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大規模治水ダムに潜在する危険性の研究とビデオ資料の製作



グループ名 調査研究の概要[pdf24kb]
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代表者氏名 佐々木 聡 さん
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助成金額 80万円

研究の概要

2004年12月の助成申込書から
 本研究では、北海道沙流川における2003年8月洪水において、治水計画の規模をこえる放流操作を行った二風谷ダムの洪水対応について、詳細な検討分析を行い、大規模ダムによる治水の問題と危険性を明らかにした。  本研究の最終的な形態は、より多くの市民的理解を得るためのビデオ映像資料となる。  映像資料の特性から、問題のすべてを詳細に紹介することはできないが、わかりやすさを重視して再構築を行う。  洪水当日の現場記録、発表資料、また住民団体の情報開示請求によって得られた北海道開発局内部資料から、2003年8月洪水中の二風谷ダムには、以下のような問題が生じていたことがわかった。 1)二風谷ダムは洪水調節容量を使い果たし、「ただし書き操作」と呼ばれる放流操作を行った。  本洪水では、放流量を増加させる「ただし書き操作」によって、計画最大放流量を1.4倍上回る放流量となった。 2)ダムへの計算上の流入量が、ダムの設計上の限界である設計洪水位を上回っていた。  これはただし書き操作によっても放流が不可能な値であり、この規模の流入あるいは水位増加が続いたならば、ダムは堤頂越流を生じ、最悪ではダムの決壊に結びつくおそれがあった。 3)ダム下流の実際の水位が、予測より大幅に低く推移した。  10日1時の予測値では、ダムからの最大放流量4500m3/s、平取地点の最高水位は29.11mと予測されていた。  これは同地点の計画高水位を1.6m上回り、破堤のおそれがきわめて高い数値である。  しかし本洪水では、ダムの最大放流量が予測を大きく上回ったにもかかわらず、平取の水位は28.3mにとどまり、堤防の越流や決壊という大災害を免れることができた。 4)ダムにきわめて多量の流木、土砂が流入した。  ダムへ流入した流木の量は、約5万m3であると北海道開発局から発表された。  しかしこれはダム湖から回収された量であり、実際の流木量は発表値を上回ることが確実である。  またダム貯水池には、流木のダム堤体への干渉を防ぐために流木防止用のネットがはり巡らされている。  しかし、膨大な流木によってこのネットが切断され、流木とともに放流ゲート部に干渉していた。  かつ、ダムに堆積した土砂量はダムの堆砂容量を超え、治水機能や流量算定に影響していた。 5)上記2)〜4)の現象が独立して生じたのではなく、相互に密接な関係をもった現象であった可能性がある。  下流水位の予想外の低さ、またダム貯水位の急激な上昇は、ダムに流入した土砂や流木の影響がダム放流に影響している可能性がある。  このとき、ダムは人の操作を離れ勝手に水を溜め込み続けているのであり、いわばダムが暴走している状態である。 6)洪水調節中のダムで停電が発生した。  この停電によってダムコンが停止し、ただし書き操作直前の30分間にわたって、ダム運用に関するデータの取得が不可能になった。  ただし書き操作に入る前にダムコンの主な機能が復旧できたため大事にはいたらなかったが、ダムの安全管理上、重大な問題である。 7)ダムと下流の水防施設の連携がない。  ダムのただし書き操作に伴い下流の樋門操作員を退避させた結果、樋門操作が不可能になり、沙流川の洪水が市街地に逆流し被害を生じた。  ただし書き操作によって本流の水位が上昇することは必然であり、樋門の逆流による浸水は、操作員退避時に閉門指示をしなかったために生じた人災であると、被災した住民グループが北海道開発局を提訴している。  本研究では、各問題点について定量的な解析を行うには至っていない。  しかし、現実の大洪水時には、ダム計画の想定外のさまざまな異常事態が自然現象的に発生し、それらはいずれもダムによる治水と安全管理の原則を覆すものであることが明らかとなった。  沙流川水系の今後の問題として、平取ダムの新規建設計画と、2005年12月に発表された治水計画変更案がある。  治水計画変更案では、流量値などを若干修正した上で、2003年洪水への対応をうたっている。  しかし、ダムの安全に関わる多くの問題は何ら解決されていない。  また平取ダム計画に関しては、二風谷ダムの違法判決をうけて行われたアイヌ文化調査の最終報告が、2006年4月に提出される見込みである。  沙流川水系の開発問題においては、アイヌ文化問題への対応にも注意していく必要がある。

中間報告

中間報告から
 本研究は、大規模な治水ダムに潜在されている種々の問題や危険性を、実際のダムの洪水対応に基づき、市民的視点から考察しようとするものです。 2003年8月、北海道沙流川にて発生した台風10号による洪水の際の二風谷ダムの対応と、そこで生じた諸問題の分析を行い、誰にでも理解しやすい映像資料の形でまとめます。  洪水当日、私は偶然に現地に滞在しており、水害の状況や種々の異常現象を目にしました。しかし行政の発表は「ダムの効果」のPRに終止し、実際の状況からは、大きな違和感があるものでした。  その後、水害被災者グループ等の協力を得ながら、多くの資料を得ることができました。行政側の提示した分析や主張には、数多くの矛盾が含まれており、それらはダム治水の限界と、そこに潜在する諸問題を示しているといえます。  2005年度は、高木基金の助成対象に選考いただいたことを受け、本研究の目的を改めて設定した上で、論理構成を行いました。過去2年間にわたって収集した資料と映像記録の整理を行い、また現地調査によって、被害実態の把握、その後の状況、追加映像の撮影、水害被災者グループとの情報・資料の交換、また沙流川流域のアイヌ文化の把握を行ってきました。  秋以後は、使用する図表の仕上げや、具体的なまとめ作業(映像編集等)に入ります。完成した資料については、フォーラム等で活用する、希望者や市民団体への配付を行っていく予定です。     今後は、他のダム問題の事例にも視点を広げ、それぞれについてもまとめていきます。 調査研究・研修の進捗状況・計画の変更などについての特記事項 (1) 沙流川流域の地域特性としてのアイヌ民族文化の取材は、「チプサンケ」(船おろしの儀)を予定していましたが、日程の都合がつかなかったことから、8月に同地にて開催された「国際先住民フォーラム」、「平取町アイヌ文化環境保全対策委員会」資料等に振り替えました。 (2) 先住民フォーラムの日程が、2003年8月水害の出水日に重なったことから、現地での調査予定(聞き取り等)に若干の遅れが生じています。 (3) 基金によって購入させていただいたビデオカメラに若干の不具合があり、修理のため日程に若干の変化を生じました。しかしメーカー修理にもかかわらず、不具合が改善しておらず、近日中にもう一度修理に出す予定です。現時点で、作業日程との都合がつかないでいます。 (4) ビデオカメラ機器(本体)は、当初の見積もりより若干安く購入できました。 (5) 当初購入対象として予定していた補助レンズ(ワイドコンバータ)に、性能面の不足があることが判明し、8月時点で購入を見送っています。新発売された別製品の情報を収集中。現在までは機材の不足を、現場作業によって補っています。

結果・成果


その他/備考


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