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風力発電施設に関する共同事実確認実施に向けた騒音と景観に関する住民実態調査



グループ名
代表者氏名 平 春来里 さん
URL
助成金額 30万円

研究の概要

2023年5月の助成申込書から
【調査の目的】  本調査は、既存の風力発電施設のモニタリング段階における将来的な共同事実確認の実施にむけて、住民、専門家、事業者の双方向コミュニケーションの経路を形成するため、とくに紛争化しやすい騒音と景観について既存の風力発電施設周辺に居住する住民を対象とした実態調査を行うものである。ステークホルダーが問題の不確実性に合意し、協働関係を築くための情報提供のあり方を検討すること、そして得られた結果を専門家と事業者に共有することで共同事実確認に向けた協働関係の構築を図ることを目的としている。 【調査内容】  本調査は3つの段階に分けて実施する。 1.風力発電の騒音と景観に関する文献のシステマティックレビューの実施 2.騒音と景観に関する住民へのインタビュー調査 3.騒音と景観に関する住民への質問紙調査

中間報告


 本調査の目的は既存の風力発電施設のモニタリング段階における将来的な共同事実確認の実施にむけて、風力発電 について住民、専門家、事業者の双方向コミュニケーションの経路を形成することです。この目的に向けて、(1)風力 発電の騒音に関する文献のシステマティックレビューの実施、(2)騒音と景観に関する住民へのインタビュー調査、(3)騒音 と景観に関する住民への質問紙調査、を実施します。
 システマティックレビューの実施に向けて、まずは既存の研究から風力発電施設に起因する環境影響が科学的にどこまで明らかにされているかを整理しました。作業内容としては(1)論文、新聞、SNS、インターネット(住民団体や環境保護団体のウェブサイトなど)、反対運動の中心的人物の資料や動画などから収集、(2)論点を再エネ全般に共通するもの、特定の再エネに限定されるものに限定、(3)大項目(例:振動)、中項目(例:健康影響)、小項目(例:睡眠)などタグ付けして分類しました。
 社会的に懸念されている項目の把握では睡眠障害や心肺機能への影響など42 項目があげられました。風力発電によって健康影響が生じる可能性に関して関心の高さと幅広さを客観的に把握することが出来ました。またそれに対応する形で、騒音と健康影響の関係について学術的にどのような研究が蓄積されているのか、それらに関するレビュー論文(システマティックレビューを含む)を調査しました。
 聞き取り調査については、計画時に調査予定としていた事例においては、聞き取り調査の実施とともに文献資料を入手し、地域内の議論を整理しています。ただ、主要な関係者への調査への協力については調整中です。そのため、付近の他地域での別事例での質的調査をすすめました。こちらに関しても公表に関して全ての関係者の方の確認がとれている状態ではないため、今後確認をとったうえで最終報告までには報告可能なかたちにまとめたいと考えています。

結果・成果


本調査では環境論争が生じている風力発電事業において、なぜ共同事実確認という手法がコミュニケーションの齟齬を解決する方法として広がらないのかという問題意識のもと、質的調査を実施した。共同事実確認とは、調査条件・調査手法を双方が確認し、現況調査等を行い、得られた調査結果に基づいて対話を行う手法である(NEDO 2018: 44)。本調査が対象としたA市の事業A’とB町の事業B’はいずれも陸上風力発電である。前者は事業計画段階で計画が撤回された。背景には「調査」実施自体への判断がステークホルダー間で異なっていたことがある。「調査」の実施を事業の推進の一つとして捉えるか、適地調査のステップとして捉えるか、の認識の違いが生じていた。他方でB町の事業B’では稼働後に共同事実確認のような取り組みが生まれた。事業者が最も近隣の地区と、懸念には対応するという内容の協定を締結していたが、それ以外住民からの電磁波に関する懸念の声にも対応する形で調査実施と結果の公表が行われた。このとき、これらの地区を管轄するコミュニティ組織がその要望を把握し事業者に伝えるというプロセスが取られていた。本調査から、事業開始後は協定の締結や日頃のコミュケーションが共同事実確認につながる可能性が示唆された。一方で、「調査」実施自体の認識に齟齬がある場合は、共同事実確認の実施は難しく、センシティビティマップ等の別のガバナンスの手法の方が有効だと言えるだろう。

その他/備考


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