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大分県佐伯市大入島石間浦の自然史・文化の研究−不条理な埋立問題に関する科学的データの収集と分析−



グループ名 大入島自然史研究会 []
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代表者氏名 山下 博由 さん
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助成金額 80万円

大入島と石間浦(調査対象地域)の位置図

石間浦の地形と埋立計画地(実線内)。昭和49年国土地理院航空写真から作成。

石間浦の海洋生物

研究の概要

完了報告書から
 大入島自然史研究会は、2005年から2006年にかけて、大入島石間浦の調査を行なった。  生物相の調査は、海洋無脊椎動物(marineinvertebrate)・魚類・海藻について行った。  石間浦の海域には、多様な軟体動物(mollusca)・刺胞動物(cnidaria)・棘皮動物(enchinodermata)・魚類・海藻が生息していることが明らかになった。  いくつかの種は、九州や大分県の新記録種であった。  「磯草の権利」と呼ばれる慣習について調査し、「磯草」の利用の実態を明らかにした。  約13種の海藻が食用や生活用品として利用されており、約30種の貝類が食用として利用されていることが分かった。  「磯草の権利」は地域の自然に根差した、実態のあるものであることが確認された。  豊かな自然と、それを利用する住民が存在することは、現代の社会において大きな意味を持っている。  持続可能な社会のあり方を考証するための良き見本に石間浦はなると考えられる。  そのため、現在計画されている石間浦の埋立計画(大分県の事業)は、回避されるべきであると考えられる。  大入島自然史研究会は研究成果の報告書を出版し、自然や文化の写真を集めたCDやパンフレットを作ることによって、石間浦の素晴らしさを社会に広く伝えていく予定である。

中間報告

中間報告から
 大分県佐伯市大入島(おおにゅうじま)は、豊後水道に面した佐伯湾に浮かぶ周囲23.2kmの離島です。島の南東岸の石間浦(いしまうら)において、大分県土木建築部(国土交通省国庫補助事業)による大入島東地区港湾環境整備(廃棄物埋立護岸)事業(事業期間、平成9年〜22年)があり、6.1haの埋立が計画されています。公有水面埋立免許願書は平成14年7月に提出され、15年1月に認可されました。  石間浦の埋立計画地は非常に豊かな磯・海辺環境であり、海藻や貝類(アワビ・サザエ)などの地先漁業の豊かな漁場になっており、「磯草の権利」と呼ばれる慣習漁業権が存在します。環境省の全国藻場調査によっても2haの藻場が確認されており、バンドウイルカの回遊域にもなっています。申請者の山下らは2003年から、貝類について調査を行い190種の貝類(絶滅危惧種を含む)を確認しました。  この豊かな海岸生態系は、廃棄物埋立護岸工事によって消失の危機にあります。しかしその埋立計画においては、地域住民の意志が無視されており、住民の生活や伝統的文化(慣習的漁業権など)への配慮が欠けている他、生態系の科学的評価は極めて杜撰であると指摘されます。本研究では、1)住民の立場から見た埋立理由の正当性の検証、2)住民の生活・文化、特に「磯草の権利」の文化人類学・法的検証、3)海岸生態系の調査、4)埋立用土である佐伯湾の化学汚染の調査、以上を中心に調査・検証を行ないます。  大入島自然史研究会は、2005年上半期には以下の活動を行いました。 A)調査ネットワークの構築。 B)これまでの既存情報・文献情報の整理、及び新たな文献情報の収集。 C)現地での文化地理学の基礎調査。調査ツール(標本等)の確保。 D)現地での陸上からと潜水による、海岸生態系の調査。海藻・貝類・魚類及び海岸生物全般。 E)大入島の海岸生態系と比較するための、山口県・大分県沿岸での貝類相の調査と文献情報の収集。  文化地理学の基礎調査、「磯草の権利」の基礎調査では、地理学研究者と海藻研究者の共同によって、利用されている海藻類の概要が明らかになりました。  海岸生態系の調査では、海藻のファウナの概要が把握されました。特に潜水調査によって、貝類で多くの種が新たに記録された他、複数種のサンゴ類・ウミシダ類・ヒトデ類などを確認し、これまで知られていなかった石間浦の海岸生態系の生物多様性が明らかになりました。  貝類相の比較検討のために、外洋的で貝類相の共通性が高いことが分かっている山口県上関町長島と、外洋的な要素の低い大分県姫島村で調査を行いました。特にカサガイ類の種相が生物地理学的な判断に有効であることが示唆されました。 調査研究・研修の進捗状況・計画の変更などについての特記事項  2005年4月・5月・7月に予定していた大入島現地調査は、メンバーの日程調整の結果、6月・7月に実施しました。  5月に予定していた大分県への申し入れ及び、大入島自然史研究会の立ち上げと石間浦の保全をアピールする記者会見(大分県庁記者クラブ)は、6月調査での成果公表も含め10月調査の際に行うこととしました。  7月に予定していた佐伯湾内土砂調査は、現地での調整・機材確保の遅れにより、10月に行うこととしました。  10月に予定していた「磯草の権利!海は誰のものか?」シンポジウム開催(大分市)は、研究成果を充分に整理して発表する必要があるため、12月開催を検討しています。  瀬戸内海西部・豊後水道での海岸生物相の比較研究を、調査項目に追加しました。  幸塚久典氏(海中景観研究所)、芳賀拓真氏(東京大学)を海洋生物調査メンバー(共同研究者)として増員しました。

結果・成果

完了報告から

その他/備考


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