西舘 崇 さん | ||
https://www.kyoai.ac.jp/course-teacher/course-teacher-1372/ | ||
45万円 |
2023年5月の助成申込書から
本研究は、使用済核燃料の中間貯蔵施設を巡る青森県むつ市政のあり方を住民側の立場から検討するものである。対象とする期間は、同施設の受け入れが表面化した2000年から現在までのおよそ20年間とするが、申請2年目となる今期では、前年度(第21期)の調査結果を踏まえ、特にむつ市における核燃税の導入過程と、周辺自治体の新たな動向に注目して検討を行う。
むつ市は2022年9月、貯蔵施設に搬入される使用済み核燃料に課す「核燃料税」の導入を正式に決定した。宮下市長(当時)は同税をむつ市の将来を持続可能なものとする「最強のカード」と表現したが、本当にそうだろうか。そもそも中間貯蔵のための前提が整っていない。再処理事業は行き詰まった状態であり、その一方で中間貯蔵後の搬出先も決まっていないのだ。施設はまたテロなどの標的にもなるが、その対策も十分とは言えない。地域住民からの理解についても疑問が残る。このような中、本研究では前年同様に現地を訪れ、地域住民の声を実際に聞きながら、むつ市政の原子力政策を批判的に検討する。今期の調査ではまた、むつ市を含む下北地域の新たな動きを視野に入れることで、むつ市政を県全体の原子力行政の中に位置付けていくことを試みる。新たな動きの代表例は、風間浦村による除染土の受入検討表明であり、また地方統一選や知事選を経た青森県政による原子力行政のあり方である。
現政権による原発回帰政策が進展する中、青森県下北半島における原子力政策とその背景にある論理を明らかにすることを通して、持続可能な本来の地域のあり方と、住民の生活と命を守るための方策について考えたい。
本研究の目的は、使用済核燃料の中間貯蔵施設を巡る青森県むつ市政のあり方を、地域で暮らす一般市民の立場から検討することです。今年度で2年目の調査研究となります。調査対象とする期間は、この施設の受け入れ計画が表面化した2000 年から現在までのおよそ20年間ですが、1)上関町における使用済核燃料中間貯蔵施設誘致に関わる動き、2)柏崎刈羽原発の運転停止命令の解除、3)能登半島地震による志賀原発への影響、などの新たな出来事を踏まえると、本調査研究の重要性が大きく高まっているように思います。
とりわけ、むつ市の中間貯蔵施設で貯蔵する予定の使用済核燃料が、東京電力(東電)と日本原子力発電(日本原電)所有の原発を対象としていることを前提とすると(2005年の青森県・むつ市・東電・日本原電による協定書より)、柏崎刈羽原発が再稼働した場合の使用済核燃料はむつ市の施設へと搬出されることになります。実際、2023年12月末には東電の執行役が青森県とむつ市を訪れ、2023度内に具体的な搬出計画を策定する旨、発言しています。
本研究調査は以上のような背景の中で、2023年10月と11月にそれぞれ弘前とむつ市への現地調査を行い、現地での市民運動・会合に参加しつつ、その関係者らと意見交換を行ったり、ヒアリング調査を行ったりしました。むつ市で11月に開催された「反核燃秋の共同行動2023(むつ行動)」では、「下北の住民運動の持つ意味」と題して講演させていただきました。本研究調査の成果の一部をこのような形で現地の皆さまに還元できたことは嬉しいことでした。
助成期間は残り半年ほどありますが、引き続き現地を訪れながら調査をしていきたいと思います。
本研究の目的は、使用済核燃料の中間貯蔵施設を巡る青森県むつ市政のあり方を、地域で暮らす一般市民の立場から検討することです。今期で2年目の調査研究となりました。対象とする期間は、この施設の受け入れ計画が表面化した2000年から現在までのおよそ20年間ですが、2023年から2024年8月現在にかけてはいくつもの注目すべき展開がありました。それらは、中間貯蔵施設の新規制基準対応等の完了(2023年8月)、柏崎刈羽原発の運転禁止命令の解除(同12月)、東電による燃料の搬出計画策定とリサイクル備蓄燃料(RFS)による搬入計画の策定(2024年3月)、県とむつ市、RFSの三者による安全協定の締結(同8月)などです。そして、この9月には、貯蔵容器1基が施設へと搬入される予定です。
本研究は以上のような状況の中、2023年8月から2024年7月まで、むつ市を中心として現地調査を行い、「中間貯蔵施設はいらない下北の会」代表の野坂庸子さんや事務局の栗橋伸夫さん他、関係者の方々へのヒアリング調査を重ねてきました。調査からの大きな発見の一つは、中間貯蔵施設に関わるむつ市民の ‘記録’ にかかわることです。施設に対するむつ市政の記録は残されておりますし、公表されています。いつ、どこで何が開催され、何が決まったか、といった記録です。しかし、そこで暮らす住民が施設に対して何をどのように考え、どう行動したのか(あるいはできなかったのか)。声にならない/行動に出せない思いも含めての‘市民の記録’がほとんどないのです。本研究では、この中身を浮き彫りにしながら、こうした状況に至った背景や要因を市政に対する批判的検討を通して明らかにすることを試みました。具体的な成果にはまだ至っていませんが、今後も研究を継続していく予定です。