太平洋核被災支援センター | ||
濵田 郁夫 さん | ||
30万円 |
2023年5月の助成申込書から
太平洋水爆実験による被災の実態解明にこれまで取り組んできた。核兵器禁止条約批准を視野に入れ、太平洋核実験被災の青少年向け学習資料の調査・研究が求められている。
これまでに作成してきたDVD「ビキニの海は忘れない」・「核被災と核兵器禁止条約」、紙芝居「ビキニの海のねがい」、写真記録「核被災に向き合う高校生たち」学習資料などが、どのように活用され、改善すべき課題について高知県と国内外の研究者と協力して調査・研究を進める。
今年度は、核実験被災国のネットワークづくりを進め、核問題の学習や平和運動の継承について、若い世代に向けた教材編集に取り組む。こうした研究と活動を来年5月の「ビキニデーin高知」に集約する。
太平洋核被災支援センターの本年度の取り組みのねらいは、核実験被災国・被災者のネットワークづくりを進めることと、二つ目には核問題の学習や平和運動の継承のための資料集や教材づくりに取り組むということにおいています。
一つ目のねらいに関しては、2021年度から取り組んでいる「ビキニデーin 高知」があります。2023年5月の集会には、広島や福島、さらにマーシャルからも参加者があり、交流を深めることができました。2024年の集会は、3つの分科会をつくり、各地からの参加者が取り組みを一層交流できるようにしようと準備を進めています。高知の太平洋核実験の被爆者は高齢になり、横のつながりも希薄になってきています。また、まだまだ体験を語っていない方も多くいます。元船員や遺族が集う「お茶会」などにも取り組み、日常的な横のつながりをつくる支援も行っています。
二つ目のねらいに関しては、高知県西南部の幡多地域では、「幡多ゼミ*OB」会が活動をはじめ、若者とともに地域の探求的な学習活動や核被災問題などの学習活動を始めています。室戸地域では、地域の市民館や中学校での講演活動を進めています。このような活動と並行して資料をまとめて教材化する取り組みを進めています。また、「ビキニ事件」の紙芝居を本にする取り組みも進められており、全面的に支援し応援しています。内部被爆、低線量被爆の問題が一般的な関心ごととなっていくことが非常に重要だと考えています。
今年はビキニ事件70 年。この10年がとても大事だと考えています。
*「幡多高校生ゼミナール」(幡多ゼミ)は、1983年に高知県西部の公立高校生と教員による平和問題などを学ぶサークルとして発足した。1954年のビキニ水爆実験で被爆したものの、差別や風評を恐れて口を閉ざしていた県内のマグロ漁船員への聞き取り調査を行い、貴重な証言を得たことで、水爆実験による被曝が第五福竜丸だけではなかったことを浮き彫りにした。
1954年の第五福竜丸が被ばくしたビキニ水爆事件では、第五福竜丸だけではなく、延べ1000隻のマグロ船が核実験により被ばくしていることが明らかになってきている。しかしながら、まだまだ一般的な認識になっているとはいえない。例えば、昨年高知県内の中学校でビキニ水爆事件についての講演をしたときの感想の中に、「原爆などは広島・長崎で終わっていると思っていました。」というものがあった。もちろん現在核兵器が保有されていることは知っていながらのことである。このことは、核実験による被害が、広島や長崎に投下された原爆と同じものであるということが説明される必要がある。
今年の4月に絵本「ビキニの海のねがい」が出版された。本の内容は、ビキニ水爆実験によるマグロ船の被害の実態やその背景などが描かれている。小学校高学年にも読めるようにと編集されている。同時に資料も豊富であり、大人と子どもが一緒に学びあえるものと工夫されている。絵本の原画展も行ったがその中では「広島・長崎以後にもこれだけの核の被害があったということを初めて知った」という感想が多くみられた。
「ビキニデーin高知」の企画は4回目を数えている。今年は、シンポジウムでビキニ事件について理解を深めてもらうとともに、三つの分科会を設定し、参加者が自分たちの取り組みと重ねて学びあえるものとした。
今後さらに学習活動が広がり、「教科書」へのさらに詳しい記載も求めていく必要がある。