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田村バイオマス発電所の稼働開始による周辺への放射性物質汚染の計測と その記録結果の拡散



グループ名 たまあじさいの会
代表者氏名 古澤 省吾 さん
URL
助成金額 30万円

調査風景:福島県田村市三春町大滝根川 撮影日:2023年4月10 日 撮影者:武熊明子

研究の概要

2022年5月の助成申込書から
 2021年3月より試験稼働を始めた福島県田村市大越地区のバイオマス発電所は、『自然との調和、地域住民との共生を基調として、環境負荷の低減を前提とした資源循環型社会への貢献を目指す』とされているものの、地元住民は、このバイオマス発電所が福島県内の放射能汚染木を燃やすことで、周辺環境への放射能拡散を懸念して、『大越町の環境を守る会』を立ち上げ反対運動や提訴をしてきた。しかし同施設の操業が押し切られる形で始まって1年が経過した。田村市は市のHPにて、『通常使用されるバグフィルタと呼ばれる集塵装置に加え、安心対策として高性能のHEPAフィルタも設置することになりました。燃料から排気、焼却灰、排水に至るまで、周辺に放射能の影響が出ることはありません』と明言しているものの、高木基金の助成を受けて昨年8月から調査により異常は明らかに見れる。本調査の目的は、同発電所の操業に起因する放射性物質の汚染の進行がないかを住民と協力して、執拗に徹底的にフィールドワークでの観測を行う。発電所周辺から大越地区全域にかけて1.リネン布を毎年2〜3回、20箇所ほど仕掛けて、大気中の放射性物質の浮遊を捕捉する。2.地元住民がラジログにて随時17か所の空間線量の定点観測を行う3.Hot Spot Finder (HSF) にての空間線量をGoogle Map上に記録し、また風力・風速計を2箇所に設置し、大気の流れをマクロに把握して因果関係を解明する4.原子力規制庁のモニタリングポストのデータの解析。これらにより汚染が実際に生じていることの実態を科学的、客観的に記録し証明する。

中間報告

中間報告より
 放射能汚染木チップを燃やすバイオマス発電事業は、ほとんどが福島県外で行われてきていました。しかし福島第一原発事故による汚染の影響が比較的軽度であった田村市大越町に、「汚染がほとんど出ないフィルターを装備した施設」という触れ込みで、地元住民の過半数に及ぶ反対署名も無視して、2022年4月から「 田村バイオマス発電施設 」が稼働しました。私たちの調査の目的は、汚染の実態を解明し、その内容を調査報告会などを通じて町民に周知して、施設を廃止に追い込むことにあります。私たちは、地元反対運動グループ「大越の環境を守る会」と一緒に、2022年5月からリネン布による大気汚染調査を行ってきました。3回と回を重ねるごとに、同施設の稼働による大気汚染が、小中学生の通学路などに集中することが明らかになってきました。  私たちはすでに、日の出町のエコセメント化施設の汚水処理施設からの排水を調査し、セシウム137を検出してきましたが、同様の水中リネン吸着法の調査により、田村バイオマス発電施設からの汚水池直下の河川および、大越町内を貫く牧野川が隣町の船引町で大滝根川と合流した下流でも、セシウム汚染が確認できました。大越町内の牧野川には農業用水に配水するための堰が4箇所あります。今後の調査課題としては、これらの農業用水への堰と大越町の水道水源、および牧野川上流の水質調査で河川汚染の経路を早急に確定し、水質汚染源、田村バイオマス発電施設であることと、大越町内の農業用水への汚染の可能性を確認することを目指しています。この調査については、たまあじさいの会が東日本大震災以降、毎年継続して行ってきた多摩川でのリネン布調査(水源地の一ノ瀬渓谷から羽田沖の河口まで17箇所)が役立ちます。同時並行で大気汚染の確認を続け、人への健康影響の範囲を確認していきます。  さらに河川水の汚染は、大越町内を通り抜け下流の三春ダムに及ぶことが予測できます。三春ダムは、郡山市、三春町、船引町等の水道水源と農業用水に利用されています。河川の汚染がもたらす大越町内と下流域三春ダム周辺への影響について、「大越の環境を守る会」と一緒に、具体的な汚染被害の範囲とその程度を確定することを目指します。汚染調査に関するたまあじさいの会の経験やノウハウと、地元の住民とも深い人的関係を持つ「大越の環境を守る会」が協力することにより、この調査が可能になりました。引き続き、それぞれの持ち味を生かしながら、調査をすすめていきます。

結果・成果

2023年8月の完了報告より
 福島第一原発事故で汚染されたのは主に住宅地と田畑でした。一方、福島県の70%を占めている山林の除染は、全くの手つかず状態がしばらく続きました。しかし、実は福島県外の周辺の地域で汚染木をチップ化してそれを燃料としたバイオマス発電が着々と行われてきました。汚染木を燃やせば、当然に放射能汚染が周辺に広がり、事故による汚染の二次汚染を引き起こすことは目に見えています。  私たち「たまあじさいの会」は、東京の三多摩地区で出た一般廃棄物の最終処分場周辺の環境調査を20年以上にわたって行ってきた市民グループです。日の出町の最終処分場からの汚染問題が解明されてきたために、処分場のこれ以上の増設は地域住民の反対に遭い難しくなったため、事業者は各地で燃やされた廃棄物を主原料として、セメントもどきの物を作り続ける工場いわゆる「エコセメント化施設」なるものを造り、稼働させています。三多摩地域でも、福島原発事故で放射能に汚染された木や剪定枝が廃棄物焼却場で焼却され、放射能が濃縮された焼却灰が、エコセメント化施設に持ち込まれています。施設 の煙突から排出される粉塵により大気汚染が起こります。さらに施設の洗浄によって出る放射能汚染水は、公共下水道経由で多摩川に放出されます。この放射能汚染の実態調査のノウハウを使い、「たまあじさいの会」は、2021年4月から稼働している田村市大越町での「田村バイオマス発電」周辺の汚染調査を地元の「大越の環境を守る会」と情報共有しながら共同で行いました。調査の結果判ったことは、(1)大気汚染と河川汚染が大越町だけにとどまらず周辺の町々に広域に及んでいること。(2)河川汚染は、住民の飲料水のみならず田圃や畑の農業用水を汚染していること。(3)汚染の経路は、施設から排出される洗浄による汚染水経由と、施設煙突から排出される粉塵が大気を汚染し、河川上に落下するときに発生する霧の核になり河川を汚染する経路が想定されること。(4)汚染で予測される住民の健康被害は、「エコセメント化施設」周辺の健康被害と同じようなもの、すなわち小中学生のアトピー性疾患の増加と住民の生活習慣病による死亡率の増加が懸念され、保健所や厚生労働省や地域の教育委員会などの公的なデータからの疫学的な検証をすすめているところです。

その他/備考


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