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首都圏ディーゼル車規制の効果と実態および今後あるべき自動車環境対策についての研究



グループ名 調査研究の概要[pdf26kb]
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代表者氏名 国府田 諭 さん
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助成金額 30万円

研究の概要


1) 「首都圏ディーゼル車規制の効果」について、「規制」「効果」それぞれが意味する内容を改めて検討した。  その結果、「規制」と一言でいっても論者や立場によって意味するところは異なり、一連の施策のどこを指すか、どこに力点を置くかによって違いがあることが分かった。  それはすなわち、一連の施策に様々な要素と変遷が含まれていることの反映であった。  過去にさかのぼって施策の経過をたどることにより、こうした「規制」内容の精査と分類を行なうことができた。  「効果」の内容・定義についても同様であり、マスメディアの報道など、ともすれば大気汚染が「全体として」改善されるかという問題設定が多く見受けられたが、いかなる物質で、どのような指標(値の取り方)を判断基準にするかによって、結論はかなり異なる。  検討の結果、少なくとも政策効果の検証に際しては現行の「環境基準の達成率」が適当な効果指標とは言えないことが明らかとなった。 2) 1)によって検討の前提を明確にした上で、関連する統計を可能な限り収集し、統計を仲立ちとして施策と大気汚染濃度との関係を四つのグループに分けて検討する枠組みを考案した。  四つとは、  A)当該の施策の直接的な影響が統計に現われ、大気汚染濃度の変化が当然考えられるもの。  車種構成の変化(排出量がより少ない車両への代替)など。  B)当該の施策も一定の関わりを持つが、他の施策・要因によっても同様の影響あり、大気汚染濃度の変化が考えられるもの。  交通量の減少、貨物需要の減少など。  C) 当該の施策とは関係ない変化が外部からもたらされ、大気汚染濃度に変化を与えるもの。  自動車以外の汚染発生源(小型焼却炉など)の規制、気象・自然要因など。  D) 当該の施策が直接・関接に関わる変化だが、大気汚染濃度に影響しないもの。  (副作用) 3) 以上の検討の結果、「狭義のディーゼル車規制」(首都圏一都三県が、2003年10月を起点として独自の基準以下の車両の通行を禁止し、旧式のディーゼル車にはDPF装着を条件として通行を認めた)それ自体による大気汚染の低減効果は見出せないが、1990年代後半以降に貨物車の「脱ディーゼル化」が進展し、それに「広義のディーゼル車規制」(1999年8月からの東京都ディーゼル車NO作戦と、それが影響を与えた国・自治体・業界の様々な動き)が拍車を掛け、また大型ディーゼル車の低排出量への代替、貨物走行需要そのもの減少が進んだことによって、全国的に近年の大気汚染の低減がもたらされていることが確認できた。 4) この検討結果は、都知事が強調する国との対決姿勢(「国がやらないから都がやる」等)や規制を実施した首都圏で特に汚染が改善している(「規制のない大阪は汚染がひどい」等)との主張は必ずしも現実を反映したものでなく、むしろ制度上の齟齬はありつつも事実上の「国と自治体の一致した脱ディーゼル化・低排出車両への代替政策」が実現しており、その意義は大きいことを明らかにするものである。  さらに、東京都のような専ら国との政策の差異を強調する姿勢がなぜ生まれるのか、その原因と弊害について考察し、東京都がディーゼル車NO作戦の開始時に持っていた国との明確な差異である「健康被害の重視」「市民との連携」「道路交通政策全般の転換への波及」が現在は事実上放棄されており、それが「国との偽りの差異」を強調せざるをえない歪みを生んでいると結論づけた。 5) 一方、こうした規制による政策効果は確かに認められるものの、それが「現状の汚染濃度なら問題ない」ことを意味するものでは全くなく、近年の汚染低減の傾向と、本来あるべき大気環境の目標は別個の問題として議論すべきであること、その際に現在の環境基準(=行政内部での努力目標にすぎない)を議論の軸とする必要性は希薄であり、市民の生活実感と地域に対する将来像を中心にした環境交通政策こそ必要であることも明らかとなった。 6) 研究過程で得た多様な情報(自動車と環境に関する「統計・指標」と「政策・計画・動き」)を整理し、地図上に分かりやすく表示するウェブシステムを構築した(公開は5月中を予定)。  これを発展させることで、地域の環境に関心を持つ市民が多様な角度から自動車と環境について知り、政策や生活のあり方を考えるきっかけとなる。

中間報告

中間報告から
 2003年10月1日から、首都圏(一都三県)での独自のディーゼル車規制が始まった。規制開始までの過程は単純なものでなく、自動車環境政策に関する様々な議論と力学が存在していた。しかし客観的・科学的な議論が正面から尽くされ、その結果として導入された政策とは言い難い。また規制開始から約2年経過したが、科学的・総合的な政策評価がされその上で今後の方向性が検討されたことはまだない。三井物産の「排ガス除去装置の虚偽データ事件」も、政策全体の評価とは無関係に一企業の不詳事としてのみ処理されつつある。  こうした状況の中で、市民なら誰でも利用できる資料とデータを元に、ディーゼル車規制の効果や大気環境の実態を科学的に検証し、今後のあるべき対策を考えるのが本研究である。2月の公開プレゼンテーションでいただいた指摘をふまえ、次の四つの柱で進めている。(1)自動車による地域への環境負荷に関する様々な基礎資料と統計データの整理。大気汚染物質、交通量、気象、健康影響など多方面に渡るが、専門家や住民団体の協力を得て進めている。(2)研究の過程で得た資料・データを、ウェブを通じて多くの市民が活用できる手法の検討。10月中には一定の形で始めたいと考えている。(3)データの分析と評価。本研究に関連する学会やシンポジウムが毎月のようにあり、いくつかの示唆が得られた。助成がなかったら聴講できなかった遠方での学会もあり、感謝している。今後、専門家や関心のある市民の協力も得て分析を進めていく。(4)自動車や排ガス問題にとどまらず「環境と交通」全体のあるべき姿を探求し、その中で首都圏ディーゼル車規制の評価や位置づけを検討する作業。現在は(1)?(3)の比較的細かい作業が中心で、この大きなテーマは後半から終盤の中心課題である。本来の私の関心も「環境と交通」全体に対するものであり、これに取り組める秋以降の段階を楽しみにしている。 調査研究・研修の進捗状況・計画の変更などについての特記事項  4月に関連学会のスケジュールを調査したところ、聴講が欠かせない二つの学会がいずれも遠方(札幌での日本環境学会、9/7-9名古屋での大気環境学会)であると判明。本来、旅費の使途として兵庫県等へのヒアリングを想定していたが、その一部を学会への旅費に充当し、ヒアリングは自己資金を充当して(または仕事での主張のついでに)行なうこととした。

結果・成果


その他/備考


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