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水道水から摂取するネオニコチノイドが総摂取量に与える影響



グループ名
代表者氏名 山室 真澄 さん
URL http://webpark1489.sakura.ne.jp/docs/index2.html
助成金額 100万円

研究の概要

2023年5月の助成申込書から
 日本では水道水源となっている河川や湖沼などに、水田に散布された農薬が混入している。ネオニコチノイド系殺虫剤(以下、ネオニコ)の1種であるジノテフランの日本の水道水の基準値は600,000ng/Lだが、予防原則をとるEUでは個々の農薬の濃度は100ng/Lを超えてはならず、全農薬の合計濃度は500ng/Lを超えてはならない。EUと比べて基準値が桁違いに高い日本では、過去には基準値未満の除草剤が癌を引き起こしていた。  水溶性のネオニコは作物に浸透し表面を洗っても除去できないことから、農作物からの摂取がほとんどであるとされ、水道水からの寄与は調べられていない。高木基金の助成をうけ2022年度に行った研究で、秋田市水道水はジノテフラン濃度が常時50ng/Lを超え、ピーク時に800ng/Lを超えた。一方、隣接する大潟村の水道水では5ng/L未満で推移した。  ネオニコは神経毒なので脳に与える影響が懸念されるが、人の尿中ネオニコ濃度は脳中ネオニコ濃度と関係があるとして注目されている。本研究では気候条件や風土・慣習などが類似する秋田市と大潟村で尿中ネオニコとその代謝物の濃度を比較することで、水道水起源ネオニコの寄与を推定し、また総摂取量を海外の健康被害が疑われる事例と比較する。  具体的には秋田市と大潟村で、できる限り有機栽培作物を摂取している住民10名程度に協力いただき、秋田市水道水でジノフラン濃度が最も高くなる8月に尿を採取し、ネオニコとその代謝物濃度を分析する、また尿採取日の3日前からの水道水中ネオニコ濃度も分析して比較・検討を行う。

中間報告


 高木基金助成による2022年度の研究で、雄物川を原水とする秋田市水道水と、八郎湖の堤防浸透水を原水とする大潟村水道水を含む全国12箇所の水道水のネオニコチノイド系殺虫剤(以下、「ネオニコ」)の濃度を毎月1 年間分析しました。その結果、秋田市水道水が最も汚染され、大潟村水道水が常に全国一低濃度であることが分かりました。隣接しているため、文化的背景はほぼ同一と想定されるこれら2地域において、なるべく有機農産物を摂取している人の尿中ネオニコ濃度及びその代謝物の濃度を比較することで、全ネオニコ負荷のうち農産物由来と水道水由来の影響度を比較できると考えました。
 2023年8月の3日間、秋田県立大学が秋田市・大潟村水道水と住民の尿を採取しました。水道水のネオニコおよび第二世代ネオニコのスルホキサフロルの分析は東京大学、尿のネオニコとネオニコ代謝物の分析は北海道大学が担当しました。
 分析が終了した秋田市水道水では、2022年8月に約800ng/L だったジノテフランが約3000ng/L、またスルホキサフロルも約500ng/L でした。これらは日本の水道水基準未満ですが、EU の飲用水中一律基準である100ng/L や総農薬基準である500ng/L を超えていました。あわせて秋田市の家庭用浄水器水も5軒から採水して分析した結果、ほぼ除去されているものから3 分の1 程度しか除去されていないものまでばらついていました。また同じ機種でもばらつきが見られ、使用状況によって除去性能がばらつく可能性が示唆されました。
 尿サンプルは2023年12月に分析が完了し、現在、秋田県立大学が解析を行っています。

結果・成果


 日本人が主食とする米の生産に使用される農薬が、河川や湖沼を通じて水道水に混入する問題がある。特にネオニコチノイド系殺虫剤ジノテフランは、EUの基準に比べて日本の水道水中の基準値が高く設定されており、健康への影響が懸念される。2022年度に行った秋田市と大潟村を含む全国14箇所での水道水を対象にしたネオニコチノイド濃度調査では、秋田市の水道水でジノテフラン濃度が全国一高く、大潟村で全国一低かった。この違いを利用し、秋田市と大潟村で有機栽培野菜を摂取している人を対象に尿中ネオニコチノイド濃度を比較することで、水道水からの摂取の寄与推定を試みた。平均値の有意差を確認したところ、ジノテフランについて秋田市の被験者の尿が大潟村の被験者より有意に高いことが確認された。平均値の差は約1,000ng/Lに匹敵し、水道水中の濃度差とほぼ一致する結果となった。この結果から、秋田市では水道水からのネオニコチノイドの摂取量が無視できないレベルにあると言える。またネオニコチノイド以外の農薬が水道水を通じて影響を及ぼす可能性も否定できない。今後、行政による監視と、特に子供への影響を防ぐための対策が必要であり、米の有数の産地である秋田での曝露量の解明が急務である。

その他/備考


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