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策定プロセスの公文書開示による原発避難計画の実態解明



グループ名
代表者氏名 日野 行介 さん
URL
助成金額 50万円

研究の概要

2023年5月の助成申込書から
 東京電力福島原発事故の反省から原発30キロ圏内の自治体に避難計画の策定が求められることになった。1か所あたりの対象人口は数十万人に上り、計画の実効性の有無には国民・住民から高い関心が寄せられているが、避難計画は安全審査の対象外で、策定の基礎資料さえ公表されておらず、外部からの検証が困難な状態になっている。  調査報道で培った情報公開請求の技術を使って基礎資料を入手し、原発再稼働を正当化するため実効性を度外視して策定されている実態を解明する。今回は30キロ圏内の人口が全国最多の約92万人で、避難計画の不備を理由にした初めての運転差し止め判決が出された東海第二原発を調査対象とする。  解明した避難計画策定プロセスの全貌は書籍化して一般に広く伝えると共に、同原発の運転差し止めを求める訴訟の原告団や、再稼働の可否を問う住民投票の実施を目指す市民団体などにも共有する。また、入手した公文書はすべて電子ファイル(PDF)にして公開する。

中間報告


2023年8月初旬、高木仁三郎市民科学基金から助成決定の知らせが届いたその日、内閣府原子力防災担当(原防)から一枚のCD ?R が私の元に届きました。そこに入っていたのは「道府県原子力防災担当者連絡会議」の配布資料。これは内閣府原防が年3 回、原発避難計画にあたる道府県の担当者を集めて行う会議で、原発避難計画という難儀な政策の最前線と言える場所です。ところが会議の存在は公表されていません。2023年春、偶然と幸運が重なってこれを知り、情報公開請求したところ、避難退域時検査、安定ヨウ素剤、避難弱者、交通手段……といった課題をクリアしたことにする方策が記された配布資料約2600枚(令和以降の分だけで)が開示されました。ほとんどは私も初めて目にするものばかりでした。計画に実効性が無いと知りつつ策定している実状を裏付ける「ブレイクスルー」になると確信しました。内閣府は議事録を「作成していない」というので、出席した複数の道府県に会議報告書を請求したところ、実効性を度外視する内閣府担当者の具体的な発言・指示も次々と明らかになり、策定プロセスの詳細が次第に解明されていきました。成果の一部は2023年11月に発刊した『情報公開が社会を変える 調査報道記者の公文書道』(ちくま新書)で紹介しました。また今後、開示された公文書を基に原発避難計画の全容を明らかにする書籍の刊行を進めています。

結果・成果


 東京電力福島第一原発事故で住民の避難が混乱した反省から、国は原発30キロ圏を防災対象区域として圏内の自治体に対して事故に備えた避難計画の策定を求める方針に転じました。この避難計画の焦点は実効性の有無と言われます。ところが避難計画の策定は法的な義務として明記されず、安全審査の対象にされていないため、策定プロセスはブラックボックスの状態で、根拠資料はほとんど公表されておらず、外部から実効性の有無を評価できない状態に置かれています。本研究は、国と自治体の実務担当者が定期的に集まって検討する複数の非公開会議を特定し、情報公開請求によって入手した配布資料と議事録に基づき、事故直後まで遡る形でブラックボックスを解明していくものです。
 約300件(助成以前の分も含む)実施した情報公開請求と不服審査請求によって入手した推計3万枚の公文書によって、どうにも解決できない根本的な矛盾や欠落があるのを知りつつ、表向きは何の問題も無いかのように自治体に計画策定を強いるという、政策の大きな流れが判明しました。例えば、汚染検査と迅速な避難を両立する切り札とされた車両用ゲートモニタが、実際は高線量下では機能せず、基準値を弁別できないといったものです。いざ事故が起きたら役に立たない「絵に描いた餅」によって国民を騙し、各地で進む原発再稼働が正当化されている実態を、公文書という物証に基づき解明できました。

その他/備考


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