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沖縄県の人々における血中の残留性有機汚染物質 (PFAS)濃度と SARS-CoV2 ワクチン中和抗体価との負の関連



グループ名 沖縄京都PFAS 研究グループ
代表者氏名 徳田 安春 さん
URL http://nsleep.com/
助成金額 80万円

京都大学環境衛生学准教授室の前で、 共同研究者の徳田安春と原田浩二 (2022 年10 月19 日)

研究の概要

2022年5月の助成申込書から
 PFOS、PFOA、PFNAなどのPerfluoroalkyl substances (PFAS)への曝露と免疫機能低下との関連性を示す研究はいくつかある。PFAS曝露は日本人においてすでに広がっているが、免疫機能低下と血中PFAS濃度の関連について日本人を対象にした研究はまだない。PFASは地域住民の生活にとって重要な飲料水に含まれる残留性環境汚染物質であり、健康影響を調べることは大切である。中でも、新型コロナウイルス感染症は沖縄での感染拡大を何度も繰り返しており、この物質の関与を調査することで、直ちに曝露を減らすなどの予防対策をとる必要性が明らかになる。今回の研究は、昨年度に行った横断研究によって得られた採血検体を用いて、新型コロナウイルスワクチン接種後の中和抗体価の測定を行う。血中PFAS濃度は京都大学の共同研究者の施設において現在測定されている途中である。データについては、多変量線型回帰モデル分析を行い、交絡因子を調整した上で、PFAS血中濃度と中和抗体価との関連を解析する。PFAS血中濃度と免疫機能低下との関連を認めた際には、PFAS曝露を最小限にするための政策介入を行うよう自治体等へ働きかけを行うエビデンスとして研究結果を活用する。

中間報告

中間報告より
 本研究は、PFAS(パーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物の略)の人体内での血中濃度と免疫力低下との関連をみる目的で行われています。PFASは、水や油をはじく、熱に強い等の特性を持ち、消火剤等に用いられる化学物質です。飛行場で使われる泡消化剤にも用いられていることから、沖縄県内の米軍基地でも使われています。PFAS曝露は健康に有害である可能性が示唆されており、基地内で使用後のPFASが付近の地下水や河川に流れ、飲料水などで地域住民の体内に取り込まれていることが危惧されています。この物質はForever Chemicalとも呼ばれているように分解されにくく、体内に長年留まるので、すでにさまざまな健康問題をきたしている可能性があります。  昨年度の研究では、445人の対象者で採血を実施、PFASのうち、いくつかの物質の血中濃度と沖縄県民の血中の中性脂肪濃度との相関を認めました。その際に得られた採血検体を用いて、新型コロナワクチン接種後の中和抗体価の測定を行っています。PFAS血中濃度と中和抗体価との関連を解析することで、免疫力としての抗体価との負の相関をみる予定です。PFAS血中濃度と免疫機能低下との関連を認めた際には、PFAS曝露を最小限にするための政策介入を行うよう自治体等へ働きかけを行う予定です。  新型コロナウイルス感染症は沖縄での感染拡大を何度も繰り返しており、沖縄県での調査研究が必須と考えています。2023年1月までに、共同研究者である京都大学の原田浩二教授との打合せを重ね、今回の研究対象としている445人分の血液サンプルについて、検査機関に依頼し、新型コロナS抗体価の測定・分析をすすめているところです。2023年1月には、ワクチン接種歴と新型コロナ感染歴についての445人対象の調査も開始しています。データが収集できる2月にはデータ解析を開始して、3月には結果が得られる見通しです。

結果・成果

2023年8月の完了報告より
 私たちは、血中の残留性有機汚染物質perfluoroalkylsubstances(PFAS)濃度の増加と肥満や免疫能低下との関連をみる研究を行いました。PFAS曝露によって免疫機能が低下し、新型コロナウイルスワクチン接種の効果が弱くなっていないかを調べる研究です。研究対象は沖縄県の医療機関に通院する患者さんと職員の皆さんです。  研究を行う際に立てた仮説は「PFAS血中濃度が高い人々では、新型コロナウイルスワクチン接種後の血清抗体価は低い」でした。前年に行った研究では、研究参加に同意した人々から採取した血液検体を用いて、PFAS濃度の測定は京都大の共同研究者で実施しました。今回は、民間の検査機関に依頼して、新型コロナウイルス血清抗体価(ウイルスのスパイク蛋白に対する抗体)を測定しました。対象者は207人で、平均年齢が55歳、男性が57%でした。この207人で測定したPFASは12種類であり、代表的なPFASの平均血中濃度をみると、PFOSの平均濃度7.88ng/mL、PFOAは3.07ng/mLでした。12種類のPFASの合計血中濃度は平均23.34ng/mLでした。主要7種類のPFASの合計血中濃度に基づく「全米アカデミーズのガイダンス」による健康影響高リスクグループ(≧20ng/mL)は207人中115人(55.6%)で、中リスクグループ(≧2かつ<20ng/mL)は207人中92人(44.4%)でした。健康影響低リスクグループはゼロ人(0%)でした。抗体価の平均値は6425.9U/mlでした。年齢と性別を調整した多変量解析を行った結果、12種類のPFASの血中濃度増加と抗体価の低下には関連を認めませんでした。  今回の研究では、血中のPFAS濃度の増加とコロナワクチン接種後の抗体価の低下との関連は認められませんでしたが、他の種類のワクチンに対する免疫能低下についても検討すべきと考えます。ワクチンの種類には多種あり、これらのワクチンでの抗体価測定研究を実施していくことが、PFASの免疫機能への影響の全体像を把握するためには必要です。    今回の研究で、検査対象者の半数以上が、全米アカデミーズのガイダンスによる高リスクグループ、残りは中リスクグループに該当し、低リスクグループは皆無であったことは、沖縄の人々に対して、今後も、さまざまな健康影響との関連を検討する疫学研究を継続して実施していく必要性を示しています。  2023年度は、引き続き発癌性などの他の健康影響について検討する予定です。

その他/備考


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