高木基金について助成応募の方法これまでの助成研究・研修高木基金の取り組みご支援のお願い

これまでの助成研究・研修

トップページ  > これまでの助成研究・研修 > 助成事例の詳細


非接触ICカード等の電磁波によるリスク研究──ユビキタス社会にむけての警告として



グループ名 []
[]
代表者氏名 植田 武智 さん
URL
助成金額 25万円

研究の概要

2004年12月の助成申込書から
 盗難防止や商品在庫管理などの目的で使用されているRFID機器が使用する周波数の主なものには、大きく分類して、長波(200Hz〜14kHz)、短波(13.56MHz)、マイクロ波(2.45GHz)などがある。  ただ外見だけからはどの周波数を使用しているのかは明示されておらず、またそこを通過する人がどれだけの電磁波に曝露されるのかについても情報が開示されていない。  今回、図書館のゲートなどで主に使われている盗難防止ゲート(14kHz)とスーパーマーケットなどの店舗の入り口で使用されているゲート(13.56MHz)、JR東日本で使用されているスイカ(13.56MHz)について、周辺部での電磁波を測定した。  その結果、14kHzを使用したゲートについては、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)が定めるガイドラインの最大60倍という磁場の値が測定された。  また13.56MHzを使ったゲートにおいても最大87倍という磁場が測定された。  また、同じく13.56MHzを使用しているスイカの場合、改札のカードをタッチする部分では最大12倍以上の値であった。  今回の調査では、RFID機器に使用される14kHz、13.56MHzなどの周波数に関する健康影響を示唆する研究論文を探したが、研究自体が少なく、その周波数に特定した影響を示す研究は見つけられなかった。  これは健康影響が心配ないというということではなく、RFID機器の普及が間もないためであると思われる。  問題は、商用周波数での発ガンリスクの可能性が指摘されるなかで、新たな周波数の電磁波を利用した機器の導入に際して、発ガンを含めた長期曝露の安全審査が要求されていないことにあると思われる。  今秋には、世界保健機関(WHO)が商用周波数の磁場に関する環境保健基準(EHC)を公表する予定。  小児白血病リスク上昇の疫学調査データを根拠に、予防的観点に立った対策のオプションを盛り込むことが予想されている。  その一方で、あらたな電磁波を利用した機器が何の安全性の検証も経ずに普及が進み、電磁波を曝露することになる職場の労働者や一般消費者に、リスク情報を与えられないという情況が問題である。  なお、この研究の成果については、2006年9月に書籍(出版社(有)コモンズ)として出版予定です。

中間報告

中間報告から
 非電離放射線(いわゆる電磁波)の健康リスクについては、これまで、送電線や家電製品から発生する超低周波の磁場による小児白血病との関連や、携帯電話で利用するマイクロ波と脳腫瘍との関連などについて研究が進められている。  一方で科学技術の進展により、われわれが日常的に曝露する電磁波の種類が多様化してきており、それがまたリスク評価を難しくしている。今回、新たな科学技術として注目されている非接触ICカード・タグ技術による電磁波曝露のリスクについて調査を行なう。図書館やデパート、スーパーマーケットなどでは、盗難防止の目的から出入り口には非接触IC技術を用いたゲートが設置されている。またSuicaをはじめ交通機関の改札でも使われている。  これら非接触IC設備などから発生する電磁波を測定し、現在研究されている電磁波の健康影響のリスク情報に照らし合わせ、それらの技術のリスクを分析、予防的対策の必要性を明らかにする。  4月の段階で、すでに、ICタグ設備の中で、Suica、図書館盗難防止ゲートなどの電磁波の値については大まかなデータを入手した。その後、ICタグを初めとした、電磁波に関する最新研究資料の収集に着手した。特に非接触IC設備からの電磁波の測定に関する公定書を購入し、現在分析中である。  今後、未測定の設備、特にスーパーマーケットやデパートでの盗難防止用ゲートや、できれば幼稚園、学校で普及されようとしている、子どもへのICタグなどを優先して測定を行なう予定。

結果・成果

完了報告から
 盗難防止や商品在庫管理などの目的で使用されているRFID機器が使用する周波数の主なものには、大きく分類して、長波(200Hz〜14kHz)、短波(13.56MHz)、マイクロ波(2.45GHz)などがある。ただ外見だけからはどの周波数を使用しているのかは明示されておらず、またそこを通過する人がどれだけの電磁波に曝露されるのかについても情報が開示されていない。  今回、図書館のゲートなどで主に使われている盗難防止ゲート(14kHz)とスーパーマーケットなどの店舗の入り口で使用されているゲート(13.56MHz)、JR東日本で使用されているスイカ(13.56MHz)について、周辺部での電磁波を測定した。  その結果、14kHzを使用したゲートについては、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)が定めるガイドラインの最大60倍という磁場の値が測定された。また13.56MHzを使ったゲートにおいても最大87倍という磁場が測定された。また、同じく13.56MHzを使用しているスイカの場合、改札のカードをタッチする部分では最大12倍以上の値であった。  ゲート式の場合、通常ヒトが通過するゲートの中心部分でさえ10倍以上の値を出している。またICNIRPガイドラインを超過した値は、ゲートから水平距離で1〜2mの範囲に及ぶ。この空間に人が滞在した場合、全身すっぽりとガイドライン以上の磁場に曝露されるという状態になる。  スイカの場合、ガイドラインを超過しているのは周辺15cmであるため、曝露も局所的にとどまる。  しかし、同システムはスイカにとどまらず、たとえば東急世田谷線のように車内の乗降口に設置してある場合もある。その場合ラッシュ時には体の一部が接触し続けるといった状態にもなる。当然のごとく注意事項は明記してされていない。  ICNIRPのガイドラインは、電磁波曝露による即時的な誘導電流による刺激、または熱作用のみを健康影響の指標としており、疫学調査で指摘されているような長期暴露による発ガン性などを考慮していない。疫学調査のデータがもっとも集まっている送電線などの商用周波数(50Hz,60Hz)では、現在のガイドライン(1000mG)の250分の一にあたる4mGで小児白血病のリスク上昇という影響がでている。このことを考慮すると例え、ゲート通過時だけの曝露とはいえ、その健康リスクの可能性は無視できない。現に妊娠初期の流産のリスクを調べた疫学調査では、商用周波数(50Hz)の一日の曝露の最大値で評価したところ、ガイドライン値65分の1の16mGでリスク上昇が現れた疫学調査もある。  今回の調査では、RFID機器に使用される14kHz 、13.56MHzなどの周波数に関する健康影響を示唆する研究論文を探したが、研究自体が少なく、その周波数に特定した影響を示す研究は見つけられなかった。これは健康影響が心配ないというということではなく、RFID機器の普及が間もないためであると思われる。問題は、商用周波数での発ガンリスクの可能性が指摘されるなかで、新たな周波数の電磁波を利用した機器の導入に際して、発ガンを含めた長期曝露の安全審査が要求されていないことにあると思われる。  今秋には、世界保健機関(WHO)が商用周波数の磁場に関する環境保健基準(EHC)を公表する予定。小児白血病リスク上昇の疫学調査データを根拠に、予防的観点に立った対策のオプションを盛り込むことが予想されている。その一方で、あらたな電磁波を利用した機器が何の安全性の検証も経ずに普及が進み、電磁波を曝露することになる職場の労働者や一般消費者に、リスク情報を与えられないという情況が問題である。

その他/備考


HOME助成応募の方法これまでの助成研究・研修高木基金の取り組みご支援のお願い高木基金について
ENGLISHサイトマップお問い合わせ 個人情報の取り扱い