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ネパール金属加工業者の間で起きている溶接ヒュームの職業曝露防止のための研究、普及啓発および政策提言



グループ名 Center for Public Health and Environmental Development (CEPHED) Study Awareness & Policy Advocacy Report[]
代表者氏名 Ram Charitra Sah さん
URL http://cephed.org.np/
助成金額 USD5,000=50万円

溶接ヒュームに曝露する作業中の労働者

溶接の作業場

研究の概要

2022年9月助成申込書より
ネパールでは全国で約 2000 の金属加工の作業場が登録されており、約 2 万人の雇用を創 出し、家族を含め約 2000 万人の人々に様々な利益をもたらしています。 しかし、金属加工労働者らは溶接作業時に発生する溶接ヒューム(金属アーク溶接時に熱によって溶けた金属が蒸気となり、やがて冷やされてできる様々な粒子状金属化合物)に曝露することで、健康影響(主なものは目や鼻、喉の炎症、気道感染症といった症状が、長期的な曝露は、神経系・呼吸器系疾患や腎機能障害やがんのリスクを高める)を受けることが大きな問題となっています。また、周辺環境に大きな環境汚染をもたらし、狭く換気のできない場所での溶接作業によって(溶接棒から出る有毒ガスが発生するため)、窒息を引き起こす危険性もあるなど、労働環境も問題になっています。しかしながら、ネパール政府は暴露量の上限や溶接棒の安全規格も定めていません。 本研究は、溶接ヒュームの曝露量や健康影響を調べるデータを収集し、溶接労働の関係者や曝露の当事者の間で問題意識を高めると同時に、必要な規制の枠組みにつなげる政策提言に活かしていくことを目的に調査研究を行っていきます。 具体的には、金属加工業者への健康や環境への影響に関する意識調査(50 人分)、個人サンプラーを用いた溶接作業者の暴露量測定(ワークショップ10回)、溶接作業歴の長い労働者を対象にした肺機能テスト(50人分)、統計パッケージを用いた結果分析を行い、溶接作業者の暴露状態を明らかにします。結果は、ワークショップやマスメディアやSNS、環境衛生安全ウェブサイト(EHS)で共有・発信し、溶接ヒュームの継続的な暴露を防止・低減するために必要で効果的な規制・技術的措置(溶接電極棒の安全規格の策定や個人の暴露限度の設定)を講じるよう、政府や関係者に働きかけていきます。また、人々の健康状態や当該地域の環境の改善のために、金属加工労働者のみならずコミュニティ全体の普及啓発にも努め、取れるべきあらゆる予防策を取り、持続可能な解決策を導き出せるよう、取り組んでいきます。

中間報告


結果・成果

2023年1月の最終報告書より
本研究は、ネパールの金属加工現場で溶接作業に従事する労働者の溶接ヒュームの曝露量や健康影響を調べ、溶接労働の関係者や曝露の当事者の間で問題意識を高めると同時に、必要な規制の枠組みについての政策提言につなげることを目的に実施しました。 本調査には、政府機関や鉄鋼業界などの協力を得て、カトマンズバレー(カトマンズ、ラリトプール、バクタプル)で操業する11の溶接作業場から21件のサンプルを採取し、溶接ヒュームの個人暴露量の測定、溶接作業員の肺機能検査(PFT)による呼吸器疾患の金属特性検査を行い、その分析結果をワークショップにて公表するとともに報告書を出しました。 まず、分析の結果ですが、52%(21件中11件)の溶接作業場のサンプルで、米国産業衛生専門家会議(ACGIH)のガイドライン基準である5mg/m3を超えており、半数上の溶接作業所で働く労働者は、溶接ヒュームの高いリスクにさらされていることが明らかになりました。 また、溶接ヒュームに含まれる有害金属を分析したところ、鉄、マンガンはサンプル全てから検出され、亜鉛は約85%、ニッケル、銅は約70%強、クロム19%、がそれぞれ検出されました。また、2つのサンプルで鉄がしきい値制限値(5 mg/m3)以上、18のサンプルでマグネシウムが同値(0.02 mg/m3)以上、クロムは1つのサンプルで同値(0.003 mg/m3)以上、それぞれ検出されました。 肺機能検査(PFT)は、溶接工88名とコントロール群108名に受けてもらい、その結果、約41%が生命を脅かすグループ、約20%が急性重症グループ、約27%が中等度曝露グループで、これらの労働者の健康状態は深刻な状態であり、適切な対策が必要であることが分かりました。 これにより、溶接ヒューム使用に伴う労働安全面における緩和・管理対策として、個人用保護具(PPE)の使用を義務付けたり、溶接工への定期的な労働安全衛生(OSH)訓練を行ったり、溶接工の仕事の危険性についての普及啓発を急ぐこと、各種法律や規制、政策などに、溶接労働者向けの特定の条項を含んだり、全溶接工の定期的な健康調査報告書の提出を義務づけるよう労働安全局(DOLOS)に働きかけること、溶接棒(電極)の規格と煙に接触する暴露限度の低減を図ることなど、溶接業務に従事する労働者の職業上の安全と健康の確保を求めていく様々な提言が出されました。

その他/備考


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