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南スーダンの石油施設による汚染の住民影響調査



グループ名 JVC南スーダンチーム
代表者氏名 今井 高樹 さん
URL
助成金額 50万円

石油汚染問題を取材した新聞記者と ジュバで面会した出張者の橋口

多くのメディア関係者が参加した ジュバのカンファレンス

Roliak 住民からの聞き取り

ユニティ油田周辺の関連施設

研究の概要

2022年5月の助成申込書から
 2011年に独立した南スーダンは中規模の産油国として国家財政の大半を原油収入に頼っている。原油の漏出や廃棄物の不適切な処理、内戦による施設の破壊や放棄が原因となり、大気、土壌、表層水及び地下水が広範囲にわたって有害物質により汚染され、周辺環境や家畜、人体への影響が地元住民やメディアにより指摘されてきた。流産・死産の増加、奇形出産の報告も多い。さらに、2019年から3年間にわたり続く大規模な洪水が有害物質を拡散させた可能性もある。南スーダン政府はこの問題を知りながらも対処を怠ってきた。紛争が続いてきた同国で人道支援を行っている国連機関や国際NGOも「自組織の責任範囲外」として有効な対応ができていない。限られたNGOや独立の研究者による先行調査はあるものの、個々バラバラの研究にとどまっている。  本調査研究では、1.人道支援団体として活動する当団体が油田周辺の住民に接触し汚染の影響を調査、2.独自調査(医療機関の調査や水質・土壌分析などを含む)を行っている南スーダン現地のNGOや研究者への調査費用支援、3.現地のNGOや研究者、ジャーナリストが研究成果の共有をはかる会議を開催(2年目に実施)、の活動を通じて汚染による住民への影響を明らかにする。成果は南スーダン国内外や日本メディアで公表、国際NGOや国連機関と共有し、医学・化学面でのより専門的な調査や治療等の対処、南スーダン政府や石油会社による補償および汚染防止策につなげる。

中間報告

中間報告より
 2011年に独立したアフリカの南スーダンは中規模の産油国です。原油の漏出や廃棄物の不適切な処理、内戦による施設の破壊や放棄のため広範囲にわたって環境が汚染され、住民や家畜が深刻な影響を受けてきました。住民のあいだで流産・死産が増加し、多数の奇形出産が報告されています。NGOや独立の研究者による先行調査はありますが、情報は限られています。  紛争が続いたこの国では国連やNGOなど多くの団体が人道支援活動を行っていますが、日本のNGOである私たちを含めてこの問題を見過してきました。そこで今回、汚染問題に正面から取り組むため、調査を行うことにしました。  7月から10月までは、インターネットで入手できる資料を中心に文献調査を進めました。その上で11月に首都のジ ュ バに出張し、汚染の調査を行う現地市民団体、国際NGO、研究機関を訪問しました。また、この問題の政治的・外交的側面を追う新聞社・ラジオ局の記者たちと面会しました。そこで得られた情報によれば、南スーダン政府はようやく油田周辺の環境影響評価に着手したものの、石油会社による調査への介入が懸念されていました。  出張によって、南スーダン国内で石油汚染問題に取り組む主要なアクターに接触し、関係をつくることができました。2023年春に予定している現地調査に向けて協働する現地NGOと独立系研究者の選定もできました。また、さらに多くの調査報告等を入手し、帰国後にそれらの精査を進めています。

結果・成果

2023年8月の完了報告より
 2011年に独立した南スーダンは中規模の産油国です。油田周辺での原油漏出や廃棄物の不適切な処理によって環境が汚染され、住民や家畜が深刻な影響を受けてきました。研究者やNGOによる先行調査はありますが、情報は限られています。  JVCの南スーダンでの活動はこれまで人道支援が中心でしたが、この問題を見過ごせず、現地NGOと協力して調査を行うことにしました。  2023年4月、油田地帯であるユニティ州に入り、病院、診療所、住民からの聞き取りを行いました。1990?2000年代の油田開発に伴って流産・死産・出生時異常が増加したこと、紛争により操業が中断された時期に廃棄物が放置され状況が悪化したこと、2019 年からの洪水で汚染が拡散したことなど、多くの証言を得ました。集落の近くに廃棄物が投棄された事件や、フェンスが壊れたままの廃棄物処理プールの実態を知りました。その一方で、流産・死産の件数と推移に関する医療施設の情報は断片的かつ信頼性に欠け、証言を裏付ける客観的なデータを集めることはできませんでした。  現地の人々は紛争や洪水の被災民でもあり、食料不足や劣悪な衛生環境、マラリアなどの感染症といった複合的な要素がからみあう中で、油田関連汚染の健康への影響度が測りにくいことも見えてきました。私たちの調査活動は今回で終了しますが、11月までに調査レポートを現地と日本で公表し、現地行政と市民社会に対して今後の本格的な調査を促したいと考えています。協力した現地NGOも、独自に調査を継続する予定です。

その他/備考


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