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太平洋核実験による放射線被災実態を解明し、被災船員救済のための研究をすすめる。 ー国内外の研究者との協力によるビキニ事件の情報開示・解説資料普及の取り組みー



グループ名 太平洋核被災支援センター
代表者氏名 濵田 郁夫 さん
URL
助成金額 50万円

室津港にて近海マグロ漁船(19t)の乗船体験

2022年5月7日 ビキニデー in 高知で証言した元船員

研究の概要

2021年4月助成申込書より
 「ビキニ水爆実験による第五福竜丸以外のマグロ船と貨物船などの被災の実態と乗組員の健康状態追跡調査」にこれまで取り組んできた。核兵器禁止条約批准を視野に入れたビキニ事件の歴史的検証が重要になっている。ビキニ水爆実験による被災船員は高齢化とともに健康を害し、癌の発生率が高まり、「死の灰」を受けた被災船の船員の3分の2以上がすでに死亡している。高知県や広島大学などの研究者、医師の協力をえて、被災漁船員と同世代の男性の病歴、死亡原因調査を実施したい。  今年度は、高知県と国内外の研究者と協力して、ビキニ被災船員追跡調査、ビキニ事件の情報開示、資料集の普及を進める。  そして国連人権規約委員会へビキニ被災者救済を訴え、核兵器禁止条約第6条による核実験被災者救済の先進地域である高知県への調査を呼びかける。

中間報告

中間報告より
 ビキニ水爆事件は、日本において核兵器禁止の世論を大きくしたものとして、とても重要な事件であると考えています。ところが私たちの高知県での調査では、特に室戸では、ビキニ事件のことについては、ほとんど語り継がれていない状況がありました。  支援センターの学習会で、改めて当時の世論などを調べてみました。すると、1957年のクリスマス島での核実験に対しては、大きな反対運動が展開されていたことがわかりました。1957年には高知県レベルで「クリスマス島水爆実験阻止高知県実行委員会(委員長は溝渕増巳県知事)」が組織され、同年2月25日には室戸岬町で、3月17日には室戸町で「反対大会」がおこなわれ、地元紙でも連日大きく取り上げられていました。しかしながら、この運動は、5月ころから急速にトーンダウンしていきます。魚が売れなくなるという問題や、このころからすでに「核の平和利用論」が入り込んでいることも背景にあるようです。今後さらに研究していく必要があります。  昨年、「ビキニデーin 高知」と銘打って集会を開催しました。今年も引き続き第2回を準備しています。青年層にも積極的に取り組みに参加してもらうように呼びかけています。また、事前企画としての映画会や、室戸では9月に近海マグロ漁船の船内見学会などを開催しました。元船員の方に、室戸フィールドワークの実行委員になってもらう取り組みも進めています。  ビキニ労災訴訟が具体的に動き出しました。それに伴って、弁護士、研究者、医師の方たちとも協力し合いながら研究を進めています。

結果・成果

2022年8月の完了報告より
 太平洋核実験で被災したマグロ漁船の調査を始めて35年の時間が流れました。それまで、ビキニ水爆実験で被ばくしたのは第五福竜丸だけであると多くの人たちが思い込まされていました。しかし、当時は500隻を超えるマグロ漁船が操業しており、それらの漁船は汚染したマグロを廃棄したことが明らかになっています。当然、その漁船に乗っていた船員も被ばくしています。彼らの中には、がんの発症などで早くから亡くなっている人がいます。現在、被ばくした元船員とその遺族は、補償を求める裁判を起こしています。  当時の漁船員の多くはすでに亡くなっています。その場合、遺族の方にお会いし、病歴の調査を行っています。「私たちは何も聞かされていなかった。しかし、主人は帰ってきても家でゴロゴロしていることが多かったし、どうしてこんなに病気をするがやろ、と思っていた」という証言が少なくありません。また「うちのお父さんの体は、もう切りとるところがないほどボロボロです」と声を詰まらせることもありました。海で鍛えられた屈強な漁師のイメージがもたれていますが、現実は、体のあちこちの痛みを抱え、我慢しながら仕事をしていた船員が多かったのです。そして、早死にすると「酒の飲みすぎよ」と言われているのです。しかし、漁船員は、航海に出て操業しているときには基本的には飲酒をしないのです。早死にの原因として「酒の飲みすぎ」はあたらないのです。  一方、アメリカや日本の秘密文書も少しずつ開示され、隠された歴史に光が当たってきています。医学的な面では、内部被ばくや低線量被ばくについて注目されるようになってきました。  一昨年から取り組んでいる「ビキニデーin高知」は、これまでの研究の成果や市民運動の経験が集まる場所と機会になっています。また、ヒロシマ・ナガサキ・フクシマの被ばく者や世界中の核被害者と連帯して核兵器廃絶と救済措置を実現する取り組みを進める可能性が生まれています。  この問題について、今後さらに調査研究が進められなければなりません。そして、学校教育における教材化や一般書としての普及活動なども求められています。

その他/備考


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