みんなのデータサイト | ||
藤田 康元 さん | ||
https://minnanods.net/ | ||
40万円 |
2023年5月の助成申込書から
福島原発事故の後、市民による空間線量測定がすぐに始まった。引き続いて、食品や住環境の汚染の実態を知るため、様々なバックグラウンドを持つ人々が集まり、放射能測定に必要な機器の選定調達・測定技術の習得を経て、日本全国で市民測定室が立ち上がった。放射能測定の対象が公的測定マニュアルに記載のない身の周りのあらゆるものに及んだため、試料調整・測定方法を工夫し正確な測定結果を得るため試行錯誤を経てノウハウを蓄積する必要があった。この貴重な測定室立ち上げと測定のノウハウは、市民が広く共有できるものとしてまとめられていない。特に市民が培った確かな測定技術の継承は市民測定室の活動の維持・向上を図る上で重要であるだけでなく、次の重大事故に際して市民が迅速に測定体制を立ち上げるためにも不可欠である。以前より、測定室の作り方を教えて欲しいという海外からの要望も来ている。本調査研究はこの課題に応えるものであり、市民科学としての重要性は明らかだと言える。本調査研究では、市民測定室を対象に、立ち上げ時から現在までの諸課題について尋ねる質問票調査とインタビュー調査を行い総合的に実情を分析する。この分析を踏まえ、測定技術のノウハウを網羅した測定ガイドをまとめる。
2011年3月11日の原発震災後、日本各地にできた市民測定室で培われた放射能の測定技術と測定室運営のノウハウを次世代に継承できるように、『市民測定室を作る(仮題)』というガイドブックを作成するプロジェクトを進めています。その基礎になるのが、最多時には100カ所はあったと言われる市民測定室を対象とした質問票調査とインタビュー調査です。調査を通じて、各測定室がどのような困難をどのように解決したかを明らかにします。2023年12月までに、質問票の設計と確定、質問票送付先リストの作成、質問票の送付までを終えました。質問票作成の過程では、みんなのデータサイト参加測定室有志を対象とする予備調査を行い、有益な知見を得ました。質問票送付先リストの作成にあたっては、すでに活動を止めてしまった測定室も多く、連絡先が分かるところがどれだけあるか不安でしたが、みんなのデータサイト参加測定室以外にも50カ所以上をリストアップできました。また、発送後に宛先不明で返送されたものも比較的少なく、今後はできるだけ多くの方から回答を返してもらえるように努力します。なお、当初計画では質問票調査の対象数は50でした。
今後は、集まった回答結果を集計・分析することと、質問票調査に協力してくれたところから20カ所程度を対象に行うインタビュー調査を進めます。インタビュー調査は測定環境の実地見分が重要なので、現地訪問が大前提ですが、一部はオンラインを利用することも検討しています。
東京電力福島第一原発事故の後、日本各地で市民放射能測定室が立ち上がった。人々を被ばくから少しでも守りたい人々が熱意のもと、測定室を試行錯誤しながら立ち上げて運営してきた。しかし現在、高齢化や後継者不足、測定依頼の減少による財政難などにより、多くが閉室の危機に瀕している。この状況が続けば、蓄積されてきた貴重な経験が継承されず消失する恐れもある。本調査研究では、その知見の詳細を調査により明らかにしたうえで、測定技能集とあわせて、市民が広く共有できるように、ガイドブック『市民測定室の作り方』を作成する。調査研究の一年目には、連絡先の分かった84の測定室を対象に、測定室の立ち上げ時から現在までの諸課題について尋ねるアンケート調査とインタビュー調査を行った。現在までに42ヵ所からアンケートの回答を得、21ヵ所にインタビュー(実地またはオンライン)を実施済みである。調査で分かったこととして、汚染状況などによって測定室立ち上げに至った事情が様々あったことが興味深かった。また資金的な支援者や技術的な協力者の果たした役割が大きいことも分かった。大きく資金をかけずに測定手法を工夫している実例も得られた。他方で放射線理論の知識不足により陥りやすい諸問題も見えてきた。これらを踏まえ、ガイドブックには未経験者でも理解できる理論や技術解説が必要なことを確認した。二年目は、インタビューの対象を支援者・協力者にも広げて追加調査をし、調査結果を総合的に分析する。この分析を踏まえ、測定技能集と、測定室運営の2本立てでガイドブックをまとめる。