な資料となる。 しかしこれら資料は、各裁判の原告らが一部公開しているのみで、網羅的に収集整理している機関はなく、今後も保存や活用できるのか、心配されている。そこで、原告や被告の国・東電が提出した専門家の意見書、被害者らの陳述書面、準備書面や、裁判所の判決要旨、判決文などを収集整理し、公開データベースを作る。 政府事故調が収集した資料(約2千タイトル)についても、目録のみが2018年12月に開示されたが、文書本体はまだ未公開のままである。これらについても、保存年限が限られている文書があるため、急いで集めておく必要がある。  これらの裁判資料、政府事故調資料のデータベースを誰でも無料で使える形で公開し、裁判を起こしている住民や弁護士のほか、ジャーナリスト、研究者に利用してもらうことで、東電福島事故の実相により深く解き明かすことが期待できる。

中間報告

中間報告より
 本調査研究は、東京電力福島第一原発事故をめぐる裁判の証拠文書や、政府の事故調査委員会が収集した文書をあつめ、公開データベースを充実させることをねらいにしています。  文書開示請求を、原子力規制委員会、内閣府などに提出し、文書の収集を続けています。最近では、2021年10月28日付で法務省が開示した捜査報告書が、大変重要な資料でした。  これは、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電元幹部の捜査に用いるため、検察官役の指定弁護士が、検察事務官に命じて、東電のメールデータが保存されていたハードディスク3台(各1TB)からデジタルフォレンジック(電子鑑識)の技術を使って61通のメールを復元した捜査の報告書です(https://database.level7online.jp/items/show/56)。デジタルフォレンジックとは、削除されたデータの復元などを行ってコンピューターなどの電子記録を解析し、犯罪の証拠として活用する手法です。  開示されたメール61通は、2008年から2011年にかけて、東電内部や、他の電力会社とやりとりされたものです。東電内部で津波のリスクについてどのように認識していたか、そして外部の専門家に根回したり、他の電力会社に圧力をかけたりして、津波対策の遅れが露見しないよう工作していた状況を物語る、第一級の資料です。  そして、これらのメールを東電は政府や国会事故調には提出しておらず、さらに検察の初期の捜査でも利用されておらず、強制起訴された後の2017年になって指定弁護士によって発掘されたらしいこともわかりました。

結果・成果

2022年8月の完了報告より
 東京電力福島第一原発事故について、政府、国会など四つの事故調査委員会は2012年までに報告書を公表しました。それらは今からみると不十分で、未解明の事項が数多く残されていました。また政府事故調が収集した一次資料(約2,000タイトル)は未公開のままです。2012年以降、検証の場は主に法廷に移っていますが、裁判で提出された内部文書などは、体系的には保存されていません。  本プロジェクトでは、特に事故が起きる前の経緯、原因解明に特化して、事故調文書と裁判関連の文書を収集し、誰でも閲覧や検索が可能なデータベースを構築することを目指しています。本プロジェクトは、2020年10月に、『東電原発事故の資料』のウェブサイト(https://database.level7online.jp/)を開設し、収集した資料を公開しています。2021年度は、原子力規制委員会が開示した検察供述調書、証人尋問調書や、法務省が開示した東電内部の電子メールなど5千ページ以上を新たに追加しました。  東電内部のメール61通は、2008年から2011年にかけて、東電の関係者が、社内や他の電力会社とやりとりしたものです。東電内部で津波のリスクについてどのように認識していたか、そして外部の専門家に根回したり、他の電力会社に圧力をかけたりして、津波対策の遅れが露見しないよう工作していた状況を物語る第一級の資料です。  開示された文書を、そのまま未加工で公開しただけでは、量が多いためどれが重要なものかわかりにくく、また文書間の関係も見えにくいので、いくつかの文書をピックアップし、具体的に文書を読み解く解説記事を作成すると、開示文書が読まれ、利用数が多くなることがわかりました。今後もこのような利用促進策を考えていきます。  事故前の重要な意思決定の場となった国や電力会社の会合などを、時系列に並べて年表形式で表示し、それに関連した資料をそこからのリンクで見られるように整理することを検討しています。サーバー費用をできるだけ節約しつつ、この形式を可能にする展示方法を探しています。  政府事故調が収集した文書2万5千ページ以上が2023年7月に開示されるので、そのコピーを入手し、整理、公開する予定です。すでに開示されている文書で、まだデータベースに収録していないものの整理を進めます。

その他/備考


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